市場関係者への調査でリブラを肯定する傾向
- 仮想通貨関連
- 2019.07.24.
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画像引用:Libra
2020年前半のサービス開始を目標としているフェイスブックの仮想通貨リブラに対して、米国の上下院公聴会で批判的な意見が出ただけでなく、G7などでも否定的な意見が圧倒的でした。
そんな中、日本の金融・経済情報会社が自社の端末ユーザーを対象にして仮想通貨リブラについてのアンケートを実施しました。
それによると、対象者の6割を超える人がリブラを肯定的に見ていることが分かりました。
このニュースについて詳しくご説明しましょう。
金融・経済情報会社によるアンケート実施
2019年7月22日から23日、金融・経済情報会社である株式会社QUICKが自社の端末ユーザーに対して、フェイスブックの仮想通貨リブラに対するアンケートを実施しました。
回答者は全て株式会社QUICKの顧客であり、金融市場関係者です。
またアンケートに対する回答者数は343人となっています。
具体的な質問内容などの詳細は分かりませんが、アンケート結果は1から5までが公表されています。
それぞれについて細かく見ていきましょう。
アンケート①
画像引用:QUICK Money World
仮想通貨リブラに対してどう思うかという質問内容です。
賛成が32.9%、条件付きで賛成が33.5%、慎重であるべきが29.4%、反対が4.1%となっています。
これを見ると、66.4%の人が肯定的に考えていることが分かります。
アンケート②
画像引用:QUICK Money World
リブラのサービスが実施されるまでに議論すべきことについての質問です。
この質問には二つまで選択できるようになっていたようです。
最も多かったのが不正アクセス対策です。
発行されると爆発的に使用者が増える可能性があり、不正アクセスも集中することが予想されるため、このことに関して議論すべきと考える人が多くなっているのでしょう。
二番目に多かったのがマネーロンダリング対策です。
仮想通貨のマネーロンダリングについては規制当局からも指摘されており、金融市場関係者も同じ問題意識を持っているといえる結果になっています。
アンケート③
画像引用:QUICK Money World
仮想通貨リブラのサービスが開始されたら使ってみたいかどうかという質問です。
率先して使うと答えた人は30%、周囲の人が使うことが多くなってきたら使うというのが49%、使わないというのが21%という結果になっています。
つまり、79%の人が使うと答えていることになりますが、最も多かった意見は周囲の人が使うようになると使うという回答です。
これは、仮想通貨リブラを世の中が認めれば使おうと思っているとも読み取れます。
すなわち、リブラを使える環境が整ってくれば使うという考えであるともいえるわけです。
アンケート④
画像引用:QUICK Money World
会社で仮想通貨リブラを導入するかどうかという質問に対しては、23%が導入すべきと答え、顧客・取引先が使うのなら導入するという回答が43.4%、必要ないと答えたのが33.5%になりました。
アンケート③と同様、導入すると答えている人は66.4%にも上りますが、この質問に対しても顧客や取引先が使うなら…という、積極的ではない意見が多数を占めています。
アンケート⑤
画像引用:QUICK Money World
仮想通貨リブラが法定通貨に取って代わる存在になると思うかという質問です。
この質問に対して、なると思うが47.8%、ならないと思うのが52.2%となっています。
非常に僅差ではありますが、ならないと考えている人の方が若干多い結果になっています。
アンケートから読み取れる傾向
これらのアンケート結果から読み取れることは、半数以上の人が仮想通貨リブラを肯定的に見ているということです。
しかし革新的なリブラがサービスを開始するにあたっては、問題が山積みであることも理解しているため、それらについては解決策を見いださねばならないということなのでしょう。
またアンケート④で顧客や取引先が使うなら導入すると答える人が最も多いのは、仕事のために導入せざるを得ないという、やや受け身の姿勢の人が多いともいえます。
つまり仮想通貨リブラはまだまだ全体像が見えず、メリットやデメリット、注意すべき点などもはっきり見えていないために正確な判断はできないものの、比較的好意的に受け止めている感があります。
欧米で批判されているリブラ
日本でのアンケート結果とは異なり、欧米での仮想通貨リブラに対する風当たりは強く、批判にさらされているのが現状です。
どのような批判の声が出ているのか、全ては紹介しきれませんが、幾つかを抜粋してご紹介しましょう。
米金融サービス委員会理事による開発中止要求
2019年6月19日、米下院金融サービス委員会のMaxine Waters理事長が、リブラには国や国民に対するリスクがあるため、国や当局による調査が済むまでは開発を中止すべきであると声明文を発表しました。
声明文には法的効力はないものの、米下院金融サービス委員会のリブラに対する受け止め方が表れています。
フランス財務省が安全性の保証要請を検討
フランス財務省が、リブラはテロへの資金調達や不正利用に使われる可能性が高く、安全性を保証すべきと要請するかどうかを検討していると伝えられました。
大韓民国金融委員会が懸念をまとめた文書を公開
韓国の大韓民国金融委員会が、リブラのサービスが実施された際に起こりうる危惧をまとめた文書を発表しました。
そこには銀行の財政健全性が保てなくなること、そして中央銀行の経済政策の影響力低下によって混乱が起こる可能性なども言及されています。
トランプ大統領がTwitterで批判
2019年7月11日、トランプ大統領がTwitterでビットコインとリブラに対して規制的な問題点や違法な行為を助長する可能性に言及し、懸念を表明するとともに、米ドルだけが本物の通貨と書き込みました。
米上院公聴会でプライバシー保護に対する批判
2019年7月17日、米上院でリブラに対する公聴会が実施されました。
公聴会では、リブラにはフェイスブックの個人情報の扱いに対する問題点と同様の問題があると批判されました。
米下院公聴会で中央集権と市場支配への懸念
リブラを運営するリブラ協会が大企業によって占められ、コントロールも可能なことから、リブラの中央集権制だけでなく、巨大企業が独占することにつながるのではないかとの懸念に関する質問がありました。
G7においてリブラに対する規制を早く対応すべきとの見解
フランスで開催されたG7財務相・中央銀行総裁会議において、リブラの普及は法定通貨や金融機関に取って代わる危険性があり、国の根幹を成す通貨発行においても脅かす危険性があるとし、参加各国が警戒感を持っていることが分かりました。
今後、リブラの規制について議論をすすめるとともに、早急な対応が必要であるとの見解を発表しました。
欧米と日本とでは受け止め方に微妙なズレ
仮想通貨リブラに対する日本の金融市場関係者に対するアンケート調査と、欧米での反応をそれぞれ紹介しました。
日本の金融市場関係者に対するアンケート結果が、国の経済をつかさどる組織や関係者と似たような結果になるとは言い切れないものの、受け止め方に微妙な違いがあることはお分かりいただけたでしょう。
ただ、リブラの恩恵を受けることができるかどうかによって意見は変わってくるでしょうし、国や経済を支える立場の人間かどうかでも意見は変わってくるはずです。
また仮想通貨を身近なものとしてとらえている人が多いかどうかにも左右されるはずです。
欧米の金融市場関係者に対して同様のアンケートを実施するとどのような結果になるのかは分かりませんが、日本は短期的にでも仮想通貨の取引量が世界一になった時期もあることから、仮想通貨に対して比較的寛容な国といえるのかもしれません。