仮想通貨を全面的に禁止しようとする中国の本気度
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- 2021.06.11.
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- 仮想通貨を全面的に禁止しようとする中国の本気度
2021年5月にビットコイン価格が大きく下落した背景には、テスラ社CEOによるツイートだけでなく、中国が仮想通貨に対する規制をより厳しくしたことがあるといわれています。
中国では過去にも仮想通貨に対する規制を実施していましたが、今回の規制はよりその適用範囲が広がっただけでなく、実行力を伴ったものになっているようです。
また世界でもっとも巨大な勢力であったマイニング業も規制しようとしています。
中国がどれほど本気で仮想通貨を禁止しようとしているのか、実際に起こっている事実を紹介していきましょう。
中国のこの動きを知ることで、ビットコインをはじめとする仮想通貨の価格や将来への影響が非常に大きなものであることを実感できるはずです。
中国における過去の仮想通貨規制
中国は2013年に個人によるビットコインのオンライン取引を認めましたが、その年末には銀行だけでなく決済会社などがビットコインに関係したサービスを提供することを禁止していました。
2017年にはICOを禁止しましたが、これはあくまでも投資家を保護するとともに金融に対するリスクを抑えるためと説明していました。
このICO禁止条例によって、仮想通貨取引所で法定通貨を仮想通貨に交換するだけでなく、仮想通貨を法定通貨に交換することもできなくなりました。
このことによって、中国国内を拠点としていた仮想通貨取引所は実質的に運営できなくなり、海外に移転していきました。
このような規制が実施されても中国国内でのビットコイン取引は継続されており、海外に移転した元中国の仮想通貨取引所や店頭取引などによって取引されていましたが、中国政府は黙認していたようです。
取引に加えてマイニングも禁止しようとする新たな規制
2021年5月18日、中国は2017年よりも広範囲にわたる仮想通貨関連業務を禁じることを発表しました。
その内容とは、NIFA(中国インターネット金融協会)やCBA(中国銀行業協会)、そして中国支付清算協会に加盟している銀行や決済企業などが、仮想通貨に関係した口座開設や登録、取引、決済などをおこなうことを禁止するものです。
これだけをみると、2017年の仮想通貨規制と変わりないようにみえますが、今回の規制はより厳しく実行されているだけでなく、仮想通貨取引に関連した資金の流れについて監視体制をとること、さらに協力体制をとることまで言及しています。
また2021年5月21日には劉鶴副首相が議長の中国国務院金融安定化委員会において、ビットコインのマイニングを取り締まるための会議がおこなわれました。
この内容が報道されると、実際に規制され始めたわけではないにもかかわらず、北米に拠点を移動させるための準備を始めるマイナーも出始めていることが報じられています。
画像引用:technode.com
中国の仮想通貨禁止に対する本気度が分かる実例
中国がいかに本気で仮想通貨規制に取り組んでいるかが分かる実例をいくつかご紹介しましょう。
中国大手検索エンジンBaiduから取引所が消えた
全世界の検索エンジンの中で最も利用されているGoogleは中国で利用することができないため、世界第2位のBaiduが中国大陸での実質的な検索エンジン1位となります。
そのBaiduでこれまで検索できていたBinanceやHuobi、OKExなどの世界でも知名度の高い仮想通貨取引所のキーワード検索ができなくなりました。
この状況は英語で検索しても、中国語で検索しても変わらず、見つからないとの検索結果が出るようになっているとのことです。
実際にBaiduで「Binance」を検索してみると、以下のような画面になりました。
画像引用:Baidu
Baiduでの検索結果「抱歉没有找到与“Binance”相关的网页。」はGoogle翻訳によると、「「Binance」に関連するページはありませんでした。」という意味です。
なおこの現象はBaiduだけでなく、中国版TwitterともいえるWeiboでも起きていることが分かっています。
ただしこのような検索結果になってしまう仮想通貨取引所は、BinanceとHuobi、OKExだけであり、中国国内での利用者がこの3社よりも少ないと考えられている海外の仮想通貨取引所は、現在でも検索できるようになっているとのことです。
このことについて中国当局からの具体的な発表はありませんが、検索ワードの検閲は中国では世論をコントロールするために頻繁に使われる手法であり、中国政府が仮想通貨取引禁止に関連して検閲を実施したとみられています。
中国の新疆と青海政府はマイニング禁止を発表
中国の新疆政府と青海政府が2021年6月9日、相次いで仮想通貨のマイニングを停止するよう命令しました。
新疆政府の「准東経済技術開発区」には仮想通貨の主要なマイナーの設備も一部拠点としています。
またこれ以外にも発電所や工場などが多くありますが、稼働のためのエネルギーは石炭による発電でした。
新疆政府はこの開発区にあるマイニングファームに対し、業務を停止するよう命令しました。
また青海政府もマイニングを停止するよう命令しています。
青海省は新疆などと比較すると、中国における主要マイニング地域ではないものの、新疆と同様に石炭による発電でマイニングがおこなわれています。
新疆、青海ともに石炭を用いた火力発電でマイニングをおこなっていましたが、環境汚染と仮想通貨規制の両面で厳しい立場に立たされていたといえます。
画像引用:8BTCnews Twitter
中国の主要マイナーのハッシュレートも大きく変動
前述したような中国政府の仮想通貨に対する規制の本格化によって、中国各地にあるマイニングプールのハッシュレートも大きく変動しています。
2021年6月10日の早朝時点の24時間変動率におけるハッシュレートランキングは以下のようになっていました。
画像引用:coinpost
上記画像のようにAntPoolやF2Pool、Poolin、BTC.comなど中国国内のマイニングプールのハッシュレートが大きく下落しています。
ただし2021年6月11日のAM1時現在、ほとんどのマイニングプールでプラスに転じていますが、BTC.comだけは-25.02%となっています。
マイナーの移転が進むか
中国は2017年の時と比べると、今回の仮想通貨に対する規制は本格的で、本気度がうかがえます。
中国は仮想通貨のマイニング事業者が多く、このまま規制が厳しく実行されてしまうと、事業者にとっては存続の危機にもなってしまいます。
そこで北米や中央アジア、欧州などのマイニングに適した地域への移転によって打開する方法を模索しているようです。
ハッシュレートが大きく変動しているのは、その表れともいえるでしょう。
また中国国内のマイニングプールのハッシュレートが変動すると、近年急速にマイナーが増え、マイニングマシンの販売台数も急激に増えている北米地域のマイナーがハッシュレートランキングで上位にくることも予想されます。
すなわちマイニングが、一極集中から地域分散化に転じていくことが予想されるということです。
まとめ
中国政府の仮想通貨規制がどれほど本気なのかが分かる事例をいくつかご紹介しました。
これらの事例をみると、以前の規制とは比べ物にならないほど厳しいものであることが分かるでしょう。
中国は世界でもTOPのマイニング先進国です。
石炭燃料による環境破壊を懸念するといっても、マイニングによる莫大な利益をみすみす逃してしまうのでしょうか。
そこにはおそらく中国のデジタル人民元の普及だけでなく、中国に住む人々の資産までをも監視しようとする意図があるのかもしれません。
つまりマイニングによる利益より、デジタル人民元や人々の監視を優先したのかもしれないということです。
この中国の動きが仮想通貨のマイニングや供給に好影響を与え、ビットコイン市場がより安定化していくことにつながっていくことを願いたいものです。
今後の中国の動向に注目しておきましょう。