やっと金融庁が仮想通貨税制改正に言及した要望書を提出
- 仮想通貨関連
- 2024.08.31.
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- やっと金融庁が仮想通貨税制改正に言及した要望書を提出
株や投資信託などで得た所得に対しては当然税金が掛かります。
日本において、株式投資などで得た所得に対しては分離課税となり、一律20%ほどの税金がかかってきます。
しかし仮想通貨取引によって得た利益は分離課税ではなく、総合課税つまり雑所得とみなされ、給与所得などの他の所得と合計した総所得金額に対して累進税率が適用される仕組みとなっています。
つまり総所得金額が大きくなればなるほど税率が高くなり、例えば1億円の所得があった場合には所得税率が45%になり、さらに住民税として10%が課税されるということになります。
また仮想通貨FXなどを取引していた場合、全ての取引で利益が出るわけではなく、損切りするケースもあるでしょう。
しかし全ての仮想通貨FX取引で利益が出た場合には、その利益額だけに対して累進課税が適用されてしまいます。
すなわち損益のことは全く考慮されず、利益額だけに対して累進税率が適用されてしまうという理不尽な税制がまかり通っているわけです。
これまで仮想通貨取引に対する税の不公平さについて、関係団体や議員が声を挙げてきましたが何の進展もなく、未だに理不尽な税制のままでした。
しかし2024年8月30日、金融庁が初めて仮想通貨税制改正に言及した要望書を提出したことが報じられました。
この報道について、詳しい内容をご紹介しましょう。
金融庁が税制改正要望を提出
金融庁が与党税制調査会や国会審議のために提出した税制改正要望書を、2024年8月30日に公開しました。
画像引用:金融庁
この税制改正要望書は税制調査会および国会などで審議するために提出されているもので、金融庁だけでなく各省庁から提出されているものです。
この要望書はあくまでも金融庁が作成したものであり、現時点で仮想通貨に対する税制が改正されたわけではなく、あくまでも検討が必要であると金融庁が要望しているものにすぎません。
ただし、これまで仮想通貨関係団体や議員などが税制改正を要望していましたが、一度も仮想通貨税制改正に言及した要望書は提出されておらず、今回初めて要望書の中に盛り込まれたことになります。
税制改正要望書の記述内容
金融庁が公開した税制改正要望書では、仮想通貨税制についてどのように記述されているのでしょうか。
画像引用:金融庁
仮想通貨税制については、要望書の『「資産所得倍増プラン」及び「資産運用立国」の実現』の項内にある「金融所得課税の一体化(金融商品に係る損益通算範囲の拡大)」内で触れられています。
なお表現としては、以下のように記述されています。
なお、暗号資産取引に係る課税上の取扱いについては、暗号資産を国民の投資対象となるべき金融資産として取り扱うかなどの観点を踏まえ、検討を行っていく必要。
引用:金融庁
デリバディブ取引の損益に関して
上で説明した「金融所得課税の一体化(金融商品に係る損益通算範囲の拡大)」内では、デリバディブ取引についても触れられています。
しかしながら、デリバティブ取引・預貯金等について、未だ損益通算が認められておらず、投資家が多様な金融商品に投資しやすい環境の整備は、道半ば。
引用:金融庁
これはつまり株や特定公社債などに投資し、損益が発生した場合には損益としてしっかり計上できるものの、仮想通貨取引やデリバディブ取引では損益が発生した場合でも計上できず、利益が出た時だけ累進税率が適用されてしまう不公平さを問題だと指摘しているわけです。
すなわち投資家が色々な金融商品に投資しやすい環境が整っていないことを指摘しており、金融商品の損益通算範囲をデリバティブ取引などにも拡大しなければならないと主張していることになります。
金融庁と農林水産省・経済産業省の共同要望
上で紹介した内容は、金融庁だけが要望しているわけではありません。
金融庁と農林水産省・経済産業省の共同要望でもあることがしっかりと明記されています。
金融庁単独の要望ではなく、他の省庁からも要望が出ていることに対して、税制調査会や国会ではどのような議論が交わされるのでしょうか。
国際Web3カンファレンス「WebX」で説明された税制改正に必要なこと
税制改正をおこなうにあたり、どのようなことを明確にする必要があるのかは、Web3メディアであるCoinPostが企画・運営し、一般社団法人WebX実行委員会の主催で2024年8月28日から29日の日程で開催された国際Web3カンファレンス「WebX」内でも言及されていました。
画像引用:webx-asia.com
この「WebX」には元内閣府特命担当大臣であり、元税制調査会の幹事でもある、小倉將信自民党副幹事長が出席しており、席上で仮想通貨の税制改正を実現させるにはどのようなことを明らかにしなければならないかを説明していました。
小倉將信自民党副幹事長は、税制改正に必要なことは「理論的根拠」と「税収予測」、そして「国民の理解」の3つであると述べています。
「理論的根拠」としては、税制改正が必要であることを論理的に説明できるかどうかであり、「税収予測」としては、税制改正することで税収的にメリットがあるかどうかであると述べ、「国民の理解」は仮想通貨への投資が国民の資産形成にいかに役立つかであると説明していました。
そして株などへの投資で得た利益に対する課税である「分離課税」と、現在の仮想通貨取引やデリバディブ取引などで得た利益に対する課税が「累進課税」になっているのは「日本として推奨している投資として適合しているかどうか」であるとも述べています。
これはすなわち、仮想通貨に対する投資が資産の形成に値するかどうかを国に認めさせねばならないということです。
まとめ
金融庁が与党税制調査会や国会での審議のために提出した税制改正要望書内で、仮想通貨に対する税制改正について記述されていた内容に加え、「WebX」で説明された税制改正を認めさせるためにはどのようなことが必要かについてご紹介しました。
今回の税制改正要望書内にあった「金融所得課税の一体化(金融商品に係る損益通算範囲の拡大)」は、金融庁だけが要望しているわけではなく、農林水産省や経済産業省までもが要望している内容です。
明らかにおかしな仮想通貨税制は是正されなくてはなりませんが、与党税制調査会や国会ではどのような審議が繰り広げられるのでしょうか。
また現在、米国で多くの投資家が資金投入しているビットコイン現物ETFなどが、今後日本で解禁されるかどうかも、税制問題を明確にしなければ日本で展開することはできません。
ビットコイン現物ETFで得た利益は「分離課税」で、現物取引やデリバディブ取引で得た利益は「累進課税」といったような不合理が起こりかねないからです。
仮想通貨税制の審議の行方に注目しましょう。