独の銀行40行以上が仮想通貨管理ビジネス運営の可能性
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- 2020.02.11.
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仮想通貨がこれだけ世界中で大きな話題になっている中で、実際に仮想通貨を取り扱っている、もしくは規制などによって取り扱うことができる企業はそれほど多くありません。
では金融関連企業の中で最も大きな存在である一般銀行は、仮想通貨を取り扱おうと思っていないのでしょうか。
仮想通貨の特徴として送金や受金が素早く、しかも手数料がかからずにおこなえることが挙げられます。
しかし法定通貨の送金や受金は、以前より早くなったとはいえやはり時間がかかるだけでなく、手数料もそれなりに必要になってきます。
これはつまり、法定通貨を取り扱う銀行にとって仮想通貨という存在はライバルであり、自分たちの業務を妨げる存在ともいえるわけです。
一般銀行がその仮想通貨を取り扱うことに関心があるのかどうかは、非常に興味が湧く点ではないでしょうか。
ドイツでは2020年から新マネーロンダリング防止法が施行され、それに伴って40以上の銀行が仮想通貨管理に関心を示していることが報道されています。
実は銀行も仮想通貨を取り扱いたかったということなのでしょうか。
このニュースに関して、詳しくご説明しましょう。
ドイツの法整備で40以上の銀行が仮想通貨に関心
ドイツでは2020年1月1日から新マネーロンダリング防止法が施行され、これにより一般銀行でも株や債券と変わらずに仮想通貨管理を取り入れることができるようになりました。
これに伴って40以上の銀行が、仮想通貨管理ビジネスの申請をおこなっていることが、ドイツ現地の経済メディアであるHandelsblattによって報道されています。
画像引用:Handelsblatt
ドイツの新マネーロンダリング防止法について
ドイツの新しいマネーロンダリング防止法はドイツ連邦議会で可決された後、各州でも合意が認められたため、2019年11月29日に法律として成立し、2020年1月1日から施行されています。
この新マネーロンダリング防止法そのものは、AMLD5と呼ばれる第5次マネーロンダリング防止指令に沿ったものですが、ドイツではAMLD5をこれまでのマネーロンダリング防止のためだけに向けるのではなく、企業にとって仮想通貨を活用できる機会にしようと判断したようです。
そこで仮想通貨関連サービスに関して、銀行法なども変更してより広範囲な法律改正をおこない、カストディ企業や仮想通貨取引所などを通さなくても、直接銀行が顧客に仮想通貨に関連したサービスを実施できるようにしました。
これにより、ドイツの企業や銀行などはBaFin(ドイツ連邦金融監督庁)に申請をおこない、許可されるとビットコインやイーサリアム、リップルなどの仮想通貨のカストディサービスを運営できるようになりました。
画像引用:BaFin
新マネーロンダリング防止法の適用範囲
2020年から実施された新マネーロンダリング防止法には上記以外にも大きな特徴があります。
それはドイツ国内でサービスを実施するにあたって、その企業はドイツ国内に本拠地がなくても良いという点です。
すなわち、どの国からドイツ国内の居住者にサービスを実施する場合でも、BaFin(ドイツ連邦金融監督庁)のライセンスが必要になり、新マネーロンダリング防止法の規制に準じなければならないということです。
つまり規制に準じ、ライセンスさえ所得できれば日本の企業でもドイツ国内で仮想通貨関連サービスを運営できるというわけです。
既存のカストディサービス企業への適用
上記は新しくサービスを開始しようとする場合についてですが、既存のカストディサービスを実施している企業に対しては、どのような対応になるのでしょうか。
このケースでは、対象企業が2020年3月末までにライセンスの仮申請をし、同年11月末までに正式にライセンス申請をおこなう必要があります。
もちろん、新マネーロンダリング防止法の対象企業でありながらもライセンス申請をしない、もしくはライセンスが所得できなかった場合にはドイツ国内での営業はできなくなります。
ライセンスを申請した銀行とは
Handelsblattの報道では、既に40行以上の銀行がライセンスを申請しているとのことですが、残念ながら具体的な銀行名はオープンにされていません。
ただ1行だけ、仮想通貨関連事業に積極的なSBIホールディングスが出資しているSolarisBankがライセンス申請をおこなっていることは報道されています。
ベルリンに本拠地があるSolarisBankは、2018年に仮想通貨やブロックチェーン関連企業を対象にしたBlockchain Factoryを展開してきました。
さらに2019年12月にはカストディサービスを運営するSolaris Digital Assetsを子会社として設立させています。
SolarisBankのこれら全ての動きは、新マネーロンダリング防止法施行を見据えてのものだったようです。
画像引用:SolarisBank
仮想通貨市場が急成長しているドイツ
新法施行からすぐに40行以上の銀行がライセンス申請をしたことは、ドイツ国内で仮想通貨市場が急成長している証ともいえます。
どうしてドイツで急成長が起こっているのでしょうか。
それには幾つかの理由が挙げられます。
ドイツは元々欧州の中でも経済大国ではありますが、その根底に製造業の強さが存在しています。
製造分野でブロックチェーン技術やAIなどを導入することは、他企業との差別化や効率化につながるため、非常に進んでいるといえます。
さらにこれらの技術を導入していれば、仮想通貨関連サービスに対するニーズの高まりにもつながりやすくなります。
またイギリスが2020年1月末でEUから離脱したことによって、EU諸国におけるドイツの金融サービスの重要性が高まったはずです。
しかも欧州中央銀行はドイツのフランクフルトにあり、ドイツはEU全体の仮想通貨市場を牽引していける立場にあります。
つまりドイツには仮想通貨市場が急成長しやすい環境が整っているといえるでしょう。
前述したドイツの経済メディアHandelsblattには、ドイツ連邦議会議員であるFrank Schäffler氏の言葉が掲載されています。
連邦財務省が予測したよりも速く市場は成長しています。
暗号管理ライセンスに対する高い需要は、企業がますますブロックチェーン技術を採用していることを示していますが、これは新しい法律の結果でもあります。
引用:Handelsblatt Google翻訳
新マネーロンダリング防止法に対する賛否
新マネーロンダリング防止法が施行されたことによって、ドイツの仮想通貨市場はこれまで以上に活性化することは間違いありません。
しかしこの新法がドイツ連邦議会で可決され、各州での合意を待っていた時点でも賛否の声がありました。
仮想通貨関連企業は活性化につながるためもちろん賛成していましたが、これまで仮想通貨関連事業に手を付けることができなかったドイツ銀行協会も新法を歓迎するコメントを発表していました。
銀行協会のコメントは、資産保管やリスク管理はこれまでに十分な経験があり、仮想通貨においてもマネーロンダリングだけでなくテロ資金供与を防止することができるというものでした。
一方、消費者センターの金融専門家は、この新法によって銀行が充分な仮想通貨投資に対するリスクを説明しないまま、ひたすら顧客獲得のみに走ってしまうのではないかと懸念を表明していました。
まとめ
ドイツの新マネーロンダリング防止法施行によって、40以上の銀行がライセンスを申請していることについてご説明しました。
銀行で仮想通貨を取り扱うようになるというのは非常に画期的なことです。
通貨としてはっきりと認められたと同義の出来事だからです。
しかし仮想通貨には現金と違い、ハッキングのリスクが付きまとうため、セキュリティ対策も非常に重要課題であるはずです。
報道からは、これらに関することを読み取ることはできませんでしたが、実際にサービスが稼働するまでの間に充実させることができるのでしょうか。
ただ、今後はドイツが仮想通貨大国として新たな動きを見せてくれることは間違いないでしょう。
ドイツからの続報をお待ちください。