ビットコイン半減期が変化させるマイナー業界
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- 2020.05.22.
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ビットコインは2020年5月12日に3度目となる半減期を迎えました。
半減期はマイナーのマイニング報酬が半額になるもので、今回の半減期によって報酬は6.25BTCとなりました。
マイニング報酬はマイナーにとって非常に重要な収入です。
その収入が半分になってしまうのですから、マイナー全体の収益率は大きく低下してしまいます。
収益率が下がった分をカバーできる要素、例えば電気代が安くできたり、人件費を下げる、マイニングスピードを上げるなど、何らかの打開策が打ち出せなければ企業としてやっていけなくなります。
今回の半減期を契機として、マイニング業界ではどのようなことが起こっているのでしょうか。
マイナーにとって厳しい現状
前述したように、ビットコインは3回目の半減期を迎え、マイニング報酬が半分になった状況の中、半減期後初めてとなるマイニングの難易度、ディフィカルティの調整が2020年5月20日にありました。
ディフィカルティは-6.00%とマイナス調整ではあったものの、半減期でマイナー報酬が減ったことを考えると、厳しい状況であることに変わりないでしょう。
画像引用:btc.com
さらにビットコイン価格も上がりきらず、2020年5月21日19時30分現在のtradingviewBTCJPYでは100万円台を推移しているなど、新型コロナウイルスの影響で大きく値下がりした時から比較すると倍近くの価格になってはいるものの、過去の高値の時期から考えると決して高騰と呼べるほどのものではありません。
マイニング報酬はビットコインで得られるため、ビットコイン価格が上がらなければ実質的な報酬額は減ることになります。
すなわち今回のビットコイン半減期によってマイナーは、厳しい状態に陥っているといえます。
HyperBlock社が施設閉鎖と破産手続き
半減期によって厳しい経営が続くマイナーの中でも、大規模な施設を保有している米の大手マイナーであるHyperBlock社が、2020年5月15日に自社サイトの中で施設閉鎖と破産手続きを開始したことを発表しました。
画像引用:HyperBlock
HyperBlock社は米トロントに本社を置き、モンタナ州ミズーラで20メガWにも及ぶ大規模マイニング施設を運営していました。
事業は自社でのマイニングだけでなく、サービスとしてのマイニングやサーバーホスティング、サーバーハードウェアの販売などを展開していました。
HyperBlock社が苦境に陥った原因
HyperBlock社がこのような状況に陥った根本原因として挙げているのは、やはりマイニング報酬の減少ですが、それ以外の要素も大きく影響しているようです。
「マイナーにとって厳しい現状」の項でも述べたように、ビットコイン価格が思ったほど高騰しない現状や、ハッシュレートの高さも影響しているようです。
またHyperBlock社の場合は、マイニングに必須である安価な電力供給が困難になったことも理由に挙げています。
HyperBlock社は電力供給会社であるEnergy Keepers社と長期契約を結んでいたため、安価な電力が安定供給されていました。
しかしその契約も2020年5月14日に終了しています。
HyperBlock社は打開策となる安価な電力の安定供給方法を検討していたようですが、施設閉鎖と破産手続きを介したということは、打開策を見つけることができなかったということなのでしょう。
マイニング業界の新勢力が登場
HyperBlock社のようにマイニングから撤退してしまう企業がある一方で、新たにマイニング業界に参入してくる新勢力も存在しています。
それが米のマイニングプールです。
マイニング業界はその60%以上を中国に本拠地を構える中華系マイニングプールが占めていますが、近年では米国でマイニングをおこなうマイニングプールが増えてきています。
米でも特にテキサス州の複数の市においては、住宅用電力よりも産業用電力を安く供給しています。
安いところでは、0.048ドル/kWhや0.0404ドル/kWhで供給されている地域も存在しているようです。
中華系マイニングプールが多い中国四川省でも0.05ドル/kWh程度であることから、テキサス州の方が有利という背景も影響しています。
さらに米では州ごとに税率が異なり、特にテキサス州は税率が低いため自動車メーカーであるGMやトヨタもテキサス州に工場を構えて製造拠点にしています。
Layer1 Technology社の新規参入
上記の事業運営に有利な環境を背景にして、テキサス州で新しく稼働を始めたのがLayer1 Technology社です。
画像引用:Layer1 Technology
Layer1 Technology社は米のマイニング企業であり、米PayPalの共同創業者で起業家、投資家でもあるPeter Andreas Thiel(ピーター・アンドレアス・ティール)氏だけでなく、DCG(Digital Currency Group)も出資しています。
Layer1 Technology社は2020年2月から既にマイニングを稼働させており、2021年末までにマイニングのシェアを30%にまで拡大していくことを目標に掲げています。
実はこの30%のシェアとは、現在マイニング業界で1、2位を争うF2PoolやBTC.comと同等のシェアです。
つまりLayer1 Technology社には、F2PoolやBTC.comと同等レベルにまでシェアを拡大させられる勝算があるということになります。
ちなみにLayer1 Technology社の事業計画は、マイニングだけにとどまっていません。
マイニングに特化した独自のASIC開発を視野に入れているだけでなく、マイニング設備用に自前で変電所建設まで建設することを計画しているようです。
すなわちマイニングに関連する全ての事柄を事業として統合していく考えのようです。
SBIホールディングスもマイニング事業に参入
さらに米テキサス州で、新たにマイニング事業に参入する日本の企業の存在も見逃せません。
2020年1月10日のニュース記事「マイニング業界での発掘力UPに向けた更なる動き」でもご説明したように、SBIホールディングスはドイツのマイニング企業Northern Bitcoin社の子会社である米Whinstone社と既に契約しており、やはりテキサス州でマイニング事業を展開するとしています。
既存最大手マイナーもテキサス州に施設建設
現在中国でマイニングをおこなっている中華最大手マイナーも、米テキサス州でマイニングファームを稼働させることを考えているようです。
それは世界最大規模のマイニング企業、Bitmain社です。
Bitmain社はテキサス州のロックデールに、50メガWのマイニングファームの建設を始めたことを2019年10月21日に発表しています。
またこのマイニングファームは、将来的に300メガWにまで設備を拡大する構想があるとのことです。
このような大規模施設の構想も、米テキサス州の安い電力や低い税率が背景にあるからでしょう。
まとめ
ビットコインが半減期を迎え、マイナーのマイニング報酬が半分になってしまったことで、事業を止めざるを得なくなった企業の事情だけでなく、より効率的に利益を得るためにマイニングに関する全てを事業として位置付ける企業など、厳しい状況下での生き残り戦略についてご説明しました。
これらの情報をみる限りでは、半減期後のマイニング事業は資本力がなければ成り立たないものになってきているようです。
電気代が安く、税率も低い地域に大規模施設をすぐさま建設でき、しかもマイニング業務だけを事業とするのではなく、ASIC開発や変電所建設まで手掛けるのは小規模資本では到底真似できません。
またこのような企業は、電気代や税率などが今よりも値上がりすることになれば、すぐに代替場所を探し、移転することもいとわないのでしょう。
このようなことも、資本が少ない小規模なマイナーには真似できません。
今後はこのような大規模マイナーによってマイニングが占められていくのでしょう。
また今後のマイナー業界では、中国対米の構図が顕著になってくるのかもしれません。
そしてその対決を制するのはどちらなのでしょうか。
そのことによる何らかの影響はないのでしょうか。
半減期を機に大きく動き始めたマイナー業界に、引き続き注目しておく必要があるでしょう。