Bybitのロスカットリスクを減らすレバレッジ設定
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- 2020.08.19.
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- Bybitのロスカットリスクを減らすレバレッジ設定
Bybitでの取引では、持っているポジションから価格が大きく逆行してしまい、ロスカットされた場合でも追証を負うことはありません。
しかしロスカットされると証拠金を全て失ってしまうことに変わりありません。
ここで重要なのは、Bybitでロスカットされてしまうのはどのようなケースなのかを理解しておくことです。
さらにBybitには、ロスカットのリスクを制限するための機能も備わっています。
これらについて詳しくご説明しましょう。
Bybitでロスカットされるタイミングについて
Bybitでロスカット、つまり強制決済されてしまう場合とは、どのようなケースを指すのかについてご説明しましょう。
強制決済とは、ポジションの証拠金レベルが維持証拠金額に達すると、ポジションが強制的に決済されてしまうことをいいます。
まずBybitの証拠金の考え方についてご説明しましょう。
ポジションを建てるためには、「レバレッジに応じた担保額」である「必要証拠金」が必要となります。
そして実際にポジションを建てた際、その「ポジションを維持しておくのに必要な最低限の証拠金額」のことをBybitでは「維持証拠金」と呼んでいます。
ロスカットすなわち強制決済されてしまうのは、保有しているポジションが「維持証拠金」まで達してしまった場合に起こってしまいます。
つまりマーク価格が強制決済価格に達すると強制的に決済されてしまうわけです。
取引タイプによって異なる維持証拠金とレバレッジ
Bybitには取引タイプとして、BTCやETH、EOS、XRPとUSDの取引ペアである「インバース無期限契約」、そしてBTCとUSDTの取引ペアである「USDT無期限契約」の2種類がありますが、維持証拠金やレバレッジの設定がそれぞれ異なります。
実は、取引タイプによって維持証拠金の設定やレバレッジが異なるのには意味があります。
一見複雑に思えるこの設定は、意味が分かれば複雑ではありません。
その意味について最初に説明しておきましょう。
リスク制限
Bybitでは、ボラティリティの大きな仮想通貨FXに取り組むトレーダーが大きな損失を負うことが無いよう保険基金を設けています。
そして、保険基金が不足しており十分な補てんができない時のため、ADLシステムと名付けられた仕組みが用意されています。
ADLシステムは、Bybitでポジションを持っているトレーダーの中で利益が最も大きく、レバレッジの高いトレーダーを順位付けしており、その順位の高いトレーダーのレバレッジを解除することで損失を補てんするものです。
Bybitでポジションを持っている人同士で、相互に補てんするこの仕組みは非常に優れたものですが、ADLシステムの対象にされたトレーダーは不満に感じることもあるでしょう。
そこでADLシステムが稼働してしまう可能性を少しでも少なくするため、全てのポジション価額に対して「リスク制限」が設けられています。
もちろんリスク制限で全ての損失を防ぐことはできないかもしれませんが、他のトレーダーに迷惑を掛けにくい仕組みも組み込まれているということです。
このリスク制限の設定が、「インバース無期限契約」と「USDT無期限契約」では異なっています。
インバース無期限契約の維持証拠金とレバレッジ
インバース無期限契約の場合はリスク制限として、ポジションサイズが大きくなればレバレッジは低くなるよう設定されているだけでなく、必要証拠金や維持証拠金も増えるよう設定されています。
以下の表がインバース無期限契約における各通貨ペアのリスク制限です。
○リスク制限表
契約 | リスク制限 基本値 | リスク制限 増分値 | 維持証拠金 基本値 | 維持証拠金 増分値 | 必要証拠金 基本値 | 必要証拠金 増分値 |
BTCUSD | 150BTC | 150BTC | 0.5% | 0.5% | 1% | 0.5% |
ETHUSD | 3000ETH | 3000ETH | 1% | 0.5% | 2% | 1% |
EOSUSD | 50000EOS | 50000EOS | 1% | 0.5% | 2% | 1% |
XRPUSD | 750000XRP | 750000XRP | 1% | 0.5% | 2% | 1% |
この表の赤枠内、BTCUSD契約の項にあるリスク制限基本値は150BTCですので、ポジションサイズが150BTCまでであれば、必要証拠金基本値は1%で、維持証拠金基本値は0.5%となります。
ポジションサイズが151BTC以上300BTC以下の場合には、リスク制限増分値や維持証拠金増分値、必要証拠金増分値が1倍加算されます。
例えばポジションサイズが160BTCだったとすると、以下のような値になります。
- リスク制限値: 150+(150×1)=300BTC
- 維持証拠金率: 5%+(0.5×1)=1%
- 必要証拠金率: 1%+(5×1)=1.5%
- 維持証拠金総額: 1%×160BTC=1.6BTC
またポジションサイズが301BTC以上450以下の場合には、さらにそれぞれの証拠金増分値が加算されていきます。
つまり150BTCの単位ごとに増分値が加算されていくということです。
さらに最大レバレッジもポジションサイズによって、以下のように制限されていきます。
○BTCUSDのリスク制限
ポジション残額 | 維持証拠金 | 必要証拠金 | 最大レバレッジ |
150BTC | 0.5% | 1.00% | 100 |
300BTC | 1.0% | 1.50% | 66 |
450BTC | 1.5% | 2.00% | 50 |
600BTC | 2.0% | 2.50% | 40 |
750BTC | 2.5% | 3.00% | 33 |
900BTC | 3.0% | 3.50% | 28 |
1050BTC | 3.5% | 4.00% | 25 |
1200BTC | 4.0% | 4.50% | 22 |
1350BTC | 4.5% | 5.00% | 20 |
1500BTC | 5.0% | 5.50% | 18 |
他の各通貨ペアにおける、ポジション価額別のリスク制限による証拠金計算値と最大レバレッジは以下の通りになっています。
○ETHUSDのリスク制限
ポジション残額 | 維持証拠金 | 必要証拠金 | 最大レバレッジ |
3000ETH | 1.0% | 2.00% | 50 |
6000ETH | 1.5% | 3.00% | 33 |
9000ETH | 2.0% | 4.00% | 25 |
12000ETH | 2.5% | 5.00% | 20 |
15000ETH | 3.0% | 6.00% | 17 |
18000ETH | 3.5% | 7.00% | 14 |
21000ETH | 4.0% | 8.00% | 13 |
24000ETH | 4.5% | 9.00% | 11 |
27000ETH | 5.0% | 10.00% | 10 |
30000ETH | 5.5% | 11.00% | 9 |
○EOSUSDのリスク制限
ポジション残額 | 維持証拠金 | 必要証拠金 | 最大レバレッジ |
50000EOS | 1.0% | 2.00% | 50 |
100000EOS | 1.5% | 3.00% | 33 |
150000EOS | 2.0% | 4.00% | 25 |
200000EOS | 2.5% | 5.00% | 20 |
250000EOS | 3.0% | 6.00% | 17 |
300000EOS | 3.5% | 7.00% | 14 |
350000EOS | 4.0% | 8.00% | 13 |
400000EOS | 4.5% | 9.00% | 11 |
450000EOS | 5.0% | 10.00% | 10 |
500000EOS | 5.5% | 11.00% | 9 |
○XRPUSDのリスク制限
ポジション残額 | 維持証拠金 | 必要証拠金 | 最大レバレッジ |
750000XRP | 1.0% | 2.00% | 50 |
1500000XRP | 1.5% | 3.00% | 33 |
2250000XRP | 2.0% | 4.00% | 25 |
3000000XRP | 2.5% | 5.00% | 20 |
3750000XRP | 3.0% | 6.00% | 17 |
4500000XRP | 3.5% | 7.00% | 14 |
5250000XRP | 4.0% | 8.00% | 13 |
6000000XRP | 4.5% | 9.00% | 11 |
6750000XRP | 5.0% | 10.00% | 10 |
7500000XRP | 5.5% | 11.00% | 9 |
USDT無期限契約の維持証拠金とレバレッジ
USDT無期限契約の場合にも、インバース無期限契約のリスク制限と実質的に同じ意味である「段階別証拠金」と呼ばれる制度が設定されています。
つまり、ポジションとアクティブな注文の価額の合計によって、使用できるレバレッジ倍率が制限される仕組みがあるということです。
ただインバース無期限契約は、取引通貨ペアがBTCやETH、EOS、XRPとのペアであり、これらの仮想通貨をトレーダーが証拠金として用意し、トレーダー自身がアカウントの「資産」パネルから手動でリスク制限を切り替えなければなりません。
一方、USDT無期限契約の場合は、対象となる取引通貨ペアがBTCとUSDTの単一のものとなります。
そのため「段階別証拠金」は、システムが自動的に証拠金額やレバレッジを変更してくれる仕組みになっています。
段階別証拠金の設定
段階別証拠金制度の維持証拠金率や必要証拠金率、そして最大レバレッジは以下のように設定されています。
契約価額 (USDT) | 維持証拠金 | 必要証拠金 | 最大レバレッジ |
1,000,000 | 0.5% | 1.00% | 100.00 |
2,000,000 | 1.0% | 1.50% | 66.67 |
3,000,000 | 1.5% | 2.00% | 50.00 |
4,000,000 | 2.0% | 2.50% | 40.00 |
5,000,000 | 2.5% | 3.00% | 33.33 |
6,000,000 | 3.0% | 3.50% | 28.57 |
7,000,000 | 3.5% | 4.00% | 25.00 |
8,000,000 | 4.0% | 4.50% | 22.22 |
9,000,000 | 4.5% | 5.00% | 20.00 |
10,000,000 | 5.0% | 5.50% | 18.18 |
これはつまり段階別証拠金の基本値は100万USDTであり、100万USDT分の契約が増える度に必要証拠金率と維持証拠金率が0.5%づつ増えていくということで、最大レバレッジもそれに応じて低くなっていくということです。
なおUSDT無期限契約の場合は、インバース無期限契約と違って両建てが可能です。
そのため複数のポジションを持つ場合が多くあるはずですが、その場合の段階別証拠金はどのように適用されるのでしょうか。
このケースでも、分離マージンモードとクロスマージンモードで適用が異なってきます。
分離マージンモードの場合
分離マージンモードの場合は、既に保有しているポジションの中で、「売り」もしくは「買い」の方向別にポジションの数量を加味して段階別証拠金が決定されます。
つまりすでにポジションを持っていたとしても、それが両建てなどのように「売り」もしくは「買い」の方向が異なっていれば、段階別証拠金は加味されることはないということになります。
クロスマージンモードの場合
クロスマージンモードの場合は、既に保有している「売り」もしくは「買い」のポジションのうち、高い値の方向の全ポジション数量が加味されて段階別証拠金が決定されることになります。
まとめ
Bybitにおけるロスカットの仕組みと、ロスカットを防ぐために維持証拠金率が増えていくこと、さらに適用できる最大レバレッジも段階的に引き下げられていくことについてご説明しました。
維持証拠金やレバレッジが契約数と連動して制限されていなければ、多くのポジションを保有している場合、少しの値動きで簡単にロスカットされてしまいます。
そのためBybitではトレーダーの損失を防ぐため、リスク制限を設けており、さらに保険制度やADLシステムも導入しています。
すなわちトレーダーの立場に立ってプラットフォームを構築し、提供しているということです。
Bybitがどれほど信頼できるプラットフォームなのか、その一端を理解していただけたはずです。