新型コロナウイルスがデジタル通貨の普及を加速
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- 2020.04.08.
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世界中で感染が広がっている新型コロナウイルスですが、ウイルス自体のことは未だ全てが解明されてはいないようです。
そのため感染経路についても飛沫感染や接触感染だとはいわれてはいますが、感染経路の違いによる感染リスクもどの程度異なるのか、あまりはっきりしていません。
飛沫感染とは感染している人が咳やくしゃみをした際、飛沫とともにウイルスを放出し、それを吸い込んだことで感染することを指します。
また接触感染はウイルスが付いた状態の皮膚や物の表面から感染することを指しています。
飛沫感染は感染者から一定の距離を取ることで感染の確率は低くなるでしょうが、接触感染の場合は防ぐことが難しいようです。
そしてこの接触感染の危険性が、デジタル通貨の普及を加速させるのではないかとBIS(国際決済銀行)が示しています。
このニュースについて、詳しくご説明しましょう。
BISが現金によるコロナ感染を懸念
各国の中央銀行における相互決済をおこなう組織であるBIS(Bank for International Settlementsの略、国際決済銀行)が2020年4月3日に発表した資料「BIS Bulletin(BIS速報)」の中で、現金に新型コロナウイルスが付着し、感染拡大が起きることに懸念が高まっていると報告しました。
画像引用:BIS Bulletin
感染拡大の懸念とは、現金に感染者の新型コロナウイルスが付着し、その現金が流通することで健康な人の手にウイルスが移動し、それが原因で感染するのではないかというものです。
このことを懸念したメディアなどからの問い合わせが、各国の中央銀行に殺到していることが記述されています。
現金の流通で新型コロナウイルスに感染するのか
多くのメディアなどが懸念しているように、現金に付着した新型コロナウイルスが原因で感染に至ることはあるのでしょうか。
まず新型コロナウイルスの環境別生存期間についてご説明しましょう。
CDC(米疾病対策センター)とカリフォルニア大学ロサンゼルス校、そしてプリンストン大学の研究チームがニューイングランド医学ジャーナルで、このことに関して発表しています。
これによると新型コロナウイルスは空気中(エアロゾル状にして測定)では、3時間生存していることが分かりました。
そして銅の表面では4時間、ボール紙の表面では24時間、プラスチックやステンレスの表面では2日から3日生存できることが判明しています。
これらのデータから、法定通貨の紙幣や硬貨に付着した新型コロナウイルスは、法定通貨が流通する過程で健康な人に感染を拡大する可能性がゼロではないことが分かります。
ただし現金から感染するリスクは、感染者に濃厚接触するなどのケースと比較すると低いのではないかといわれているようです。
しかし感染ルートが明らかになっていないケースも多く、現金に付着したウイルスから感染したかどうかを判断できない状態であることも事実でしょう。
対応策の異なる各国の中央銀行
現金に付着した新型コロナウイルスから感染するリスクについては、正確な判断ができない状況も影響し、世界各国の中央銀行による対応は様々です。
ドイツにおける解釈は、現金に付着したウイルスから感染する接触感染よりも、感染者からの飛沫感染の方が感染につながりやすいとしています。
そのためドイツの中央銀行であるドイツ連邦銀行は、十分な通貨の供給を保証すると述べているようです。
イギリスの中央銀行であるイングランド銀行は、公共施設にある誰もが手を触れられる個所を触る方が、現金を素手で触るよりもリスクは高いと考えています。
カナダの中央銀行であるカナダ銀行は、小売業者が現金決済を拒否しているケースがあることから、その行為をやめるよう発表しています。
つまり現金から感染する可能性は低いと考えているということになります。
一方、現金からの感染リスクが高いと考えているのはインド、中国、韓国、ハンガリーなどです。
インドは現金決済よりもキャッシュレス決済を奨励しており、中国は使用された紙幣の殺菌や洗浄をおこなっています。
韓国やハンガリーでも紙幣を殺菌していることが報告されています。
加速するCBDCの導入と今後の課題
BISは「BIS Bulletin」の中で、現金に付着した新型コロナウイルスによって感染が広がることを正確に判断できないにしても、現金が感染を拡大させてしまうという意識が、決済方法を変えてしまう可能性があることを指摘しています。
つまり新型コロナウイルスによって、人と現金との関係性が変化していくのではないかと述べているわけです。
そのうえで、決済方法としてデジタル化が進むことやCBDC(中央銀行デジタル通貨)の導入を望む声が高まることも言及しています。
ただBISは現金が完全に無くなることはないと考えており、現金とデジタル通貨で役割が異なっていくのではないかと述べています。
これはデジタル決済に慣れていない高齢者が多いことに加え、銀行口座を保有していない人が多く存在していることが背景にあります。
そしてデジタル化に対応できる層の人々と、対応できない層の人々と間で格差が広がることを懸念しており、CBDCはどのような層の人にでもアクセスできるように設計段階からデザインするべきと指摘しています。
中国でデジタル人民元の推進がさらに加速
新型コロナウイルスの発生源とされる中国では、現金に付着したウイルスから感染が拡大することを懸念し、これまで以上に推進を加速させるようです。
2020年4月3日に中国人民銀行のFan Yifei副総裁によって開催されたビデオ会議の内容が4月4日に発表されています。
画像引用:gov.cn
「中国人民銀行は2020年の全国ビデオ、金、銀、安全保障作業のビデオと電話会議を開催しました(Google翻訳)」と題された記事によると、この会議は2020年に中国人民銀行として優先して推進すべき事項を改めて確認するために開催されたとのことです。
会議に出席していたのは中国人民銀行の関連部局や支店、中央監視委員会グループ、そして国営商業銀行の関係者です。
この会議の中で、「合法的なデジタル通貨の研究開発を揺るぎなく前進させる(Google翻訳)」ことに加え、人民元の流通を管理するために現金の発行と回収システムを改善していくことが確認されています。
前述したように、中国では使用された紙幣の殺菌や洗浄をおこなっており、デジタル人民元の推進加速が新型コロナウイルスの感染拡大を防止につながると考えていることが読み取れるでしょう。
まとめ
新型コロナウイルスの感染拡大は、現金の流通からも起こり得るとの懸念がCBDCの普及を加速させることについてご説明しました。
中国をはじめとするデジタル通貨に積極的だった国々は、新型コロナウイルスによってさらに開発が加速することは間違いないでしょう。
またこれまで積極的でなかった国においても、デジタル通貨への取り組み姿勢が変化してくる可能性があります。
今後、世界の通貨のあり方が大きく変わる契機になったのかもしれません。
ただ中国は新型コロナウイルスの発生源とされており、デジタル人民元の発行は感染拡大を防止するだけでなく、中国の経済力や世界への影響力を弱体化させない狙いがあることも考えられます。
またBISが発表していたデジタル通貨発行の課題の中にあった銀行口座を持っていない人々への懸念は、フェイスブックの仮想通貨リブラが発表時に掲げていた目的の中にも含まれていた内容です。
新型コロナウイルス禍が、行き詰まっている仮想通貨リブラに何らかの影響を与える可能性も十分考えられるのではないでしょうか。