フェイスブックは苦難があってもリブラ取り組み継続
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- 2020.01.31.
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2019年にホワイトペーパーが発表されたフェイスブックの仮想通貨リブラは、お膝元の米国だけでなく、EU諸国からも大きな反発を招きました。
リブラの当初の計画では、2020年前半に運用を開始すると目標を掲げていましたが、どうやら現状ではそれも難しそうです。
しかもフェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOが、仮想通貨リブラに対して言及している内容が以前よりトーンダウンしていることが読み取れるようになってきました。
ただしリブラを諦めたわけではなく、リブラへの取り組みは継続していくと説明しています。
最近のフェイスブックとリブラ関連のニュースについてご説明しましょう。
ザッカーバーグ氏がFacebookでリブラ継続を発言
フェイスブックは2020年1月29日に第4四半期の決算を終えたことを発表しましたが、CEOであるマーク・ザッカーバーグ氏は、自分のFacebookアカウントに今後の取り組みなどについての声明文を投稿していました。
その声明文の中には、ワッツアップペイメントだけでなくフェイスブックマーケットプレイス、そしてインスタグラムショッピング、フェイスブックペイでの商取引ができるよう取り組んでいることに加え、リブラにも取り組んでいることが述べられています。
つまりフェイスブックは仮想通貨リブラに対して、これまで通り取り組みを継続していくということを宣言したわけです。
今後の10年のビジョン発表ではリブラを明言せず
上記のFacebook投稿のおよそ20日前にあたる2020年1月10日、マーク・ザッカーバーグCEOは、やはりFacebookの自身のページで今後10年間のビジョン、つまり2030年までの長期ビジョンを説明していますが、この際には仮想通貨リブラに対する明言はありませんでした。
この時Facebookに投稿されていた内容で注目すべき点は以下のようなものです。
次の10年間で、これらの変化を可能にするために、より若い起業家、科学者、リーダーに資金を提供し、プラットフォームを提供することに重点を置きます。
(中略)
私たちが最も注力している分野は、中小企業の支援です。
(中略)
次の10年にわたって、すべての小規模企業が以前は大企業だけが持っていたのと同じテクノロジーに簡単にアクセスできるように、商取引および支払いツールを構築したいと考えています。
誰でもInstagramのストアフロントで製品を販売したり、メッセンジャーで顧客にメッセージを送ったりサポートしたり、WhatsAppですぐに低コストで他の国にお金を送ったりできるようにすれば、より多くの機会を生み出すことに大いに役立つでしょう 世界中で。
引用:Mark Zuckerberg Facebook Google翻訳
これを見ると、資金やプラットフォームの提供だけでなく、小規模企業が商取引や支払いなどで活用できる支払いツールを構築しますと述べてはいるものの、肝心の支払うための通貨であるリブラについては一切触れられていません。
リブラについて触れずに10年のビジョンを説明していることは、反発の火に油を注ぐことにもなりかねないだけでなく、反発が強すぎて今後のビジョンが立てられない状況にあるとも考えられます。
今年になって起きた逆風
昨年ホワイトペーパーが発表されてから、各国の政府関係者や金融関係者からの仮想通貨リブラに対する逆風はすさまじいものがありましたが、2020年に入ってからも仮想通貨リブラやフェイスブックに対するマイナス要素が幾つも見受けられます。
これらについてご説明しましょう。
リブラ協会からボーダフォンが脱退
仮想通貨リブラはフェイスブックが運営するのではなく、協賛企業が加盟するリブラ協会が運営をおこなうことになっています。
しかし、2019年10月には加盟企業のうちイーベイ、ビザ、マスターカード、ペイパル、メルカドパゴ、ストライプの6社が脱退しています。
そして2020年1月21日、世界でも最大規模の携帯電話事業会社であるボーダフォンがリブラ協会から脱退したことが判明しました。
脱退の理由についてボーダフォン側は、2007年から展開しているモバイル銀行サービスM-Pesaに専念したい旨を説明していますが、リブラの進捗を見ながら再度協会に加盟する可能性についても言及しています。
これは、逆風の強さからなかなか進まないリブラにしびれを切らしたともいえるでしょう。
ボーダフォンの脱退に対してリブラ協会側は、参加企業は時間の経過とともに変わっていくが、リブラの開発はこれまでと変わりなく続けると説明しています。
フェイスブックの過去の問題が痛手に
2020年に入ってから、フェイスブックの過去に起こした問題が、今になって大きな痛手となっていることが判明しています。
決算は最高益でも株価は大きく下落
フェイスブックは2019年10月から12月までの第4四半期の決算を2020年1月29日に終えましたが、金額ベースでは売上高や純利益は過去最高を記録しています。
本来であればその好調さを受けて株価は大きく上昇するはずですが、29日の米株式市場の時間外取引において株価は大きく下落しています。
株価下落の要因として挙げられているのが、売上高増加率です。
今回の決算における売上高増加率は、2012年にNASDAQで新規株式公開されて以降最低の数字になっています。
しかも2020年1月から3月の第1四半期も増加率は鈍化することが予想されています。
どうして売上高増加率が鈍化したのでしょうか。
それは近年、世界的に個人のプライバシーに対する規制が厳しくなってきたこと、そしてターゲット広告に対して批判的な声があることです。
そもそも、そのきっかけを作った原因はフェイスブックにあります。
2016年に米大統領選でトランプ氏が勝利した際、フェイスブックに登録された個人情報が不適切利用されていたと問題になりましたが、フェイスブックはこのことをさほど重要視しておらず、そのためにプライバシーに対する規制が強化されたという経緯があります。
そして2020年は米国の選挙イヤーにあたります。
フェイスブックに対する風当たりは、否が応でも強くなることが予想されます。
生体認証訴訟が600億円で和解合意
フェイスブックの過去のプライバシー問題が大きな痛手になっているのは、上記の問題だけではありません。
フェイスブックは利用者の同意なしに生体認証データを収集して保存しており、このことは米イリノイ州の関連法に違反しているとして、2015年に同州の利用者によって集団訴訟を起こされていました。
これは過去にFacebookにアップロードされている画像に対し、利用者が友達であることを認識できるようタグ付けする機能から、フェイスブックがデータを収集していると問題にされていました。
画像引用:bloomberglaw
この集団訴訟についてフェイスブックが5億5,000万ドル、日本円にしておよそ600億円を支払うことで和解に達したと報じられています。
このこともフェイスブックの個人情報に対する認識の甘さから起こった問題であり、仮想通貨リブラに逆風が吹くのと同じ原因がここでも顕在化したといえるでしょう。
まとめ
フェイスブックがリブラには引き続き取り組むとしたものの、リブラに対してだけでなく、フェイスブックにも色々な問題が起きていることについてご説明しました。
リブラが逆風にさらされるのは、フェイスブックの個人情報に対する認識の甘さに原因があり、それを改善させると同時に、改善したことを世の中に知ってもらわなければリブラを取り囲む環境は変わることがないはずです。
しかし仮想通貨リブラのプロジェクトは、世界中にデジタル通貨の必要性を感じさせ、その動きを加速させる契機にもなりました。
このことは十分評価に値するはずです。
今後リブラがどうなっていくか今は全く予想できませんが、全ての人が安心して活用でき、便利だと思えるものとして登場してもらいたいものです。