2つの仮想通貨関連協会が共同で税制改正要望書を提出
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- 2021.08.12.
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仮想通貨FXに取り組んでいる方の最大の課題は、利益が出た時の税金にあるでしょう。
日本の仮想通貨に対する税制は、従来からある株取引などの金融商品と比べ、非常に厳しいものになっています。
この厳しい税制が原因となり、確定申告をしなかったり、仮想通貨に対する投資額を抑えているなど、仮想通貨が拡大・定着していかない要素を作り出しています。
これら日本における仮想通貨の将来を危惧するJCBA(一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会)とJVCEA(一般社団法人日本暗号資産取引業協会)が、共同で仮想通貨に対する税制改正要望書を2021年7月30日に提出しました。
この要望書通りに日本の仮想通貨税制が改善されれば、仮想通貨FXに取り組みやすくなるだけでなく、仮想通貨が日本で今まで以上に定着していく可能性があります。
JCBAとJVCEAが提出した税制改正要望書の内容などについて、詳しくご説明しましょう。
JCBAとJVCEAが共同で税制改正要望書を提出
JCBA(一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会)の税制検討部会とJVCEA(一般社団法人日本暗号資産取引業協会)が、共同で2022年度の税制改正要望書内容をまとめたことを、2021年8月11日に発表しました。
なおこの要望書は、2021年7月30日に既に提出されているとのことです。
この要望書で特徴的なことは、単なる要望をまとめただけのものではないという点です。
仮に要望通りに税制が実施された場合、税収がどのように変化するかのシミュレーションを、実際にアンケート調査を実施した内容から考察しているものになっています。
つまり日本にとってこの要望を聞き入れることがプラスに働くことが理解しやすい、非常に説得力のある内容となっているわけです。
2022年度の税制改正に対する要望内容
JCBAとJVCEAが共同でまとめた2022年度税制改正要望書にある改正要望は以下のものです。
税制改正の要望ポイントは以下のものということになります。
- 仮想通貨取引に対する税を20%の分離課税にして欲しいこと
- 損失については3年間の繰り越し控除ができるようにして欲しいこと
- 仮想通貨デリバディブ取引についても同様の扱いにして欲しいこと
このような要望を挙げる理由として
「2022年度税制改正に関する要望書」内では、上記の要望を挙げている理由も説明されています。
まず現時点での法律では、仮想通貨取引における所得区分は雑所得で、課税区分は総合課税となっています。
総合課税ということは、他の所得との合計額に対して課税されるだけでなく、最大税率も55%にもなってしまうこと。
さらに仮想通貨取引で損失が出た場合でも、損益の繰り越しができません。
加えて、2020年に実施された金融商品取引法や資金決済法改正においては、仮想通貨を金融商品であると位置づけているにもかかわらず、株などの金融商品に対しては分離課税でありながら、仮想通貨は総合課税のまま変更されていないことも指摘しています。
また要望書内では、海外における仮想通貨税制との比較もおこなっています。
諸外国の多くは、仮想通貨税率を最大でも20%にとどめており、なおかつ分離課税方式にしているところがほとんどであり、税率が高くて総合課税になっている日本には競争力が乏しいことも指摘しています。
要望の背景にある投資家へのアンケート調査
今回公表された「2022年度税制改正に関する要望書」に大きな影響を与えているのが、JCBA税制検討部会が実施していたアンケート調査があります。
このアンケート調査は2021年6月7日から7月16日にかけ、仮想通貨取引をおこなっている人に向けて実施されました。
画像引用:JCBA news
このアンケートは匿名で回答できるものであり、仮想通貨取引に対する投資金額や利益額、さらには確定申告の有無や分離課税に関する質問などが設定されていました。
このアンケート結果を集計すると、2020年の確定申告の有無については84%の投資家が申告をしていないことが明らかになりました。
その理由は年間の利益額が20万円に達していないケースに加え、利益確定しないようにしているというのがほとんどでした。
また分離課税の導入に関しては、導入されれば確定申告をすると回答した投資家が90%にも達しており、導入されれば投資額を今よりも増やすと回答した投資家も63%いました。
これらの回答から、現在の仮想通貨税制が仮想通貨関連取引の妨げになっていることが明らかになったわけです。
アンケート結果から税収をシミュレーション
「2022年度税制改正に関する要望書」内では、JCBA税制検討部会が実施しアンケート結果に基づいて、要望書にある20%の分離課税を実施した際の税収の変化についてシミュレーションしています。
以下の画像の赤線部分がそのシミュレーション部分です。
上記画像の赤線部分をまとめると以下のようになります。
- 分離課税で税率を20%にすると税収は約58%の減収
- 分離課税導入で確定申告する人が増えた場合は約27%の減収
- 分離課税導入で仮想通貨への投資額が増えた場合は約16%の増収
- 分離課税導入で確定申告増と投資額増の場合は約18%の増収
- 分離課税となり含み益を利確した場合は約52%の増収
JCBAとJVCEAの要望通り分離課税を導入し、税率を20%に引き下げた場合、税収も少なくなってしまうと考えがちですが、実際にはその可能性は低いことをアンケート調査結果をエビデンスとして主張していることになります。
つまり確定申告者が増えると同時に投資額も増えるだけでなく、利益確定する投資家も増えるため、結果的に増収になるはずだと説明しているわけです。
要望書の根底にある主張
JCBAとJVCEAはこの要望書の中で税収増になることだけを主張し、だからこそ分離課税の導入と税率20%の実現を提案しているのではありません。
上でこれまで説明してきたことの背景にあるのは、あくまでも適正な税務申告につなぐためのものであるということです。
仮想通貨関連取引で利益が出ても申告しないケースや、今利益確定すると申告しなければならないので、わざと利益確定しないようにするケースなどがあり、これでは適正な税務申告とはいえません。
さらにはこの状態が続くと、日本での仮想通貨取引そのものがアンダーグラウンド的なものになってしまい、仮想通貨が定着・発展しなくなってしまうことをJCBAとJVCEAは危惧しており、そのために必要なのが適正な税務申告につなぐということです。
まとめ
JCBAとJVCEAが発表した、仮想通貨取引に対する税制改正の要望書の内容についてご説明しました。
政府がこの要望書の内容をどう判断するのかは不明ですが、仮想通貨は一部の人が取引する特殊な金融商品で、どちらかというとアンダーグラウンド的なものという、多くの人が抱きがちなイメージを払拭するには、国としての取り組みが不可欠でしょう。
政府が主張している投資家保護という考えがどこまで本音なのかは分からないものの、このままでは確実に世界から取り残されてしまいます。
そうならないためにも、分離課税の導入と税率20%への引き下げを是非とも実現させて欲しいものです。