半減期後のマイナーを取り囲む厳しい状況
- ビットコイン
- 2020.06.06.
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ビットコインは2020年5月12日に半減期を迎えました。
半減期はマイニング報酬が半分になることを指しますが、発掘されるビットコイン量を減らしていくことで希少価値を高めるために設けられています。
すなわち価格の上昇につながるため、ビットコイン保有者にとっては歓迎すべき事柄といえます。
一方、ビットコインの新規発行作業に携わるマイナーにとって半減期は、マイニング報酬が減少するため厳しい局面を迎えることになります。
特にマイナーが多く集中している中国からは、厳しい状況が報道されています。
さらに、このタイミングで新しい高性能マイニングマシンの発売も発表されました。
新型マシンの登場は、この局面にどのような影響をもたらすのでしょうか。
これらの報道について、詳しくご説明しましょう。
中国マイニング業界の一部では半減期の影響が深刻
安い火力発電の電力を利用できるだけでなく、豊水期には水力発電によってさらに電気代が安くなるために多くのマイナーが集まっている中国マイニング業界において、半減期がもたらす影響は深刻であることが、2020年6月3日に中国のメディアである深潮TechFlowによって報道されました。
画像引用:c.m.163.com
報道によると、1kwhあたり0.05ドルの火力発電を利用していたマイナーの一部は、半減期を契機としてより安い電力を求め、1kwhあたり0.028ドルの水力発電の電力が得られる地域に移転しました。
しかしそれでも半減期の減収は影響が大きく、採算が取れないためにマイニングから撤退したマイナーが多く見られたとのことです。
特に中国でもマイナーが多い内モンゴル地域においては、電気代がかさむ火力発電による電気を利用しているマイナーの多くがマイニングをストップしています。
電気代が安い水力発電を利用しているマイナーであっても、20%から30%近くがマイニングをストップしている状態で、なかでも300万kw規模の水力発電を利用していたマイナーが廃業してしまったことは衝撃を伴って伝えられています。
なおこの300万kwのマイニングファームは、建設費用に160億円近くを掛けてしまったため、半減期によって大幅に減収し、採算割れに陥ってしまったようです。
より安い電力を求めたファームの移動
マイナーの収益構造を考える上で重要なのが、マイニング原価の大部分を占める電力料金です。
マイナーが中国に集中するのは、安い火力発電があり、さらに雨季に入ると水源が豊かな地域では水力発電がさらに安くなるからです。
そのため資金に余裕があるマイナーは、より安い電力を利用できる地域に移動し、少しでも利益効率を上げようとしますが、資金に余裕のないマイナーは移転すらできない状態なのでしょう。
それゆえに水力発電よりも割高だと分かっていながらも、火力発電による電力を使用するしかなく、その結果、マイニングをストップせざるを得ない状態になっているわけです。
マイニング業者に重くのしかかる設備投資
火力発電よりも安い水力発電の電力を利用しているマイナーであっても、20~30%がマイニングをストップしているのは、半減期によるマイニング報酬が減ってしまったことが大きな原因です。
しかしそれ以外にも大きな原因として考えられるのが、設備投資です。
火力発電による電力供給地域から、水力発電が利用できる地域に移動すれば、移転の費用が余分にかかっているはずです。
さらにマイナーは、常に最新のマイニングマシンを利用しなければ、他のマイナーとのマイニング競争に打ち勝つことができません。
マイニングマシンも高額であり、しかも大量に使用しなければ利益が出せないため、設備投資の額はどんどん膨れ上がっていきます。
それにもかかわらず、半減期によって利益効率は悪くなっているわけです。
これらがマイナー業者に重くのしかかり、苦境に追い込まれています。
Bitmain社の新型マイニングマシンが登場
苦しい状況のマイナーをさらに苦しめる事柄が報道されました。
それはマイニングマシン業界の大手であるBitmain社が、最新型マイニングマシンであるAntminer T19を2020年6月1日にリリースしたことです。
画像引用:Bitmain blog
Antminer T19には、従来のフラグシップモデルAntminer S19やAntminer S19 Proと同世代のカスタムチップが搭載されているため、ハッシュパワーは84TH/sで、1秒間で84兆回の演算を行うことができます。
Antminer T19のカスタムチップはAntminer S19やAntminer S19 Proと同じですが、これらの従来機よりアップグレードしたファームウェアに加えて新しいAPW12パワーサプライを搭載しているのが特徴です。
これによってAntminer T19は、従来機よりもマイニング最適化速度が向上しています。
最新マイニングマシン導入の結果
この「Antminer T19」がマイナーに導入され、稼働を始めると、ハッシュレートが上昇するだけでなく、マイニングの難易度も高くなることが考えられます。
するとマイナーの収益性低下につながるだけでなく、投下資本を回収するために要する時間も長くなってしまうことが予想されます。
つまり競争が激化するということになるわけです。
だからといって最新のマイニングマシンを導入しないと、マイナー間の競争に勝ち抜いていくことはできません。
さらにAntminer T19の価格は1台あたり1749.00ドル、日本円にして19万円ほどです。
数台だけこのマシンを購入しても意味がないため、仮に100台購入したとするとマシン代金だけで1,900万円必要になります。
実際にはもっと多くの台数が必要で、他に陸送費や設置費用も掛かってくるでしょう。
しかも他のマイナーを出し抜くためには、他よりも多くの台数を設置しなければなりません。
つまりそれだけの費用を掛けなければ、勝ち抜くことはできないということです。
これからのマイナーは資本力が必要
前述した中国のマイナー事情や最新型マイニングマシンの登場のニュースから分かるように、ビットコインのマイナーには資本力が必要になってきます。
資本が少ないと設備に費用を掛けることができず、マイナー間の激化した競争に勝ち抜いていくことはできません。
またマイニングファームも小規模のものでは利益を出しにくくなり、大規模のものでなければ勝負になりません。
すなわち今後のビットコインマイナーは、資本力のある企業が、大規模な施設を稼働させなければ生き残っていくことができない時代に入ったといえます。
このことは、2020年1月10日のニュース記事「マイニング業界での発掘力UPに向けた更なる動き」内でご説明したように、資本力のある大企業がビットコインマイニングに参入してきている事実をみれば一目瞭然でしょう。
撤退しない大規模以外のマイナーはどう動くのか
ではビットコインのマイニングでは資本力のある大規模マイナー企業だけしか生き残れないとすれば、それ以外のマイナーはどう動くのでしょうか。
その答えがアルトコインのマイニングへの移行です。
2020年4月、ビットコインのハッシュレートの9%を占めている大規模マイニング事業者Balarhashが、アルトコインマイニングへ転換することが報じられました。
運営するマイニングプールのひとつBytepoolをアルトコインマイニングへ移行するというものです。
Bytepoolでは3月のビットコイン価格急落時にハッシュレートが4000PH/sから200PH/sへと、大幅に下落していました。
そのため5月に迎える半減期による採算性を検討し、事業を見直しせざるを得なかったと報じられています。
マイナー撤退によるビットコイン価格への影響
半減期を機にビットコインのマイナーが撤退し続けたとき、ビットコインの価格に影響はあるのでしょうか?
大量のマイナーがビットコインネットワークから抜けると、ハッシュレートが下がる可能性があり、ネットワークが不安定になってしまいかねません。
これがビットコイン価格に影響を与えるだけでなく、投資家がビットコインを避けるなどの動きに出る可能性があります。
まとめ
半減期を迎えたことで収益性が悪化しているところに加え、新型マイニングマシンの登場が厳しさに拍車をかけている状況についてご説明しました。
これらのことも想定したうえで、サトシ・ナカモトはビットコインを作り上げたのでしょうし、仮想通貨を取引している我々だけが右往左往しているだけなのかもしれません。
ただ、ビットコインマイナーの動きが価格に影響する可能性には注意し、今後の動向に注目しておく必要はあるでしょう。