四川省でマイニング禁止通達もマイナーは従わず?
- 仮想通貨関連
- 2020.05.24.
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- 四川省でマイニング禁止通達もマイナーは従わず?
中国では現在仮想通貨取引が禁止されていますが、マイニングに関しては明確に禁止との通達が出されているわけではありません。
その中国は電気代の安さなどマイニングに適した環境であることから、ハッシュレート分布において世界の60%近くを中華系マイニングプールが占めています。
そして中国の中でもマイニングが盛んなのが四川省です。
四川省はビットコインの全マイニング量のうち、およそ10%を占めるといわれており、中国のマイニング業界の中でも重要拠点となっています。
そんな四川省で、マイニング禁止と同様の意味の通達を出していたことが分かりました。
禁止と同様の通達とはどのようなものだったのでしょうか。
またこれまで中国ではマイニングに関して禁止の通達は出ていませんでしたが、今後禁止していくのでしょうか。
さらにビットコインの半減期を経て、マイナーにとって厳しい事業運営環境の中、マイナーはこの通達にどう対応していくのでしょうか。
このニュースについて、詳しくご説明しましょう。
四川省当局が省内でのマイニング禁止を通達
中国四川省当局が、四川省内に対して仮想通貨のマイニングを禁止する通達を出していたことを、アジアのブロックチェーンやフィンテックに関する情報メディアであるPANewsが2020年5月22日に報じています。
画像引用:PANews Twitter
中国四川省の財務管理者は、その下位オフィスに「鉱山事業体が彼らの鉱業活動を秩序だった方法で終了するように導く」ように命令する通知を発行しました。
引用:PANews Twitter Google翻訳
PANewsの報道によると、四川省内のマイナーに対して直接マイニングは禁止であると通達を出したのではなく、省内の下部機関に通達を出していることが分かります。
そしてこの通達の中では、水力発電事業者に対して、仮想通貨のマイナー誘致をすぐに中止するとともに、既存のマイナーが今後マイニングしないようにと書かれています。
さらにもしマイナーがこの通達に従わなければ、四川省当局はそのマイナーを調査するよう政府に働きかけるとともに、事業運営の禁止・罰金等の行政措置を取り、裁判所による強制執行も視野に入れる旨が記述されています。
四川省でマイニング禁止通達が出た背景
冒頭でご説明したように、中国四川省は世界のビットコインのマイニングにおいて10%を占めるほど重要拠点となっています。
その四川省においてマイニングを禁止する通達を、マイナーに直接告げるのではなく、水力発電事業者に告げるのにはどのような意味があるのでしょうか。
実はこの通達の背景には、水力発電所の深刻な電力不足問題があったとされています。
前述のメディアPANewsによると、四川省では今年5月初めごろから水力発電所電力網に22%以上の負担がかかっていただけでなく、水力発電の基となる河川水量が20%近く減水していることが述べられています。
またこれにより四川省のマイニングファームで、2020年5月21日に電力不足が原因となる稼働停止が起こっていたことも記述されています。
つまり、四川省当局がマイナーに直接マイニング禁止を告げず、水力発電事業者に通達を出したのは電力不足が原因だったというわけです。
過去には仮想通貨業界を支持していた四川省
今回の電力不足によってマイニング禁止通達を出す以前の四川省では、仮想通貨業界を支持する立場の発言が目立っていました。
2019年10月27日に中国政府が支援しているシンクタンク「四川意思決定諮問委員会」によって開催された会議内で、この委員会のメンバーであり、四川省の政治家でもある姜洋(Yang Jiang)氏が、四川省での仮想通貨業界支援について言及しています。
その内容は、四川省に豊富な水力発電によるエネルギーを使ってビットコインやブロックチェーンなどと組み合わせ、ビジネスチャンスを生み出していこうというものでした。
さらにこの発言がされた時期の四川省では、正しい手続きを踏まずに作られたマイニング施設の捜査が当局によっておこなわれていた時期でもありました。
つまり、そのことを無視するほどに仮想通貨業界を取り込みたいという意思があったわけです。
このことは中国四川省の地元メディアである四川日報が2019年10月28日に報じています。
画像引用:四川日報
これはつまり、電力不足問題が起きるまでは仮想通貨業界をビジネスチャンスにしたいと意欲的だったのにもかかわらず、電力不足問題が起きるといとも簡単に覆したということです。
マイニング禁止通達の影響は
では四川省が水力発電事業者に出したマイニング禁止通達による影響は、どのようなものになるのでしょうか。
このことについて仮想通貨関連情報メディアであるTheBlockが報じたところによると、四川省でマイニング事業が本当に禁止されるかどうかは不明であり、この禁止通達命令が執行されない可能性もあることも述べています。
ただし四川省は電気代が安いことから、四川省のマイナー達は支援金をもらえなくなるかもしれないとしています。
一方、今回のマイニング禁止通達の本当の狙いは税金であると持論を展開しているのは、ブロックチェーン関連投資会社Primitive Ventures社の設立パートナーであるDovey Wan氏です。
Dovey Wan氏は中国の仮想通貨事情に精通しており、今回の四川省におけるマイニング禁止通達について4つのツイートをおこなっています。
画像引用:Dovey Wan Twitter
ツイートの中でDovey Wan氏が主張しているのは、もしマイニングを禁止してしまうと電力会社の利益を損なうことになってしまうという点、さらに現時点では合法的に運営されているマイニングを禁止することはできないというものです。
そしてこのような通達が出る時は、税金をもっと稼ぎたいという合図であるとし、税金逃れのために違法なマイニングをしていることは許さないという意味もあることを述べています。
また中国事情として、地域によって政策が異なるのは一般的であることも説明しています。
そしてこの件に関するTwitterの最後に、以下の文章を残しています。
中国が本当にすべてを禁止することができるなら、それは良くなることはできません。
それが起こった場合、ハッシュレートは最終的に中国国外に分布する可能性があります。
夢がかないます。
引用:Dovey Wan Twitter Google翻訳
これはすなわち、中国ではマイニングを禁止する可能性は非常に低いとDovey Wan氏は説明しているわけです。
また最後の一文「夢がかないます。」は、このような税金目的の禁止通達があったとしても、中国のマイナーは動じることはないことを示唆していると考えられます。
まとめ
四川省でマイニング禁止通達がでたとの報道についてご説明しました。
四川省の電力不足や、水力発電をおこなっている河川の水位の低下がどれほど深刻なのかは明らかになっていませんが、もしDovey Wan氏の主張通り、四川省が単独で税金目的のためにこのような通達を出していたとしたなら、非常にお粗末というしかありません。
中国において仮想通貨取引が禁止されているのは、法定通貨である人民元が流出してしまうのを防ぎたいためといわれています。
そしてマイナーをあえて禁止しないのは、充分な収益が期待できる、すなわち税金が期待できるからでしょう。
そのようなマイニングを、四川省だけで禁止することはおそらくできないはずです。
ただ中国におけるマイナーやマイニングの動向は、仮想通貨市場に影響が大きいため、今後も注視しておく必要があるでしょう。