中国で進展するブロックチェーンとデジタル人民元
- 仮想通貨関連
- 2020.04.16.
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- 中国で進展するブロックチェーンとデジタル人民元
世界中の国々が新型コロナウイルスの感染拡大に苦しんでいる中、中国では2019年に積極的推進を発表したブロックチェーン技術とデジタル人民元の導入が進んでおり、どちらについても具体的な進展内容が報道されています。
新型コロナウイルスの感染が拡大しつつある現在は、どの国においても新型コロナ対策が優先されるべきではありますが、中国の狙いは中国国民の徹底したコントロールに加え、基軸通貨である米ドルに対抗するためのものとされています。
それゆえ、多くの国々でも中国のこれらに関する動向には注視しているはずです。
中国でブロックチェーンとデジタル人民元にどのような進展があったのか、詳しくご説明しましょう。
中国政府がブロックチェーン標準化委員会設立
ブロックチェーン技術の導入を進める中国政府が2020年4月13日、さらなる促進のためにブロックチェーン標準化委員会を設立したことを発表しました。
画像引用:miit.gov.cn
「全国ブロックチェーンと分散会計技術標準化技術委員会が公告を発足(Google翻訳)」と題した記事には以下の内容が記述されています。
国家標準化管理委員会の承認に従って、関連部門は国家ブロックチェーンおよび分散会計技術標準化技術委員会の設立計画を提案しました。
参加者全員の意見をさらに聴くために、メンバーのリストが公表され、締め切りは2020年5月12日です。
引用:miit.gov.cn Google翻訳
これはつまりブロックチェーン標準化委員会の設立目的は、ブロックチェーンを標準のものとするため、多くの人から意見を聴きながら進めていくことにあるようです。
また国家標準化管理委員会が承認していることを明記している意味は、このプロジェクトそのものが国家主導の元で進められているということになります。
標準化委員会のメンバーについて
この発表記事内ではメンバーリストも公表されています。
以下の画像がメンバーリストの一部画像ですが、リストには全部で71人の名前が記載されています。
画像引用:miit.gov.cn
ブロックチェーン標準化委員会の議長にあたる「主任委員」は、中華人民共和国工業情報化部の副大臣を務める人物です。
また中国の中央銀行にあたる中国人民銀行に所属しているデジタル通貨研究員が脇を固めており、この委員会が国主導で進められていることが分かる人事になっています。
他のメンバーにはテンセントやファーウェイ、バイドゥなどの中国の主力IT企業の他にも、北京大学や精華大学、中央財経大学、北京理工大学などからも選ばれています。
デジタル人民元のテスト用アプリ配信
前述のブロックチェーン標準化委員会の設立が中国政府によって発表された翌日の2020年4月14日、仮想通貨関連情報メディアであるThe Blockが、デジタル人民元のテスト用アプリがリリースされたことを報じています。
画像引用:The Block
「中国の国有銀行、中央銀行のデジタル通貨向けテストアプリをリリース」と報じられた記事によると、このアプリをリリースしたのは中国農業銀行だとされています。
中国農業銀行は中国四大商業銀行のうちのひとつで、他の四大商業銀行には中国銀行、中国工商銀行、中国建設銀行があります。
なお中国農業銀行の支店数は、これらの中でも最大数があります。
そしてこのアプリは中国農業銀行の深圳、西安、成都、蘇州の支店から入手できると報じています。
テスト用アプリの内容
ではこのテスト用アプリにはどのような機能があるのでしょうか。
以下の画像は、The Blockが報じているアプリのUI画像です。
画像引用:The Block
これを見るとDC(デジタル人民元)の交換、ウォレット管理、トランザクション追跡、他のウォレットへの接続などの機能があることが分かります。
このアプリを一般の人が使えるのかというと、現時点ではホワイトリストに載っている人だけが利用でき、それ以外の人は使えないようです。
ホワイトリストとは、対象を選別するために受け入れる対象をあらかじめリスト化しておき、そのリスト以外の人は拒否するものを指します。
そのためホワイトリストに載っていない人がアプリにアカウント登録しようとしても、個人情報が一致せず、登録できないようになっています。
デジタル人民元の仕組みとテストの位置付け
デジタル人民元についてこれまでの報道で分かっていることは、2層運営システムであるということです。
すなわち中国の中央銀行である中国人民銀行が、個人や企業などに直接デジタル人民元を供給する仕組みではありません。
供給は一般銀行を通じておこない、その供給方法も個人や企業などが交換したいだけの金額分を銀行口座から交換するものになります。
つまり構造的には第1層が、中央銀行である中国人民銀行と銀行などの金融機関の間の階層となり、中国人民銀行は金融機関に向けてデジタル人民元を発行するわけです。
そして第2層が金融機関と個人や企業などユーザーとの間の階層となり、アカウント管理やKYCなど、必要なことは金融機関がおこなうことになっています。
今回リリースされたテスト用アプリが中国農業銀行の支店から入手できるということは、すなわち第2層の金融機関と個人や企業などを対象にしてテストを実施するということになります。
これまで第1層のテストである、中央銀行と金融機関との間のテストに関して報道されることはありませんでしたが、2020年3月24日に中央銀行が民間企業との協業で基本部分の開発を完了していることは報じられていました。
そして第2層のテストが実施されるということは、第1層のテストを終え、デジタル人民元のテストが次のステージに移ったということになるでしょう。
デジタル人民元の今後
今回のテストアプリに関する報道で、デジタル人民元は新型コロナウイルス禍の中にあっても着実に進められてきたということが分かりました。
中国はデジタル人民元の発行計画にあたり、84にも上る数の特許を申請していることが分かっています。
そして特許の全ては、デジタル人民元を従来の銀行のシステムと統合するためのものであること、そして最終ユーザーである個人や企業間での取引において、それぞれのプライバシーを守ることに関する特許も存在していることが分かっています。
ただしデジタル人民元を発行している中国人民銀行が、全ての取引情報を監視しないようにするための特許は一切存在していません。
これはすなわちデジタル人民元を導入することで、これまでの法定通貨「人民元」ではできなかった、個人や企業の取引を監視する意図があるということでしょう。
さらに中国は一帯一路構想を立ち上げています。
一帯一路構想を一言で説明すると広域経済構想であり、デジタル人民元を一帯一路構想に参加する国々に広めていくことは容易なはずです。
そうなった時、世界はどうなってしまうのでしょう。
まとめ
中国でブロックチェーンをさらに促進するため、ブロックチェーン標準化委員会が設立されたことに加え、デジタル人民元のテスト用アプリがリリースされたことについてご説明しました。
中国はデジタル人民元を自国民の利便性のためではなく、監視することや他国への影響力強化、さらに米ドルの切り崩しに活用するねらいを持っているようです。
また、新型コロナウイルスの発生によって中国の初期対応は世界中から非難されていますが、経済面における野望はいささかも衰えていないことが分かります。
革新的な技術であるブロックチェーン技術や中央銀行発行のデジタル通貨を、願わくば世界全体の活性化や発展のために役立ててほしいものです。