フェイスブックがリブラプロジェクトを見直しか?
- 仮想通貨関連
- 2020.03.06.
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- フェイスブックがリブラプロジェクトを見直しか?
2019年にホワイトペーパーが発表されたフェイスブックの仮想通貨リブラは、世界中に大きな反響を巻き起こしました。
リブラのホワイトペーパーの内容は、これまでにない革新的なものではありましたが、ヨーロッパの金融規制当局だけでなく、フェイスブックのお膝元でもある米国の金融規制当局からも非難されました。
その仮想通貨リブラプロジェクトが見直しを図っているとの報道が、複数の報道機関からありました。
ただその内容は報道各社によって微妙に異なるようです。
どのような報道があったのか、詳しくご説明しましょう。
フェイスブックがリブラプロジェクト見直し?
2019年に発表されたフェイスブックの仮想通貨リブラのホワイトペーパーは、各方面から大きな注目を集めました。
しかしその内容だけでなく、フェイスブックがこれまで起こしてきた個人情報の取り扱いにも非難が集中し、有力協賛企業が脱会するなど、プロジェクトがなかなか進まない状態に陥っていました。
このような状況の中、複数のメディアによってリブラプロジェクトの見直しが報道されています。
Bloombergによる報道
米の金融情報サービス会社であるBloombergが、2020年3月4日に「Facebookが規制上の懸念に対処するためにLibraの刷新を検討(Google翻訳)」と題したニュース記事を報道しました。
画像引用:Bloomberg
Bloombergの報道では以下の内容が記述されています。
Facebook Inc.およびそのパートナーは、Libra暗号通貨プロジェクトの再設計を検討しており、ネットワークが中央銀行によって発行されたものを含む複数のコインを受け入れ、不本意なグローバル規制当局に懇願し、計画の勢いを再構築するために努力しています。
引用:Bloomberg Google翻訳
これはつまり、リブラプロジェクトは改めて設計し直すことを考えていること。
そして各国の中央銀行が発行するデジタル通貨(CBDC)だけでなく、他のデジタル通貨も決済できるネットワークの構築を図ることで、各国の金融規制当局から承認を得られるようにしたいという意味に受け取れます。
またBloombergには以下の内容も合わせて記述されています。
1つのグローバルコインの夢は死んでいません。
新しい計画は、元のビジョンから引き戻すのではなく、拡大する可能性がある、と彼は言った。
引用:Bloomberg Google翻訳
これらの報道内容を合わせて考えると、仮想通貨リブラを諦めたわけではないが、逆風が強すぎるために難航しているリブラを軌道に乗せるためには、多くの中央銀行が現在取り組んでいるCBDCなども決済できるネットワークにすれば、反発もやわらぐだろうと考えていることが分かります。
そして最終的にリブラもそのネットワークで決済できるようにしたいというのが本音だということになります。
The Informationによる報道
ウォール・ストリート・ジャーナルの記者だったジェシカ・レッシン氏が2013年に設立したテック情報に特化したニュースサイト、The Informationは「Facebookは規制当局に屈してLibraの計画を刷新(Google翻訳)」と題した記事を発表しています。
画像引用:The Information
The Informationの報道によると、フェイスブックの子会社であるカリブラは、2020年10月にWhatsAppとMessengerから提供する仮想通貨ウォレットをリリースする予定になっているとのことです。
そしてこのウォレットで一部の国のCBDC取引に関わることを考えており、そのために米だけでなく、現在欧州でも開発が進んでいるCBDCの発行をバックアップすることを考えているとしています。
さらに、リブラ以外の別のステーブルコインの発行を視野に入れているとも報じていますが、それはリブラの構想とは異なるもので、米ドルやユーロなど一部の国の法定通貨のみを対象にしたものと伝えています。
Reutersによる報道
国際ニュース通信社であるReutersは、「フェイスブック、リブラ構想見直しへ 法定通貨デジタル版も検討」と題した、リブラとは別の法定デジタル通貨に関する情報に重点を置いたニュース記事を報道しています。
画像引用:Reuters
Reutersのニュースソースは前述のThe Informationであり、その内容を引用していますが、フェイスブックの広報担当者に独自の取材もおこなっているようです。
それによると、リブラの発行は従来通り計画を進めていますが、リブラとは別の新たなデジタル法定通貨にも現在取り組んでいることを認めているようです。
つまり「The Informationによる報道」の項で記述した米ドルやユーロなど、一部の法定通貨に対応したデジタル通貨ということになるのでしょうか。
各報道内容のニュアンスの違い
2020年3月6日時点でのフェイスブックの仮想通貨リブラに関する報道についてご説明しましたが、どの報道も微妙にニュアンスが異なります。
リブラはとりあえずそのままにしておき、CBDC発行のバックアップに回るという報道があるかと思えば、各国が発行するCBDCをウォレットで対応できるようにするのが重要であるような報道もあり、はっきりしません。
また新しく検討しているリブラ以外の通貨もステーブルコインなのか、それともデジタル法定通貨なのかもよく分からない状態です。
リブラが持っていた魅力とは
各報道のニュアンスが微妙に異なるため、正確な判断はできかねますが、フェイスブックはどうやらリブラとは別のデジタル法定通貨、もしくはステーブルコインの発行を検討しているようです。
ただこの情報もどこまで正確かは不明ですが、新しく検討しているとされる仮想通貨はどうやらリブラとは異なり、一部の国の法定通貨をデジタル化したもの、もしくはペッグしたステーブルコインのようです。
リブラは一部の国の法定通貨ではなく、米ドルやユーロ、日本円、ポンドなど、多くの国の法定通貨に連動するとしていたことが特徴でした。
そのために世界中から大きな注目を集めたわけです。
しかし一部の国の法定通貨だけをデジタル化するのであれば、CBDCとどう差別化するのでしょうか。
またペッグするのであれば、すでに法定通貨にペッグしたステーブルコインは存在しています。
これらとの差別化をどう図っていくのでしょうか。
フェイスブックが抱える根本的な問題
さらに、リブラや上記のデジタル法定通貨、もしくはステーブルコインを構想しているフェイスブックには大きな問題があります。
それが個人情報の取り扱いについてです。
フェイスブックの個人情報取り扱いがずさんであることは、2019年12月24日のニュース記事「ECB総裁がリブラに懸念を表明」でもご説明し、それ以外のニュース記事でも度々ご説明してきました。
個人情報のずさんな取り扱いによってデジタル通貨やステーブルコインの情報が漏洩してしまった場合には、SNSの情報が漏洩してしまった場合とは比べ物にならないほどの大問題となってしまいます。
デジタル通貨やステーブルコインで決済できるようにするということは、どこで、いつ、幾らのものを、何に使ったのかが全て分かるということです。
この情報が把握され、漏洩してしまうということは、行動を全て知られてしまうということになります。
中国のデジタル人民元発行の目的のひとつが、中国国民の行動を把握し、統率するためとされていますが、それと同じことがおこなわれてしまう危険性も含んでいるといえます。
つまりフェイスブックは、これまで何度も漏洩させた個人情報の扱いの改善策が明確にならなければ、例えデジタル通貨やステーブルコインであっても、世界から歓迎されないのではないかと考えられます。
まとめ
フェイスブックがリブラプロジェクトを見直すとした報道について、現時点ではまだ不正確な部分があるものの、全容をご説明しました。
時間の経過とともに、フェイスブックの構想内容も追って報道されるでしょう。
詳しいことが分かり次第、改めてご説明させていただきます。