日銀が他国中銀や国際決済銀行とCBDCを共同研究
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- 2020.01.23.
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2019年にあった仮想通貨に関する話題の中で、最も多くの人が関心を寄せたのがフェイスブックの仮想通貨リブラと中国のデジタル人民元でしょう。
リブラは多くの国から反発を受け、運営するリブラ協会から離脱する企業が出るなど、状況は厳しそうですが、中国が進めるデジタル人民(CBDC)は習近平国家主席の意向に沿って順調に進められているようです。
仮想通貨リブラとデジタル人民元のプロジェクトが登場したことによって、世界中で中央銀行発行のデジタル通貨CBDCが注目され始め、大きなムーブメントとなっています。
そんな中、日銀が他国の中央銀行や国際決済銀行とでCBDCを共同研究することを発表しました。
このニュースについて詳しくご説明しましょう。
日銀が他国の中央銀行などとCBDC共同研究を発表
日本の中央銀行である日本銀行が2020年1月21日、欧州の中央銀行に国際決済銀行を加えたグループに参加し、中央銀行発行のデジタル通貨であるCBDCについて研究することを発表しました。
画像引用:日本銀行 公表資料
グループ参加銀行
日銀の発表によると、CBDC共同研究グループに参加するのは、日本銀行とカナダ銀行、イングランド銀行、ECB欧州中央銀行、スウェーデンの中央銀行であるリクスバンク、スイス国民銀行、そしてBIS国際決済銀行です。
この共同研究グループに参加している銀行の中で、とくに注目に値するのはユーロ圏19ヵ国の中央銀行であるECB欧州中央銀行が参加していること。
そして60ヵ国・地域の中央銀行が加盟し、各中央銀行同士の協力の促進や中央銀行からの預金受け入れなどをおこなっているBIS国際決済銀行までもが参加している点です。
つまりグループに参加している銀行数は7つですが、関連している国の視点で考えるとおよそ80ヵ国が参加しているのと同義であるといえ、非常に多くの国がCBDCに高い関心を持っていることが読み取れます。
グループ設立の目的
このグループの設立目的は、日銀の公表資料によると以下のように記述されています。
このグループは、中央銀行デジタル通貨の活用のあり方、クロスボーダーの相互運用性を含む経済面、機能面、技術面での設計の選択肢を評価するとともに、先端的な技術について知見を共有する。
引用:日本銀行 公表資料
これはすなわち、現在の決済システムとCBDCを比較した場合、どのような優位性があり、どう活用していけば良いのか。
そして国境を越えて行う決済にCBDCを活用することで、どのような経済的メリットやデメリットがあり、金利をどうするのか、金利を付けるならばどうすべきなのかなどを含めた
機能面や技術面も検証していくということです。
つまり80ヵ国もの国々がCBDCをどう捉え、どう展開していくのが最良なのかを考えるということになります。
グループ内で活かされる知見
このグループでは、CBDCに必要な知見を共有することも目的になっています。
そのため過去にCBDCに必要な技術や知識など蓄えた中央銀行からの知見も重要視されます。
このグループに参加する中央銀行の中で、CBDCに関連した知見を蓄えられるプロジェクトを推進していたのは以下の事例が挙げられます。
日銀とECB欧州中央銀行
2016年12月に日銀とECB欧州中央銀行が、ビットコインに使われているブロックチェーン技術を将来的に金融インフラに活用することを視野に入れ、共同研究を始めたことが発表されています。
なおこの研究では技術面の調査研究だけにとどまらず、将来的なシステム作りについても実験をおこないながら進められていました。
この共同研究についてECBの専務理事メルシュ氏は、中央銀行として将来的なサービスに活用できるかどうかを日銀と研究する旨の発言をしていました。
イングランド銀行とカナダ銀行の独自研究
イギリスの中央銀行であるイングランド銀行とカナダの中央銀行であるカナダ銀行も、これまで独自でCBDCについての研究をおこなってきています。
イングランド銀行は過去に仮想通貨について研究し、仮想通貨は通貨としての機能を果たしておらず、将来的にも通貨として流通しにくいのではないかと結論づけています。
ただし仮想通貨に使われているブロックチェーン技術の重要性は認めており、CBDCにおける検討課題であると重視していたようです。
カナダ銀行は仮想通貨には脅威を感じていたようですが、CBDCについては研究を進めており、現在のシステムよりお金の流れを正確に把握できる通貨であることを認める主旨の発言をしています。
またCBDCを導入する際には、最初のうちは現金との共存を考え、少しづつCBDCの一本化に移行していくことなども議論されているようです。
今後のグループにおける展開
今後のグループの展開としては、各銀行が持っている知識やノウハウを持ち寄ってレベルの統一化をはかるとともに、CBDCに対する見解も共有していくことを目指しています。
ただしCBDCの発行について強制はせず、独自判断に基づいて決定することとなります。
そのためのステップとして、2020年の内にCBCDの課題や利点に関する報告書をまとめ、公開するとしています。
グループに参加していない中国と米国
このグループには、現在最もデジタル通貨発行に近いといわれる中国人民銀行だけでなく、CBDCへの意識を高めることになったフェイスブックのお膝元である米国FRBも参加していません。
本来であれば、この両国の中央銀行が参加していてもおかしくないと考えられますが、どのような理由で参加していないのでしょうか。
このことに関する報道は見当たりませんが、過去の報道などから不参加の意図を推測すると以下のようなことが考えられます。
中国人民銀行が不参加の理由
中国のCBDCであるデジタル人民元の狙いは、今回のグループに属する日本やユーロ圏、カナダなどとは明らかに異なります。
デジタル人民元は、これまでの人民元で把握することができなかった中国国民の情報の把握が一番の目的です。
つまり自国民が、どこで、どんな物を、幾らで買っているのかなどを知ることができれば、異分子の存在や行動を把握することができるわけです。
海外への資金流出も正確に把握することができるでしょう。
さらに中国の一帯一路政策は周辺地域を全て掌握することに意味があり、その地域にデジタル人民元を流通させれば、周辺地域の情報把握だけでなく自国産業の発展にもつながっていきます。
加えて中国にはもうひとつの目標があります。
それは世界の基軸通貨である米ドルに対抗することです。
現在の人民元は国際化が進んでおらず、その状態を打破するには米ドルに対抗できるデジタル人民元が必要だということです。
すなわち中国はCBDCを他の国と連携させる必要はなく、少しでも早く世界に流通させたいため、歩調を合わせる意味もないわけです。
FRB米連邦準備理事会が不参加の理由
ではFRB米連邦準備理事会はどうしてこのグループに参加しないのでしょうか。
このことに関して興味深いニュースがあります。
スイスのダボスで開催されていた世界経済フォーラムの年次総会において、米財務長官であるSteven Mnuchin氏が以下のように発言していたことを、リップル社のCEOがツイートしていました。
「国境を越えた支払いシステムには、消費者や企業のコストを下げるという利点があります。これに取り組む企業を絶対にサポートします。」
引用:Brad Garlinghouse Twitter Google翻訳
画像引用:Brad Garlinghouse Twitter
これは、FRBがCBDCを発行するより、リップルを活用していくことを考えているため、グループに参加する意味がないと考えていると推測できます。
まとめ
日銀が他国の中央銀行や国際決済銀行と共同でCBDCについて研究していくニュースと、このグループに参加しない中国や米国の事情についての考察をご紹介しました。
今後中央銀行発行のデジタル通貨がどのように広がりを見せていくのかは分かりませんが、将来的に日本でも発行されることはほぼ間違いないのではないでしょうか。
その時の世の中は、そして仮想通貨はどうなっているのか、楽しみにしておきましょう。