G7でも懸念を表明された仮想通貨リブラ
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- 2019.07.19.
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- G7でも懸念を表明された仮想通貨リブラ
フランスのシャンティイで2019年7月17日と18日の二日間にわたって開催されるG7(主要7か国)財務相・中央銀行総裁会議において、最初の議論がおこなわれました。
この議論では色々な金融課題だけでなく、フェイスブックがホワイトペーパーを発表した仮想通貨リブラをテーマとして活発な意見交換がされました。
最終的にはこの会議に参加している全ての財務相によって、リブラに対する規制について早急に対応する必要があるという結論に至りました。
この結論に至る背景にはどのようなものがあるのでしょうか。
このニュースに対する詳しい内容をご説明するとともに、金融関係者や組織が次々に表明しているリブラに対する懸念も含めてご紹介しましょう。
G7財務相・中央銀行総裁会議後の発言
第一回の議論終了後、今回の財務相・中央銀行総裁会議の議長国であるフランス、ルメール経済・財務相が記者会見を実施しました。
この会見でルメール氏は、通貨を発行するのは国家の主権であり、リブラがそれを侵害してはならないこと。
そして、参加各国が仮想通貨リブラに対する懸念を表明したと発言しました。
また日本の麻生太郎財務相も、仮想通貨リブラがこれまでの仮想通貨とは異なることから、現在の規制が想定していなかった課題噴出の可能性があり、検討の必要性とリブラが考えている全体像の把握の重要性についても言及しました。
今会議で懸念された内容とは
今回のG7財務相・中央銀行総裁会議で話し合われたのは、マネーロンダリングやテロ支援資金に対する対策という仮想通貨が本来持っている危険性だけではなく、フェイスブックが抱えている個人情報の流用問題にも及んでいます。
また本来、通貨を発行できるのは国家の主権であるにもかかわらず、民間企業が発行する仮想通貨を認めるべきなのかということも議論されたようです。
この議論に対して、国が仮想通貨を発行している例もすでに存在していることから、今後G7各国で仮想通貨の発行を視野に入れているのではないかと解釈している報道も見受けられます。
活動を開始しているG7の作業部会とFSB
G7では、フランスでの財務相・中央銀行総裁会議に先駆け、2019年6月に加盟国の各中央銀行の専門家で結成された作業部会を設定しており、マネーロンダリングや消費者保護対策に加え、プライバシー保護の観点からも検討を進めていました。
今会議では、この作業部会の進捗状況について報告されたようです。
また6月末に開催されたG20から課題抽出調査を委託された金融安定理事会(FSB)も、すでに活動を開始しています。
FSBは金融システムの安定化のために、システムの脆弱性に対応するだけでなく、当局同士の協調を円滑にするために活動しており、世界の主要25か国の中央銀行や財務省、IMF、BISなどの代表が参加している組織です。
つまりG7財務相・中央銀行総裁会議が開催される前から、G7だけでなくFSBも仮想通貨や仮想通貨リブラに対する課題の洗い出しを始めていたということです。
特に作業部会から進捗状況と現状の報告を受けたG7財務相・中央銀行総裁会議が、仮想通貨リブラに対して懸念を明らかにしたということは、報告内容が懸念せざるを得なかったものであると推察されます。
仮想通貨リブラに対する各方面からの懸念
仮想通貨に対する懸念を表明しているのはG7財務相・中央銀行総裁会議だけではありません。
各方面から懸念の声が上がっています。
直近にあがった懸念の声についてご説明しましょう。
IMFが報告書で懸念
画像引用:IMF
IMF(国際通貨基金)が2019年7月15日に、仮想通貨リブラに関する報告書をまとめました。
報告書には、仮想通貨に付きもののマネーロンダリングとテロ支援資金になる可能性に付いてももちろん言及されていますが、特筆すべきは各国の中央銀行の金融政策が機能しなくなる可能性についてです。
その影響が大きく表れるのは極度のインフレが起こっていたり、新興国などでリブラが普及したケースです。
例えば、インフレで通貨価値が下がってしまった国の人がリブラを手にした場合、自国の通貨に換金すると価値が下がってしまうことを恐れ、換金せずに保有したままにすることが予想されます。
この傾向が顕著になると、小売業者は商品に対して自国の通貨ではなく、リブラで価格を付けることになります。
これが進んでいくと、中央銀行がいくら金融政策を実施しても影響を及ぼすことができなくなってしまいます。
すなわち、自国の通貨がリブラに乗っ取られてしまうわけです。
またその国の銀行にも大きな影響が表れてしまいます。
自国の通貨よりもリブラを保有する人が多くなると、銀行そのものが立ち行かなくなってしまいます。
それに加え、リブラの裏付けである国債を大量に手にする発行元が、その国債を直接運用するようになれば、銀行の仕組み自体が崩壊しかねません。
米公聴会での批判
2019年7月17日(日本時間)に開催された米上院銀行委員会によるフェイスブックの仮想通貨リブラに対する公聴会でも、批判が何度も述べられています。
この公聴会にはFacebook傘下に属するCalibraのデビッド・マーカスCEOが出席しました。
公聴会の冒頭から米上院銀行委員会メンバーのブラウン上院議員が、個人情報保護や選挙に対する介入で問題のあるフェイスブックは危険であるとし、そのような企業が金融サービスに参入することに対して批判的な発言をしました。
他の議員からも、マネーロンダリング防止策や消費者保護対策についての質問も多くあり、リブラだけでなく、フェイスブックに対する懸念があることが分かる内容となりました。
その他組織からの懸念
トランプ大統領がリブラに対して批判的なツイートを書き込んだことは広く知られていますが、7月15日にはムニューシン米財務長官もマネーロンダリング面での懸念を表明しています。
また英や仏の金融関係者からも慎重に取り組むべきであるとの声が上がっています。
フェイスブック側の姿勢
画像引用:David Marcus Twitter
米上院銀行委員会の公聴会に出席したデビッド・マーカス氏は、国の主権である通貨の発行や為替安定への懸念に対して、国家と競合することや干渉するような立場ではないことを主張し、国の金融政策に対しても何かをすることはあり得ないと説明しました。
そして今後もFRBや各中央銀行に対して理解を求め続けていく姿勢を示しています。
またマネーロンダリング対策には、資金犯罪取り締まりネットワークへの登録や各国の規制に従い、適切な枠組みが決まるまではサービスを開始することはないと説明しています。
これはつまり、フェイスブックが当初目標にしていた2020年前半にサービスを開始するということに対して、開始時期よりも承認を受けるのが優先であると述べたことになります。
まとめ
仮想通貨リブラは、例えば米国だけであっても銀行法以外に多くの規制を受けることになります。
仮想通貨は世界のあらゆる国で取引できるため、世界中の国の規制を受けることになり、それらを全てクリアしていかねばなりません。
実際に発行までこぎつけることができるものなのか、また発行できたとしてもいつになるのかは、現時点で予想もできません。
仮想通貨リブラは、これまでにないステーブルコインであるために世界中で議論が起き、批判や懸念の声も多く聞かれます。
しかし仮想通貨に対する規制は国によりまちまちで、とらえ方も定まっていない現在、リブラの存在が議論を活発化させた起爆剤になっていることは否めません。
その意味では、リブラの存在には大きな意味があるのかもしれません。