日本の仮想通貨FXはレバレッジ2倍になるのか
- 規制
- 2019.12.14.
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- 日本の仮想通貨FXはレバレッジ2倍になるのか
日本国内の仮想通貨FX業者のレバレッジは、ほぼ全ての業者がJVCEA(一般社団法人 日本仮想通貨交換業協会)に加盟していることから、JVCEAが自主規制として設けたレバレッジ4倍の横並びになっています。
しかし金融庁内部では、仮想通貨FXのレバレッジをさらに引き下げ、2倍にする必要があるのではないかという意見も出てきているようです。
仮想通貨FX取引のレバレッジ上限が2倍になると、ますます日本国内の仮想通貨FX取引に魅力がなくなってしまうことは否めません。
このニュースについて詳しくご説明しましょう。
金融庁審議会でレバレッジ2倍の議論
金融庁の審議会において、金融学者である中島真志氏が国内のレバレッジ取引倍率は2倍に規制するべきと発言しました。
この発言が出た金融庁審議会は、あくまでも有識者などだけを集めたクローズの会議であり、多くの人々の意見が反映されたものではないものの、今後の議論になっていく可能性は高いとみられています。
中島真志氏プロフィール
中島真志氏は日本の金融学者であり、経済学博士です。
現在は麗澤大学経済学部の教授職を務めています。
著書には「アフター・ビットコイン: 仮想通貨とブロックチェーンの次なる覇者」や「外為決済とCLS銀行」などがあります。
また金融庁や経済産業省、東京金融取引所などの委員会メンバーでもあります。
画像引用:nakajipark Twitter
中島真志氏の主張
金融庁の審議会で中島氏がレバレッジ2倍の発言をした根拠については、自身がTwitterに書き込んでいます。
画像引用:nakajipark Twitter
この書き込みにあるように、米のシカゴにある世界最大の先物取引所であるCME(Chicago Mercantile Exchange)やEUの仮想通貨デリバディブ取引もレバレッジは現在2倍となっています。
そして中島氏の主張では、米やEUがこのような状況にあるにもかかわらず、日本だけがレバレッジを4倍にしておく理由は見当たらないというものでした。
金融庁審議会後の会議での発言
中島氏は金融庁の審議会で上記のような発言をしていましたが、その後別の会議の席上で、改めてこの話題について質問を受けています。
それに対して中島氏は、日本の仮想通貨市場を潰すための発言ではないことを説明しています。
また発言の背景には、中島氏の独自調査があることも述べています。
その調査によってCMEやEUのレバレッジが2倍であることから、仮想通貨市場は世界的な取引が可能なことを考慮すると、日本のレバレッジ4倍規制の妥当性に疑問を呈したものの、金融庁の研究会に参加している他の人々から反論がなかったとしています。
中島氏の発言に対するJVCEA会長の発言
金融庁の審議会における中島氏の発言に対し、JVCEAの会長である奥山泰全氏(マネーパートナーズグループ代表取締役)は、現在のJVCEAの自主規制である4倍が適切だとは考えていないと説明しています。
また、4倍の設定はあくまでも基本であり、ボラティリティや変動要件などを見ながらこれまでの25倍という設定を是正するためのものであること。
加えて、欧州連合における金融規制機関であるESMAなどが規制している2倍というのも、日本と同様にボラティリティなどによって変動させるルールになっていることを述べています。
レバレッジが規制される原因とは
そもそも日本の仮想通貨デリバディブ取引において、レバレッジが規制される意味とはどのようなものなのでしょうか。
レバレッジ取引は少ない元手で大きな取引ができるメリットがありますが、一方で損失が出た時には損失額が大きく膨らんでしまい、元手を全て失うだけでなく、追証を抱えてしまうケースもあります。
そこで金融庁は、このような状態から利用者を保護する目的でレバレッジを制限する方向に動いてきているわけです。
レバレッジが下がった場合の影響
では金融庁が考えているようにレバレッジを下げた場合、どのような影響が出ると考えられるのでしょうか。
日本の仮想通貨市場の流動性悪化
影響のひとつとして考えられるのが、日本の仮想通貨市場における流動性の低下です。
つまりレバレッジを下げれば証拠金で取引できる仮想通貨のコイン数は減ることになり、それが日本の仮想通貨市場における流動性を下げてしまうことにつながってしまいます。
こうなると大口取引をしただけで価格変動が大きくなり、価格操作がしやすくなるともいえます。
また国が仮想通貨市場を軽視していると判断される可能性もあり、仮想通貨やブロックチェーン関連事業者が海外流出してしまう危険性も考えられます。
利用者保護にならない可能性大
もうひとつ、影響が出るのではないかと多くの人が主張しているのが、レバレッジを下げることが利用者保護にならないという点です。
現在の日本国内における仮想通貨FXのレバレッジは4倍が基準ですが、利用者は値動きによっては高額な追証を抱える危険性を十分認識しているはずです。
そのため、安易な取引をしないことが考えられます。
しかしレバレッジが2倍になれば、これまでなら取引を躊躇するような場面でも安易に取引してしまい、その結果追証を抱え込んでしまうケースが増えると予想されます。
個人投資家らからの反対意見
金融庁の審議会において、レバレッジを2倍に引き下げる発言が出ていることに対し、個人投資家らから反対の意見がTwitterなどで多く書き込まれています。
その内のいくつかをご紹介しましょう。
画像引用:仮想NISHI Twitter
ご紹介したTwitterは一部ですが、他にも多くの人がTwitterで同様の意見を書き込んでいます。
これらの意見で最も多かったものをまとめると、以下のようになります。
レバレッジを2倍に引き下げることで、危険性が低くなったと理解した人たちが安易に仮想通貨FXに取り組んでしまい、かえって損失を出して追証を抱え込んでしまう。
利用者保護の観点で規制を設けるならば、レバレッジを下げるよりもハイレバレッジにして、なおかつゼロカットを導入すべきである。
ゼロカットシステムの重要性
ゼロカットシステムとは、取引に際して自己資金以上に損失が出ないようにする仕組みのことです。
例えば自己資金が10万円だとして、仮想通貨FXでロングポジションを持っていた場合、価格が思惑に反して大幅に下がったとしても、自動的にロスカットが入るとともにマイナス分は仮想通貨FX業者の保証システムがカバーしてくれるというものです。
もちろん自己資金は全て失ってしまいますが、損失分を追証によって補てんする必要はありません。
なお仮想通貨FX業者の保証システムの原資は証拠金取引手数料などで、このシステム用にプールされているものです。
このゼロカットシステムは、海外の仮想通貨FX業者はほとんどが似たような機能を採用していますが、日本国内の仮想通貨FX業者で採用しているところはありません。
まとめ
金融庁の審議会で仮想通貨FXのレバレッジをさらに引き下げ、2倍にするという話題が出てきているということの詳細をご説明しました。
レバレッジが今後どうなっていくのかは、推移を見極めないと分かりませんが、今のままゼロカットシステムも設置されずにレバレッジだけが引き下げられれば、国内の仮想通貨市場が冷え込むだけでなく、国内仮想通貨FX業者を使うメリットはほぼなくなるでしょう。
金融庁は、もっと広い範囲の人々から規制に関する意見を取り込んでいく必要があるのではないでしょうか。
Bybitなどの海外の仮想通貨FX業者は追証を求められることがなく、安心して取引に集中することができます。
金融庁が仮想通貨FXなどに理解を示さず、レバレッジを引き下げれば安心だと考えているようなら、日本の仮想通貨市場は衰退していくかもしれません。
今後の推移に注目しておきましょう。