Bitmainの社内権力争いがマイナーの収益に大きな影響

マイナーにとって2020年は、新型コロナウイルスの影響でビットコイン価格が大きく下落しただけでなく、5月にはビットコイン半減期がありマイニング報酬が半減するなど厳しい状況が続いています。

そのようなマイナーにとってさらに追い打ちをかけるような出来事が起こっています。

マイニングハードウェアのメーカーであるBitmainの社内権力争いによって、同社のマイニングマシンAntminerがマイナーに届くのが大幅に遅れることが分かりました。

Bitmainの騒動については、2020年6月13日のニュース記事「ビットコイン100万割れの原因となったマイナス材料とは」内でもご説明していましたが、その騒動がより大きくなってきたと考えられます。

マイナーにとってはまさに死活問題に発展しかねないこの状況について、詳しくご説明しましょう。

Bitmainの社内騒動が製品発送に影響

仮想通貨のマイニングハードウェア企業であるBitmainが、自社のマイニングマシンであるAntminerの発送について、およそ2ケ月から3ケ月遅れることを2020年８月６日に発表しました。

なお発送が遅れるAntminerは、本来6月もしくは7月に発送予定だったもので、9月か10月に発送される予定だとしています。

画像引用：微信扫一扫

Antminer営業チームから発信された発表によると、出荷が遅れている原因として「運営・管理が外部からの影響を受けている」ことを挙げています。

そして9月もしくは10月に発送が延期されることから、顧客に対して2通りの選択肢を提示しています。

まずひとつ目が、書面をもってBitmainに納期を早くすることを求めて欲しいということです。

この場合、書面を受け取ってから60日経過してもAntminerが納品されなければ、マイニングマシン代金の返金に応じるとしています。

そしてもうひとつの選択肢は、このまま9月もしくは10月にAntminerが発送されることを待つというものです。

この場合、最新マイニングマシンを長期に渡って使えないというデメリットがありますが、実際の納期までに予想されるマイニングによる収益については、将来的にBitmain社製品を購入する際のクーポンにして補償すると述べています。

Antminerの発送が遅れる原因について

本来は6月もしくは7月に発送されるはずだったAntminerは、予約注文を受けていたはずであり、早いものは3月か4月頃に予約を入れていたはずです。

それが9月か10月の発送となるのは、マイナーにとって非常に痛手でしょう。

Bitmainも、顧客であるマイナーに痛手になることは十分わかっているにもかかわらず、発送が遅れる理由として明らかにしているのは、「運営・管理が外部からの影響を受けている」という曖昧なものです。

発送がこのように遅れる理由は、以前から起こっていたBitmain内部での権力争いが原因だというのが大多数の見方のようです。

共同設立者同士の社内権力争い

2020年6月13日のニュース記事「ビットコイン100万割れの原因となったマイナス材料とは」内でもご説明したように、Bitmainでは共同設立者であるJihan Wu（ジーハン・ウー）氏と、同じく共同設立者のMicree Zhan Ketuan（ミクリー・ザン・ケチュアン）氏が対立しており、社内を巻き込んだ抗争になっています。

抗争の発端は、2019年10月にJihan Wu 氏がMicree Zhan Ketuan氏を解任したことにありました。

画像引用：Jihan Wu Twitter

Micree Zhan Ketuan氏を解任したJihan Wu 氏は、社内に対してMicree Zhan Ketuan氏の会議には出席しないよう指示を出し、その指示に従わないスタッフには訴訟をも視野に入れていることを明らかにしたとされています。

一方のMicree Zhan Ketuan氏は、同意もしていないのにいきなり解任されたと発言しており、法的措置のもと、社に戻るつもりであるとしていました。

結局、Micree Zhan Ketuan氏は2020年6月に北京のオフィスに戻り、その後は深センにある工場を管理・運営しているとのことです。

画像引用：Micree Zhan Twitter

このMicree Zhan Ketuan氏の行動に対抗するように、Jihan Wu 氏はBitmain親会社を通じ、マイニングマシンに不可欠なチップの供給ネットワークを徹底管理し始めました。

つまりMicree Zhan Ketuan氏がいくら工場を管理下に置いていても、マイニングマシンに不可欠なチップが入手できず、製造や出荷さえ満足にできない状態にしているということです。

さらに2020年7月23日にはBitmainのAntminerチャンネルが、Bitmainのスタッフだった人間が、モンゴルの同社施設から１万台のAntminerを違法な状態で移動させたと発表しています。

画像引用：微信扫一扫

発表では、移動させられたのはAntminerのS17 Pro / S17 / T17 / S15 / T15 / S9 などであり、警察や関係当局に通報したとの内容が記述されています。

さらに複雑なのは、以下の内容が書かれていることです。

公式Webサイト以外のWebサイトを介して、当社または当社の許可された人物であると主張する人から製品を購入しないでください。

これは詐欺である可能性があり、対応する製品を受け取ることはありません。

この場合、当社は一切の責任を負いません。

引用：微信扫一扫 Google翻訳　

対応に困るマイナー

Bitmainが社内で権力争いをするのは勝手ですが、常に同業他社と競い合っているマイナーにとって、発注したマイニングマシンがいつまで経っても届かないのは死活問題でしょう。

しかもこのような状態では、９月もしくは１０月まで待ったとしても、発注したAntminerが届く保証はありません。

またBitmainが提案してきたように、書面で催促しても喉から手が出るほど欲しいAntminerが送られてくるとは限りません。

もし購入費用を返してもらったとしても、新しいマイニングマシンを他メーカーに発注した場合、いったいいつ発送されるのでしょうか。

本来であればもう届いており、稼働しているマイニングマシンが稼いでくれるはずだったマイニング報酬はどうカバーしてくれるのでしょう。

Bitmainの社内権力争いは、マイニング業界全体を揺るがすほどの大きな問題になってきています。

まとめ

Bitmainの社内権力争いが、マイナーを混乱に陥れ、マイニング業界全体を揺るがす問題に発展していることについてご説明しました。

Bitmainがマイニングハードウェアメーカーとして小規模であれば、これほど大きな問題には発展しなかったはずです。

小さなメーカーであれば、このような騒動を起こしてしまうと顧客は離れていき、自然に淘汰されたはずです。

しかしBitmainはマイニングハードウェアメーカーとして非常に規模が大きく、マイニング業界はもちろんのこと、仮想通貨業界全体に影響してきます。

一刻も早く事態が収束することを望むばかりです。