国が独自発行を検討している世界各国の仮想通貨
- 考察
- 2019.09.13.
- 仮想通貨FXブログ
- 国が独自発行を検討している世界各国の仮想通貨
2019年9月10日のニュース記事で「東京都がデジタル通貨発行に向けて動き出す?」を掲載いたしました。
世界に目を向けてみると独自の仮想通貨を発行しようとしている国は非常に多く、しかもそれらは何のために発行しようとされているのか、どのような使われた方をするのかはあまり知られていません。
世界中で検討されている国独自の仮想通貨を全て掲載することはできませんが、話題になっている主要なものをご紹介しましょう。
仮想通貨取引所が多いマーシャル諸島の仮想通貨
仮想通貨取引所が多く拠点を置いていることで知られるマーシャル諸島共和国では、仮想通貨マーシャルソブリン(SOV)の発行を検討しています。
マーシャルソブリンは、2019年9月11日にシンガポールで開催された仮想通貨カンファレンス「Invest:Asia」の会場で発行と販売方法について発表されました。
マーシャルソブリンはSOV財団(SOV Development Foundation)が立ち上げたwebsiteで実施されるプレセールに登録できるようになっているとのことです。
画像引用:SOV Development Foundation
実際にはまだプレセール段階であるため、登録した人は後に購入する形になるものの、ローンチされればSOVを利用できるようになるまでに最大でも24カ月か、もしくはもっと短い期間で利用可能になるはずと説明されています。
マーシャル諸島共和国の狙い
マーシャル諸島共和国は米ドルを法定通貨としていますが、昨年2月には法定通貨として米ドルとともにデジタル通貨、すなわちマーシャルソブリンを法定通貨とする法律を定めました。
つまり米ドルとマーシャルソブリンの二つが法定通貨となるわけです。
ではどうしてマーシャルソブリンを発行しなければならないのでしょう。
そこにはマーシャル諸島共和国独特の課題が大きくかかわっています。
その課題とは、海外との取引時に毎回発生する送金手数料、そして小さな島々から形成されている国ゆえの物流コスト、関係国として最も重要な国であるアメリカとの金融オプションの欠如などです。
これらに加えて、激しく変動する気候やビキニ環礁における核実験による健康危機など、地理的な面での課題もあります。
マーシャルソブリンが利用されることで上がる収益は、これらの課題に対する信託資金にされるようです。
既に利用されているベネズエラの仮想通貨
南米のベネズエラで既に発行・利用されている仮想通貨がPetro(ペトロ)です。
ペトロは現大統領であるニコラス・マドゥロ大統領の指示によって開発され、なおかつその大統領自らが積極的に利用を促進するよう動いています。
なおペトロはベネズエラで算出する原油の価格に連動した仮想通貨で、1ペトロが原油1バレルとされています。
大統領自らが利用を促進
2019年7月には大統領がベネズエラの大手銀行の全支店にペトロ専用窓口を設けるよう直接命令を下しており、他にも利用者同士で取引ができ、ベネズエラ国内だけでなく、海外からも取引できるペトロ専用のプラットフォームである「Patria Ramesas」も政府によってローンチされています。
画像引用:Patria Ramesas
ベネズエラの狙い
ではどうしてベネズエラでは大統領までが仮想通貨ペトロを発行させ、利用を促す行動をとっているのでしょうか。
そこにはベネズエラの経済的事情が大きくかかわってきます。
ベネズエラはハイパーインフレに悩まされており、インフレ率が260,000%という途方もない数字も出ています。
これによってベネズエラの法定通貨であるボリバルは国内だけでなく、対外的にも信用されない存在になっています。
そこで新しい通貨、すなわちペトロを発行して自国内に流通させることでベネズエラ経済への信頼を回復させようと躍起になっているわけです。
そのため大統領自らがペトロの普及に尽力しているのです。
リブラより早い運用を目指す中国の仮想通貨
実質的に仮想通貨取引が禁止されている中国でも、独自の仮想通貨を発行する動きがあります。
開発には5年かけており、現時点では既に発行の準備段階にあるとされています。
中国が発行を予定している仮想通貨の大きな特徴は、構造が一般的な仮想通貨とは異なり、2層構造になっている点が挙げられます。
上層は中央銀行にあたる中国人民銀行が統率して、市中の商業銀行との取引に使われるようです。
そして下層は市中の商業銀行が統率し、一般消費者との取引に使うとのことです。
リブラより早くリリースされる?
中国はこの仮想通貨リリースに対して正式な発表はしていませんが、リークされた情報によると、Facebookの仮想通貨リブラよりも早いリリースを目指しているとのことです。
早ければ2019年11月にはリリースされるのではとの情報もあり、大きな注目を集めています。
中国の狙い
中国においては自国民を管理することが政策上非常に重要な課題ですが、現在は犯罪や地下経済など、経済面での問題を抱えています。
仮想通貨を発行し、経済取引が追跡できるようになれば、これらの問題を解消することにつながっていきます。
しかし表向きの理由としては、仮想通貨の利点を生かしながら課題であった価格変動の大きさや不安定さを解消することで、現代に即した取引を確立することができるとしています。
つまり中国が仮想通貨を発行する理由には表裏があるということです。
キャッシュレス化を加速させるスウェーデンの仮想通貨
スウェーデンでは2017年から仮想通貨を発行させるための開発が始められました。
e-Krona(e-クローナ)と名付けられた仮想通貨の開発は中央銀行であるRiksbankの主導で進められ、2019年中にはパイロットテストが実施されるはずです。
画像引用:Riksbank
予定では2021年の導入を目標にしており、ファーストステップとしてはキャッシュとの併用が予定されていますが、将来的には主要決済手段としての定着を考えているようです。
ただこの仮想通貨e-クローナの流通はスウェーデン国内のみが考えられているようで、スウェーデン以外では利用することはできないのが特徴です。
スウェーデンの狙い
スウェーデンの中央銀行であるRiksbankが主導で仮想通貨を発行する背景には、キャッシュレス化を促進する狙いがありました。
それゆえに流通もスウェーデン国内のみと限定されているわけです。
しかし現在では中央銀行の思惑以上にキャッシュレス化が進んでしまっており、モバイル決済やカード決済も一般的なものになっています。
それゆえにスウェーデン議会は、中央銀行の施策とは裏腹ともいえる大手銀行での現金取り扱いの義務化を考えているようで、e-クローナの将来の雲行きが怪しくなりつつあります。
その他の国における仮想通貨発行の動き
国独自の仮想通貨発行の動きは、上記だけではありません。
実際に発行まで行き着くかどうかは別にして、これまでに何らかの動きがあった国としては以下のものがあります。
- ロシアの仮想通貨CryptoRuble(クリプトルーブル)
- ドバイのステーブルコインであるemCash(エムキャッシュ)
- アラブ首長国連邦とサウジアラビアが共同で開発している仮想通貨Aber
- ウルグアイの仮想通貨e-Peso(e-ペソ)
- エストニアの仮想通貨estocoin(エストコイン)
- スイスの仮想通貨e-franc(e-フラン)
まとめ
現時点でも非常に多くの国が独自の仮想通貨を発行しようと検討を重ねていることがお分かりいただけたでしょう。
おそらくこの動きは今後も加速していくはずです。
ただし仮想通貨発行の狙いで記述したように、発行する理由は国によって様々です。
非常に切迫した経済的理由から発行を余儀なくされている国や、キャッシュレス化を目標にしているケースなど、何らかの問題を解決する手段として検討されています。
日本が今後独自の仮想通貨を発行するかどうかは不明ですが、もし発行することを考えるとすれば、スウェーデンのようにキャッシュレス化促進のためというのが大きな理由になるのかもしれません。
日本は他国に比べて現金への信頼度が高く、治安も良いため、現金決済の比率が非常に高い国です。
日本が今後、仮想通貨導入に踏み切るのかどうか、また発行するとすればいつ頃なのでしょうか。
その時に備えて、仮想通貨に対する知識を蓄えておきたいものです。