テザーは全体の80%がクジラに占められている
- 仮想通貨関連
- 2019.08.09.
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- テザーは全体の80%がクジラに占められている
米ドルにペッグされたステーブルコインとして知られているテザーについて、全発行量の80%がわずか318口座によって占められていることが報道されました。
これだけの口座数で80%が占められているということは、テザーはクジラと呼ばれる存在によって、そのほとんどを占められているということになります。
このことについての詳細と、テザーのクジラの存在はどのような影響力を持つのか、またテザーと発行しているTether社についても詳しくご説明しましょう。
USDT全発行量の80%は318口座が保有
仮想通貨テザー(USDT)の全発行量の80%を、わずか318口座が保有されているとの報道がありました。
画像引用:Bloomberg
仮想通貨を大量に保有している存在をクジラと称しますが、ビットコインのクジラが所有しているのは、全発行量のおよそ20%ほどです。
口座数でテザーとビットコインを比較すると、テザーを100万ドル以上保有しているのはわずか318口座であり、ビットコインを100万ドル分以上保有しているのは2万口座以上になるとのことです。
いかにテザーが少ない口座数で、つまりクジラによって占められているかが分かるでしょう。
クジラとは何か
そもそもクジラとは何のことを指すのでしょうか。
クジラという言葉は仮想通貨の世界だけで使われているのではなく、株などの経済分野でも使われるスラングで、巨額資金を運用する投資家のことを指しています。
ウォーレン・バフェットのような投資家やロックフェラーのような財閥などがこれにあたりますが、巨額資金を運用することを広義でとらえれば日本の日銀や共済年金などもクジラといえます。
クジラの実例
ビットコインにおけるクジラの実例を紹介しましょう。
以下の画像はBitinfochartsにおけるビットコイン保有数ランキングです。
画像引用:Bitinfocharts Top 100 Richest Bitcoin Addresses
画像内にはビットコイン保有数1位から13位までが表記されています。
このうち赤枠のアドレス以外は全て仮想通貨取引所のコールドウォレットのアドレスで、上位13位以内にクジラのアドレスが6つ入っているということです。
仮想通貨取引所のコールドウォレットに混じっても、上位に入ってくるクジラがこれだけ存在しているということです。
クジラができることとは
ではクジラができることとはどんなことなのでしょうか。
クジラは資金力があり、しかも仮想通貨を大量に保有しているため、仮想通貨市場への影響力が大きいといわれています。
大量に仮想通貨を売り買いすることができるため、例えばクジラが保有している仮想通貨を大量に売れば市場価格は下がっていきます。
反対に大量に買えば市場価格は上がっていきます。
つまり、理論上では仮想通貨の価格操作が可能になってくるわけです。
影響力が大きいとしても、ビットコインのように全発行量の20%ほどしか保有されていない場合には、一人のクジラが単独で影響を及ぼすことは難しくなります。
そのため数人で組んで価格を操作しているのではないかともいわれています。
テザーのクジラが価格に及ぼす影響力
ビットコインのクジラが全発行量の20%程度を保有しているのに対し、今回の報道でテザーの80%が318口座のクジラによって保有されているということが分かりました。
どれほどクジラの影響力を非常に受けやすい通貨であるかが分かるのではないでしょうか。
ビットコインのように複数の人間が組んで価格操作をしなくても、一人のクジラが単独で価格操作できてしまう可能性も十分にあるわけです。
仮想通貨テザー(USDT)について
画像引用:tether
仮想通貨テザーが、クジラによって価格操作されやすい状態にあることはご理解いただけたでしょう。
ここで仮想通貨テザーについてご説明しましょう。
ステーブルコインであること
テザーがビットコインと大きく違うところは、ステーブルコインであるということです。
ステーブルコインとは裏付けとなる資産があるということで、テザーの場合は米ドルに裏付けされています。
裏付けとなる米ドルの価格が安定しているために価格変動が大きくなく、価値が安定していることからも、保管するのに適しているといわれています。
またステーブルコインはいつでも裏付け資産と交換できるのが特徴です。
つまりテザーも米ドルといつでも交換できるように考えられているわけです。
管理や発行が中央集権型の仮想通貨である
一般的な仮想通貨の場合、発行はマイニングによっておこなわれます。
また何らかの組織が一括して管理することもありません。
いわば分権型ともいえる通貨になります。
しかしテザーの場合はTether社によって発行され、管理もTether社がおこなっています。
つまり中央集権型の仮想通貨ということです。
仮想通貨取引所BitfinexとTether社の疑惑
画像引用:Bitfinex
仮想通貨テザーの特徴についてご説明しましたが、テザーは米ドルと1:1で裏付けられている仮想通貨です。
テザーを持っている人なら、誰でも米ドルに交換できるのが特徴です。
しかしこの前提を揺るがす事件が起きており、いまだ解決に至っていません。
Tether社は解決されないままの状態で、今もテザーを新規発行させています。
事前の全体像についてご説明しましょう。
テザーに対するそもそもの疑惑
上記のように仮想通貨テザーは米ドルと1:1で換金できるのが前提になっています。
しかし多くの人々から、流通しているテザーとテザーを運営しているTether社にあるはずの米ドルの総額は同じなのかという疑問が出てきました。
つまり世の中に出回っているテザーを保有している人が全員Tether社に換金を申し出れば、Tether社はそれに応じられるのかという疑問です。
監査法人との関係を解消
トレーダーたちが利用しているSNSや掲示板などでテザーの疑惑が持ちきりになっていましたが、本来であればこの疑惑を払拭するはずであった監査法人フリードマンLLPは、Tether社によって関係を解消されてしまいます。
何も問題がないのであれば、監査法人との関係を解消する必要はないにもかかわらず、突然解消されてしまいました。
Bitfinexと関連するもう一つの疑惑
もう一つの疑惑はTether社と親会社である仮想通貨取引所Bitfinexに絡んだものです。
ビットコインの価格が大きく下落した際、Tether社によって数億ドル分のテザーが新しく発行されましたが、そのほとんどがBitfinexに移動され、その後一時的にビットコイン価格が高騰しました。
つまり、Bitfinexがビットコインの価格高騰をねらい、テザーを使ってビットコインを大量に購入していたのではないかと考えられており、市場操作があったのではないかといわれているのです。
しかもTether社とBitfinexは経営陣が同じであることが、この説の信憑性を高めています。
NY州司法長官が訴追
2019年4月にNY州の司法長官がTether社とBitfinexに対して、資金不正使用の疑いで訴追しました。
訴追に至る根拠は2つあり、ひとつはBitfinexの提携先であるクリプトキャピタル社が出した損失の補てんに7億ドルものテザーを使ったこと。
そしてもうひとつは、Bitfinexで2018年に顧客の出金処理が遅れていたのは、クリプトキャピタル社の損失に関連していたからというのが理由でした。
コールドウォレットのETHが半分に
NY州の司法長官から訴追されニュースが報じられた頃から、Bitfinexのコールドウォレットに保管されていたETHが出金され始めました。
当初は214万ETH保管されていたにもかかわらず、およそ半分の110万ETHにまで減少しました。
また同時期に、巨額のビットコインも出金されています。
出金されたETHとビットコインの行き先は今も不明で、経営が苦しくなってきたBitfinexが、資産を別のウォレットに移動させている可能性も指摘されています。
Tether社が74%の裏付けしかないことを認める
2019年4月にTether社側が、テザーの裏付けである米ドルは74%しか保管していないことを認める発言をしました。
なおこの際の説明として、銀行でも預金を常に100%保管しているわけではないことを理由に正当性を主張しています。
規制当局の懸念
米の規制当局が最も懸念しているのは、Tether社が大量にテザーを発行して、受け取った米ドルを他の仮想通貨に投資しているのではないかということです。
もしそうであった場合、投資に失敗してしまえば、テザーを購入した人に対して米ドルを換金できなくなってしまいます。
米当局はその危険性を危惧しているようです。
まとめ
仮想通貨テザーの80%がクジラによって占められていること、そしてテザーと発行しているTether社や親会社のBitfinexについて、少し異様ともいえる現状をご説明しました。
これらを読まれた方がどうお感じになるかはそれぞれですが、少なくとも他の仮想通貨や仮想通貨取引所ではこのような問題は起きておりません。
もともと色々な疑惑を抱えていたテザーやTether社などが、今後どうなっていくのかは定かではありませんが、今回のクジラ問題は新たな火種になっていくのではないでしょうか。
テザーに関しては、今後報道を注意する必要がありそうです。