急速に加速するCBDCに対する世界的な動き
- 仮想通貨関連
- 2020.01.24.
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- 急速に加速するCBDCに対する世界的な動き
2020年1月23日のニュース記事「日銀が他国中銀や国際決済銀行とCBDCを共同研究」でもご紹介しましたが、2020年に入ってから世界中で中央銀行発行のデジタル通貨CBDCに対する動きが加速しています。
しかもこの動きは、ひとつの国だけが動いているということではなく、いくつかの国が複合的・連鎖的に動いていることが特徴です。
1月23日の日銀のニュース内容以外に、どのような動きがあるのかをご紹介しましょう。
世界経済フォーラムがCBDCの枠組みを発表
2020年1月21日から24日の日程で、スイスにおいて世界経済フォーラム(通称ダボス会議)の年次総会が開催され、その中で各国の中央銀行がCBDC発行の是非を評価したり、設計・発行する際にも手助けとなるフレームワークが発表されました。
このフレームワークレポートは28ページにもわたっており、作成にあたっては40以上の中央銀行や国際機関、金融機関、研究者などが協力しています。
画像引用:WEF CBDC Policy-Marker Toolkit
フレームワーク作成の背景と狙い
世界経済フォーラム(WEF)はこのフレームワークをどのような目的で作成したのか、WEFのwebsite内では、以下のように説明されています。
分散型台帳技術(DLT)には、金融システムの効率性、金融包摂、回復力、およびセキュリティを強化する可能性があります。
同時に、不注意なDLTまたはデジタル通貨の実装は、国内または国際規模での財務の安定性に重大なリスクをもたらします。
世界中の中央銀行がDLTを公式または非公式に実験しています。 しかし、彼らは多くの場合、洞察を共有したり、作業を調整したり、スケールしたりする効率的な方法なしに、この研究を独立して実施しています。
引用:WEF Google翻訳
多くのグローバル中央銀行は、金融システム内で使用する分散型台帳技術を独自に調査しています。
フォーラムの共有プラットフォームは、中央銀行間の研究共有とコラボレーションを調整することにより、これらの取り組みを合理化および強化し、ポリシーと展開に役立つ重要な洞察の知識ベースを開発します。
引用:WEF Google翻訳
すなわち、現在は各国独自でCBDCについて調査研究がなされているものの、経済や金融への影響力の大きさからオープンに検証することができない。
そこで中央銀行同士でこれらの研究を共有することができれば、より合理的に進められるだけでなく、CBDCを展開させようとした際にも役に立つはずですと述べているのです。
フレームワークツールキットの適用について
WEFによって作成されたフレームワークのツールキットは、国の規模や先進国かどうかなどを問わず適用できるものになっているとのことです。
そのため大きな国でも小規模な国でも関係なく適用できるだけでなく、先進国家であろうが新興国であろうが問題なく適用できるものになっているようです。
さらに、適用する際のワークシートと情報の参照元などが添付されており、使いやすさまで考慮されています。
フレームワークの位置付け
なおこのフレームワークを活用するにあたっては、CBDC発行を前提としていない旨が書き加えられています。
これはつまり、CBDCに関して調査研究するための環境をWEFは整えるものの、実際に発行するかどうかは各国および各中央銀行の判断に委ね、発行の強制はしないという意味になります。
香港とタイが共同でCBDC決済検証
WEFによってCBDCのフレームワークが発表された同日、香港の中央銀行である香港金融管理局とタイの中央銀行であるタイ銀行が、両組織間で実施していたCBDCの決済検証結果を発表しました。
画像引用:Project Inthanon-LionRock
この実験は2019年5月から実施されており、CBDCによる越境決済を研究するため、タイの通貨であるバーツと、香港の通貨である香港ドルをリアルタイムで交換や送金する検証でした。
なおこの実験には、タイからはバンコク銀行やサイアム商業銀行など8つの銀行が参加し、香港からはHSBC銀行とZA銀行の2つの銀行が参加しており、さらに米のブロックチェーン技術企業であるR3社が加わっていました。
具体的検証方法
具体的な検証方法としては、上記の検証参加銀行同士がP2Pで直接資金を送信して、外国為替取引することを目標として、国を超えた送金経路を構築してスマートコントラクトを実装しました。
そのうえでこのために開発した分散型台帳技術を用い、デジタル通貨の両替やリアルタイムな資金の移動、為替取引、法律的な観点から望ましい対応についてまでを検証しています。
検証結果について
発表されたレポートには、リアルタイム送金や流動性、遵守すべき法律について以外にも、CBDCが持っているメリットやデメリットについても記述されています。
そして検証の結論として、支払い側は従来のように複数の業者や銀行などを経由しないため、支払先に直接送金でき、決済もすぐにできることを確認しています。
また、二重送金などのリスクも防止できることも特徴として挙げています。
両中央銀行の検証に対するコメント
香港金融管理局総裁補佐である劉応彬氏は今回の検証について、従来のクロスボーダー取引の決済効率の悪さや費用効率の悪さを解決するため重要なステップであったと述べています。
また今後CBDCを検討していくうえで、知見を得られたとも説明しています。
一方、タイ銀行副総裁であるMathee Supapongse氏の説明によると、クロスボーダー決済の際の課題解決につながるだけでなく、実現性についても検証できたと述べ、今回の検証が今後の新しい方向性を示してくれるだろうと説明しました。
検証の継続
上記の検証結果についての説明や両中央銀行のコメントなどを見ると、ネガティブな結果は出ていないようです。
CBDCの利点である直接送金や短時間での決済、二重送金の防止など、メリットを感じられる結果は出ているものの、これらはおそらく事前に予測できたことなのでしょう。
今後は、今回検証した以外の応用的ケースでの検証だけでなく、異なるプラットフォームとの接続など、より現実的で広がりのある設定を想定しながら、引き続き検証していくとのことです。
つまり、今回の検証だけで終わるのではなく、今後も両組織間で検証を続けていくということです。
まとめ
日銀が他国の中央銀行などと連携してCBDCを共同研究していくという2020年1月23日のニュースに続き、WEFのCBDCに関するフレームワーク発表、そしてタイと香港の中央銀行が共同でCBDCを検証していくニュースの詳細をご説明しました。
今年に入ってからCBDCに対する世界の動きは一気に加速しています。
この動きに火をつけたのは、おそらく中国やフェイスブックでしょう。
中国のCBDC運用開始は秒読み段階に入っているようですが、遅ればせながら世界中が動き出したということになります。
CBDC発行は革新的な出来事ではありますが、実際に運用を開始すると想定しなかった問題が次々と出てくるに違いありません。
それらをクリアしてこそ、私たちが日常生活で当たり前のように使えるようになるのでしょう。
そしていつか、昔は現金を持ち歩いていたと懐かしむ時が訪れるのかもしれません。