SECの仮想通貨取り締まりが投資家の投資意欲促進に
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- 2022.10.26.
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以前から米SEC(米証券取引委員会)は仮想通貨業界の取り締まりを強化する方針を示していましたが、9月にSECの執行部ディレクターであるGurbir S. Grewal(グルビル・グレワル)氏は法的措置を取り続けることに言及していました。
同氏は仮想通貨が証券取引法に違反している証拠がはっきりすれば訴訟を起こすと明言していましたが、この方針にはSEC内部などからも批判の声が出ていました。
しかしブルームバーグが2022年10月に調査したところによると、米の投資家は仮想通貨業界に対する取り締まりをどちらかといえば歓迎しており、取り締まりによって今後投資の可能性が高まると評価している比率が高いことが明らかになりました。
このニュースについて詳しくご説明しましょう。
仮想通貨業界へ取り締まりで投資意欲が高まる
Bloombergが実施したMLIV Pulse(マーケッツ・ライブパルス)週間調査によると、米SEC(米証券取引委員会)による仮想通貨業界に対する取り締まりについて、調査対象である投資家の多くがポジティブな兆候であると受け止めていることが分かりました。
この調査結果については、2022年10月24日にBloombergが「投資家は、米SECが積極的になるにつれて、仮想通貨はより魅力的だと言う(Google翻訳)」と題した記事で報じられました。
画像引用:Bloomberg
Bloombergのマーケッツ・ライブパルス週間調査は2022年10月17日から21日にかけて実施されており、対象は564人の個人及びプロ投資家だとされています。
そしてこの投資家のうち、およそ60%が仮想通貨業界に対する取り締まりについて、投資をするうえでポジティブな兆候であると評価していることが明らかになりました。
仮想通貨に投資する可能性が高まるとの声
Bloombergの調査対象のうち、個人投資家の65%はこの取り締まりによって、今後仮想通貨に投資する可能性が高まったと評価していました。
一方、プロ投資家のうち高く評価していたのは個人投資家ほどではないものの、それでも56%が評価していることが分かりました。
これはつまり、現在はまだ仮想通貨は投資対象ではないものの、この取り締まりによって仮想通貨に投資する可能性が出てきたと感じている投資家が半分以上存在しているということです。
なおTIAAバンクの世界市場担当プレジデントであるクリス・ギャフニー氏も規制が強化されることで、より多くのプロ投資家が仮想通貨に参加するための扉が開かれると述べていることもBloombergは説明しています。
仮想通貨に投資する可能性が低くなるとの声
仮想通貨業界に対する取り締まり強化によって、仮想通貨に投資する可能性が高くなると答えた人ばかりではなく、もちろん投資の可能性が低くなると答えた人もいました。
調査対象の個人投資家のうちの35%と、プロ投資家の44%は可能性が低くなると答えていました。
仮想通貨業界に対する米SECの取り締まり
米SECは以前から仮想通貨業界に対する取り締まりについて言及していましたが、2022年9月9日にワシントンで開催されたカンファレンスにおいても、SEC執行部ディレクターのGurbir S. Grewal(グルビル・グレワル)氏はどのような技術が用いられているかは関係なく、証券取引法に違反している証拠がはっきりすれば訴訟を起こすと発言していました。
画像引用:SEC
米SECが仮想通貨業界に対する取り締まりを強化する理由として挙げていたのが、投資家の保護です。
仮想通貨には多くの個人投資家が魅力を感じて投資しているものの、何らかの要因で仮想通貨市場が下落すると、大きな負担を負ってしまう可能性があること。
また仮想通貨に投資しているのは非白人や低所得の投資家が多いことから、下落した際の影響の大きさについても言及していました。
また米SECの仮想通貨業界に対する取り締まり強化が、技術革新の阻害にあたるとの批判があることも承知したうえで、それでも投資家や市場の利益のためには取り締まりが必要であるとのスタンスを説明していました。
米SEC内部などから取り締まりに対する批判
米SECの仮想通貨業界に対する取り締まり強化については、米SEC内部でも批判的な声が挙がっており、Gurbir S. Grewal(グルビル・グレワル)氏が取り締まりに関して発言した同じカンファレンスの席上でも批判的な声がありました。
画像引用:SEC
仮想通貨業界に対する取り締まり強化に批判的な発言をしたのは、米SECのMark T. Uyeda(マーク・ウエダ)委員です。
同氏は明確なガイドラインがないにもかかわらず、訴訟などの法的措置を取ることによって取り締まりをおこなっていることを批判しています。
そして一番の問題は、仮想通貨を規制するのか、仮想通貨関連サービスを規制するのかが明確でなく、規制の指針も明らかになっていないこと。
さらに仮想通貨は証券と位置付けるのかどうか、もし証券ならば投資家はどうやって連邦証券法や米SECの規則に沿えば良いのかが不明瞭であることも問題視しました。
また現在の取り締まり強化を続けると、仮想通貨企業の海外流出にもつながりかねないと主張していました。
なお、Mark T. Uyeda(マーク・ウエダ)委員と同様の批判は、米国議員や仮想通貨業界関係者からも挙がっていることが報じられています。
取り締まり強化には批判があるも投資家は評価
米SECの仮想通貨業界に対する取り締まり強化策に対しては、米SEC内部だけでなく、米国議員や仮想通貨業界関係者からの批判的な声が多く挙がっています。
特に「法的措置による規制」をするのではなく、広く一般から市場の慣行に加え、仮想通貨業界の発展についての見解を取り入れるべきであるとの声があるようです。
このように取り締まる側や仮想通貨業界関係者から批判の声が挙がっている一方で、Bloombergの報道にあったように、個人投資家やプロ投資家は取り締まり強化によって仮想通貨に投資する可能性が高まっているとの意見が挙がってきているわけです。
まとめ
米SECの仮想通貨業界に対する取り締まり強化が、投資家にどのような影響を及ぼすのかについてBloombergの報道をご紹介するとともに、この取り締まり強化に対する批判の声があることもご説明しました。
この報道から仮想通貨はまだまだ未成熟な存在であり、仮想通貨業界だけでなく規制する側も混乱していることが分かります。
この混乱が収まり、世の中に定着するまでにはまだまだ時間がかかるでしょう。
しかし仮想通貨や仮想通貨業界を排除するのではなく、時代に適応した形に落ち着かせようとする姿勢さえあれば、いずれ誰もが納得できるものになっていくはずです。
早くそんな時代が来て欲しいものです。