仮想通貨の進化には規制が必要で、規制には世界的協調が必要との説
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- 2022.04.27.
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- 仮想通貨の進化には規制が必要で、規制には世界的協調が必要との説
現在、仮想通貨は多くの人々に認知されており、大手企業が大量に購入するなど、資産としての価値も高まっていることは明らかです。
また仮想通貨に投資する機関投資家や個人投資家も増えてきていることから、今後ますます広がりをみせてくれるはずです。
そのような環境にある仮想通貨が今後更なる発展を遂げるには、仮想通貨に対する規制が必要であるとする内容を、老舗仮想通貨取引所であるBitstamp(ビットスタンプ)が調査結果から導き出しています。
またビットスタンプのコメントに呼応するように、ECB(欧州中央銀行)の専務理事が、仮想通貨に対する明確な規制を世界的に協調して設けるべきであると発言しました。
ビットスタンプが実施した調査内容と、それから導き出された将来的に規制が不可欠であるというコメントに加え、欧州中央銀行の専務理事の発言内容などについて詳しくご説明しましょう。
ビットスタンプが仮想通貨に対する調査結果要約を発表
イギリスに拠点を置く、老舗の大手仮想通貨取引所であるBitstamp(ビットスタンプ)が、2022年4月26日に仮想通貨に対する調査結果の要約を発表しました。
画像引用:Bitstamp Blog
「Bitstamp Crypto Pulse:従来の投資を追い抜くための暗号」と題されたレポートは要約されたものであり、詳しい内容は後日公開されるようですが、このレポートでは機関投資家や個人投資家に対して調査をおこなった結果が記載されています。
このレポートによると機関投資家と個人投資家のどちらも、仮想通貨市場の将来性について、非常に強気であることが分かったと記しています。
ビットスタンプ調査レポートの概要と要約
この調査の範囲は北米、ラテンアメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、中東、アジア太平洋の23か国に及んでおり、機関投資家の意思決定者5,502人と個人投資家23,113人を対象に実施されました。
なお質問した内容は、仮想通貨に対する姿勢やアプリケーション、展望など多岐に渡っていたようです。
まず仮想通貨の普及については、88%の機関投資家と75%の個人投資家が普及するとの見方を示していたようです。
また投資手段としての仮想通貨はどうなるかという質問に対しては、80%の機関投資家と54%の個人投資家が、仮想通貨は今までの投資手段を追い越してしまうだろうと予想していることが明らかになりました。
また資産として仮想通貨は信頼できるかという点に対し、71%の機関投資家と65%の一般投資家は信頼していると答えてはいるものの、不動産投資や株式などと比較すると、信頼度は低いことが明らかになっています。
さらに個人投資家については、67%の人が信頼していることが明らかになりましたが、11%の人々は信頼していないことが分かりました。
この仮想通貨の信頼度の低さについてビットスタンプは、「仮想通貨に対する規制が明確になっていない」ことが原因ではないかと報告しています。
調査結果に対するBitstamp CEOの見解
今回発表された調査結果に対してビットスタンプ のCEOであるJulian Sawyer(ジュリアン・ソーヤー)氏は、幾つかのコメントを発表しています。
ますひとつが、仮想通貨やデジタル資産の現状についてです。
仮想通貨やデジタル資産は過去にないほどの速度で広まりつつあり、この数年で仮想通貨は金融エコシステムから投資の最前線になっていること。
また新型コロナのパンデミック以降はさらに関心が高まっており、仮想通貨はマクロ経済の一部になっていると述べています。
そしてもうひとつが、仮想通貨やデジタル資産の将来に向けての言葉です。
仮想通貨やデジタル資産が存続していくかどうかを話すのはもはや必要ないことであり、今後の問題は進化について話すことだと述べています。
「問題は進化について話すこと」というジュリアン・ソーヤー氏のコメントは、ビットスタンプの調査レポートにもあった、「仮想通貨に対する規制が明確になっていない」という点を指しているともいえます。
ECB専務理事が世界的に協調して規制強化の必要性主張
ビットスタンプの調査レポートやジュリアン・ソーヤー氏のコメントにあったのと同様の主張、つまり仮想通貨に対する規制の強化を世界的に協調しておこなうべきであると主張していたのは、ECB(欧州中央銀行)の専務理事であるFabio Panetta(ファビオ・パネッタ)氏です。
ファビオ・パネッタ専務理事は、2022年4月25日に米コロンビア大学で開催された講演会で仮想通貨をテーマにしたスピーチをおこないました。
画像引用:ECB
このスピーチの中でファビオ・パネッタ専務理事は、仮想通貨が世界的金融危機のタイミングで、銀行への不信感と技術革新によって生まれてきたと説明するとともに、過去の例を出して明確な規制の必要性を訴えました。
ファビオ・パネッタ専務理事が例に挙げた過去の例とは、西部開拓時代に銀行を開設する要件が緩和されたことで、疑わしい資産つまり不審な資産に対して銀行券を発行したことで、債務不履行が増え、銀行不信につながったこと。
また世界的な金融危機を引き起こしたサブプライムローンはおよそ1.3兆ドルともいわれるにもかかわらず、仮想通貨の市場規模はそれを超えるほどに膨らんでいることを挙げています。
そしてこれらのようなことにならないよう、明確な規制を打ち出すとともに、その枠内で仮想通貨を使用するべきであること。
さらに社会的な損害につながる投機資産については規制することを、世界的に協調して実施すべきであると主張しました。
ファビオ・パネッタ専務理事が主張する規制のポイント
上記のような主張をしていたファビオ・パネッタ専務理事の規制のポイントは以下のようなものとなります。
1.仮想通貨も他の金融システムと同様に管理
FATF(金融活動作業部会)の基準に従い、P2Pも含めてマネーロンダリングやテロ資金供与を防止すること。
2.適切な課税方法の検討
仮想通貨がグローバルに取引できることから、国の違いからくる法の違いがあっても整合性があるものにすること。
一定量以上の取引には報告の義務を課すこと。
地球環境に影響の大きい、ビットコインなどPoW(プルーフ・オブ・ワーク)をベースとする仮想通貨に対する課税の考慮。
3.情報公開と報告の義務化
法定通貨などと連動する、ステーブルコインを運用する企業の準備資産を開示する方法を改善化すること。
仮想通貨を取り扱う金融機関に対する強制開示要件を構築すること。
4.投資家の保護
仮想通貨を運用する企業に対し、透明性を保てる要件を作るとともに、行動基準を策定すること。
まとめ
ビットスタンプによる機関投資家や個人投資家などへの調査結果と、その結果に対するビットスタンプのジュリアン・ソーヤーCEOのコメントが仮想通貨の規制に言及していたことに加え、欧州中央銀行のファビオ・パネッタ専務理事が講演会で説明していた仮想通貨規制についてもご説明しました。
それぞれの主張はたまたま同じタイミングで報道されただけであり、双方とも似た内容を同時に発表する意図はなかったはずです。
しかし結果的には同じ考えに基づいて主張していることがお分かりいただけたでしょう。
仮想通貨は年々その意義を高めてきており、今や世の中になくてはならないものになっています。
しかしながら、その一方でマネーロンダリングやテロ利益供与だけでなく、最近ではロシアが経済制裁の抜け道として仮想通貨を利用しているのではないかとの説も浮上しています。
仮想通貨の地位が今以上に高まり、多くの人に利用されるようになるには、これらのダークな部分を排除していく必要があるのではないでしょうか。