英の仮想通貨投資者像を明らかにした2つの調査結果
- 仮想通貨関連
- 2020.07.02.
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- 英の仮想通貨投資者像を明らかにした2つの調査結果
これまでの仮想通貨のイメージはボラティリティが大きく、社会的な信頼度もそれほど高くないとされ、金融資産としての面よりもどちらかといえばギャンブルや投機的なものとして捉えられていました。
しかし近年の仮想通貨は投資目的のものとして変化しつつあり、安全資産とされるGOLDを模してビットコインゴールドなどと表現することもあります。
また新型コロナウイルスのパンデミックによって、ビットコインの資産としての価値が再認識されたことも注目すべき点でしょう。
ただこれらの仮想通貨の位置付けは報道などの影響が大きく、実際に仮想通貨を利用する人々にとっての仮想通貨はどのようなものなのか、あまりはっきりしていません。
仮想通貨が実際にどのような目的で使われており、どのような人が近年注目しているのかが分かる2つの調査が、英を舞台にして実施されました。
その内容について、詳しくご説明しましょう。
FCAが仮想通貨についてオンライン調査を実施
英の金融を規制する機関であるFCA(Financial Conduct Authority:金融行動監視機構)が、2019年年末に実施した仮想通貨に関するオンライン調査の結果を2020年6月30日に発表しました。
画像引用:FCA Cryptoasset consumer research 2020
「Cryptoasset consumer research 2020(暗号資産消費者調査2020)」と題された調査報告書は、英政府とその中央銀行であるイングランド銀行が仮想通貨の市場規模や利用者層、取り組みなどを把握するため、FCAに依頼して実施された調査の報告書となります。
調査対象者の設定
この調査報告書によると、調査そのものは2019年12月13日から21日までの間、オンラインで実施されていました。
調査方法としては、まず英に居住している3,085人に仮想通貨について知っているかを質問しています。
その結果、知っていると回答したのは2,258人で、全回答者の73%を占めていました。
そして、その中から165人を抽出しています。
その165人に、仮想通貨を既に所有している493人を加えた合計658人に対し、仮想通貨に関する質問を投げかけています。
仮想通貨種類別認知度
仮想通貨の種類について、どの銘柄を認知しているかという調査では、やはりビットコインの認知度が最も高く、78%の人が認知していました。
2番目に認知度が高かったのは、フェイスブックの仮想通貨リブラで、22%が認知していました。
3番目はビットコインキャッシュの20%、次いでイーサリアムの17%、ビットコインSVとライトコインの12%と続いています。
仮想通貨保有者数の推定
調査対象者のうち、仮想通貨を保有している、もしくは過去に保有していたことがあると答えた人は5.35%となりました。
この仮想通貨保有率は、2019年度の調査報告では3%と報告されています。
2.35%の仮想通貨保有率の伸びは、アンケート対象者数を英の人口にあてはめてみると、英の18歳以上の人口がおよそ5,000万人であることから、およそ120万人が前回のアンケート調査以降、新たに仮想通貨を保有した、もしくは保有しているということになります。
どうして仮想通貨を購入したのか
さらにアンケートでは、仮想通貨を購入した理由についても調査しています。
その結果、最も大きな理由になっていたのが「ギャンブルとして購入」で47%を占めています。
2番目は「ポートフォリオの一部として」というもので、25%の割合でした。
3番目は「仮想通貨を買ってみたかった」というもので22%。
4番目以降には「年金などを長期的に節約するため」「従来の金融システムが信用できない」が17%となっていました。
フィンテック企業Mode Bankingの調査
英のフィンテック企業であるMode Banking社が、世代別のビットコイン投資額について調査した結果を2020年7月1日に発表しています。
画像引用:Mode Banking
発表した内容は、「ブーマー世代、Gen-Xはロックダウン以降、毎月BTCへの投資を倍増(Google翻訳)」と題した報告のタイトル通り、新型コロナウイルスによるロックダウン以降、ブーマー世代とジェネレーションX世代で、ビットコインに対する投資額が倍増しているというものです。
ここでいうブーマー世代とは英のベビーブーム世代のことを指し、第二次世界大戦の終結後に兵士が復員したことで、出生率が上昇した頃に生まれた人々のことになります。
具体的には1940年~1960年代前半生まれの人々のことで、今年で50代後半から80歳ぐらいまでの人があてはまります。
またジェネレーションX世代とは、1960年代の半ばごろから1980年代ぐらいまでに生まれた人を指し、今年で40代半ば以降から50代後半ぐらいになる人があてはまります。
すなわち、比較的高齢の人がビットコインに対して積極的に投資していると主張しているのです。
以下のグラフはベビーブーマー世代とジェネレーションX世代が、2020年2月から5月までの間、ビットコインに投資した額を示したものです。
画像引用:Mode Banking
このグラフは2020年2月の投資額を基準としており、5月までの間は投資額が倍増していることが読み取れます。
仮想通貨に対する投資は、一般的にミレニアル世代といわれる1981年から2000年までの間に生まれた人が中核を成しているといわれていました。
しかしミレニアル世代よりもっと高齢の人々が仮想通貨を受け入れ、積極的に投資をおこなうようになってきているのです。
英の2つの調査結果から見えてくること
英におけるFCAとMode Bankingの2つの調査で見えてくるものとはどのようなものなのでしょうか。
まずひとつは、仮想通貨取引を未だギャンブルとして捉えている人が多いということです。
FCAの調査で47%がギャンブルとして取引をした、つまり半数近くの人が投資の手段ではなくではなく、ギャンブルとして捉えているということです。
そしてもうひとつが、FCAの仮想通貨取引理由に挙げられていた、「年金などを長期的に節約するため」という回答に加え、Mode Bankingの調査にあったように高齢の人が投資額を増やしているという点です。
これは、老後の資金として仮想通貨を捉える人が増えてきたということでしょう。
もちろんその背景には新型コロナウイルスのパンデミックが影響しており、それまではあまり意識しなかったものの、ここにきて急速に意識するようになったということがいえます。
このふたつの傾向は、全く方向の違うものではありますが、仮想通貨の特徴が多くの人に理解されているからこそ起こり得るものです。
現在の仮想通貨は、市場がそれほど大きくないため、どうしてもボラティリティは大きくなってしまいます。
また仮想通貨の将来は、需要が高まるとともにビットコインなどは希少価値が高まって、価格は上昇していくと予想されています。
これらを考え合わせると、仮想通貨に対する認知と理解が進んできていると言い換えることもできるのではないでしょうか。
まとめ
英を舞台としたFCAとMode Bankingの2つの調査についてご説明しました。
今回の調査結果は、あくまでも英国内に限定されたものです。
英はEUからの離脱など特殊な事情を抱えているため、今回の調査結果がどの国にでも当てはまるかどうかは不明です。
そのため、ある程度の目安として受け止めるべきなのかもしれません。
またFCAの調査結果にあった仮想通貨取引をギャンブルと捉えている人の多さには驚かされますが、仮想通貨が将来的に発展し、社会に定着していくことで、この比率は下がっていくのでしょう。
そうでなければ、仮想通貨の将来はありません。
一日も早くそんな日が訪れるよう、業界関係者には奮起して欲しいものです。