2022年の北朝鮮の仮想通貨ハッキング額は過去最大規模
- 仮想通貨関連
- 2023.02.10.
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以前から北朝鮮のハッカーグループによる仮想通貨ハッキングは何度も話題になってきていましたが、国連に提出された報告書によると、2022年は北朝鮮ハッカーによってこれまでで最大額の仮想通貨がハッキングされていたことが分かったと、ロイターが報じました。
北朝鮮では2月7日に軍事会議が開催され、その席上、金正恩朝鮮労働党総書記は軍事演習を拡大するだけでなく、戦争準備態勢を強化していくことも表明しています。
また翌8日には軍事パレードをおこない、新たなICBM(大陸間弾道ミサイル)も公開したようです。
おそらく、ハッキングした仮想通貨はこれらのために使われているのだろうと考えられますが、一体、北朝鮮はどのぐらいの規模でハッキングをおこなっていたのでしょうか。
このニュースについて詳しくご説明しましょう。
国連提出の報告書についてロイターが報道
2022年2月7日にロイターが報道したところによると、国連の15カ国から組織されている北朝鮮制裁委員会が国連安全保障理事会委員会に対し報告書を提出しており、北朝鮮が2022年にハッキングした仮想通貨はこれまで最大規模であったと記載されていることが分かったとのことです。
画像引用:REUTERS
北朝鮮制裁監視団の報告によると、韓国は北朝鮮のハッカーが2022年にハッキングした仮想通貨は6億3,000万ドルにも及ぶと推定しているようですが、サイバーセキュリティ会社によると、10億ドル以上もの仮想通貨をハッキングしていたとも報告されています。
そしてこのハッキング被害額は、これまでの被害額よりはるかに多く、どの年よりも多かったとしています。
また北朝鮮がハッキングしていたのは仮想通貨だけではありません。
海外の航空宇宙や防衛産業のネットワークに入り込み、兵器プログラムなどを含んだ情報をハッキングしていたとも報告されています。
北朝鮮制裁監視団は以前から、北朝鮮がサイバー攻撃によって得た資金や情報を利用し、核やミサイル計画の資金としていることを報告していましたが、近年になって北朝鮮のサイバー技術はより高度になっていることもわかりました。
そのため、ハッキングされた仮想通貨を追跡することも困難であることも説明しています。
データ分析企業Chainalysisの分析ではもっと多い額
ブロックチェーンデータ分析企業であるChainalysis(チェイナリシス)は、2023年2月1日のレポートでは、ハッキングされた仮想通貨は国連の北朝鮮制裁監視団による報告書よりもっと多い額を主張しています。
画像引用:Chainalysis
チェイナリシスのレポートでは、北朝鮮からのハッキングは他のハッキンググループの中でも群を抜いており、推定で17億ドル相当の仮想通貨を盗んでいたと書かれています。
以下のグラフは、2016~2022 年に北朝鮮関連のハッカーによって盗まれた暗号通貨の年間別総額を示したものです。
画像引用:Chainalysis
このグラフを見ると北朝鮮は2022年、これまでの年とは違い、いかに多くの仮想通貨をハッキングしていたか、その増え方が分かるはずです。
2022年に北朝鮮のハッキング額が急激に増えた背景には、急激に普及してきたDeFiプロトコルがあります。
北朝鮮はDeFiプロトコルのハッキングの多くを占めており、17億ドルの仮想通貨のうち、およそ11億ドルはDeFiプロトコルのハッキングによって得たものだろうと説明しています。
やはりミキシングサービスが活用されていた
では北朝鮮のハッキンググループは、盗んだ仮想通貨をどのようにマネーロンダリングしているのでしょうか。
チェイナリシスは、2021 年から 2022 年にかけて、北朝鮮のハッカーは仮想通貨をマネーロンダリングするためにトルネード キャッシュを使用していたと説明しています。
しかしトルネード キャッシュが 2022 年 8 月に制裁を受けて以降、利用しづらくなったため、新たなミキシングサービス先としてSinbadを利用していることも明らかになっています。
Sinbad は、2022 年 10 月に開始されたBitcoinミキシングサービスのことです。
北朝鮮経済のほとんどを占めるハッキング資金
2022年に北朝鮮がハッキングした仮想通貨の総額が17億ドルであることは、北朝鮮はハッキングによって成り立っている部分があるともいえます。
それは2020年の北朝鮮の総輸出額が1億4,200万ドルほどであり、それから想像されるのはハッキングによって得た資産が、北朝鮮経済のかなりの部分を占めていることになるからです。
チェイナリシスのレポートでは、北朝鮮が核兵器を開発するために用いている資金はハッキングによって得たものであるとしています。
つまり、本記事の冒頭で紹介した北朝鮮が「演習や戦争準備態勢を強化」する動きだけでなく、軍事パレードで公開した新たなICBM(大陸間弾道ミサイル)の開発および製造もハッキングによって得た資金が利用されているはずです。
また北朝鮮は昨年、何度もミサイルを発射しています。
1月6回、2月1回、3月3回、5月4回、6月1回、9月3回、10月5回、11月5回、12月1回を発射しており、2022年には合計29回(55発)のミサイルを発射したことになります。
おそらくこの開発および製造資金もハッキングによるものではないかと考えらます。
北朝鮮はハッキング疑惑に対して何度も否定しているようですが、実際にはこのような事実が明らかになりつつあります。
まとめ
北朝鮮の仮想通貨ハッキングによる被害額が2022年は過去最大になっていただけでなく、その資金のほとんどが核兵器やミサイルなどの軍事目的に使われていることについてご説明しました。
仮想通貨はまたまだ一般に浸透しているとはいいがたく、またマウントゴックスやFTXなどのような不祥事から、投資家の仮想通貨離れも指摘されています。
このような環境下でありながら、北朝鮮にハッキングされ、なおかつ軍事目的に使われているとすれば、今以上のイメージダウンにつながりかねないでしょう。
一刻も早い対策を講じてもらいたいものです。