IMFがエルサルバドルのビットコインに改めて懸念を表明
- ビットコイン
- 2022.01.27.
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- IMFがエルサルバドルのビットコインに改めて懸念を表明
2021年9月7日、エルサルバドルにおいて世界で初めてビットコインを法定通貨とされたことは、仮想通貨FXに取り組む人であれば記憶に新しいでしょう。
このニュースに関連して、法定通貨化が施行されたその日にビットコイン価格が急落したことも、2021年9月9日のニュース記事「ビットコインがエルサルバドルで法定通貨化の日に下落」でご紹介しました。
この世界で初のビットコインの法定通貨化を実施したエルサルバドルに対して、IMFが懸念を表明するとともに、ビットコインを法定通貨から除外するよう要請していたことが報道だけでなく、IMFのニュースリリースによって明らかになりました。
ビットコインの法定通貨化に対しては、幾つかの国が関心を示しており、エルサルバドルに続く国が出てくるのではないかと考えられています。
IMFはどうしてビットコインの法定通貨化を懸念しているのでしょうか。
このニュースについて、詳しくご説明しましょう。
IMFが懸念をエルサルバドルに表明
IMF(国際通貨基金)は国際金融と為替相場の安定化を目標として設立された組織で、2018年時点での加盟国は189ヵ国にも上る国際的な専門機関です。
このIMFは個々の加盟国と年1回、第4条協議と呼ばれる経済政策に関する協議を実施しています。
この第4条協議とは加盟国の経済や金融面をIMFが把握するとともに、加盟国の経済政策を経済的に発展させること目標に、加盟国関係者と議論する場です。
2022年1月24日、IMFは2021年9月にビットコインを法定通貨化したエルサルバドルの関係者と第4条協議を実施しました。
その際、IMF側がエルサルバドルに対し、ビットコインの法定通貨からの除外を要請していたことが、IMFの協議報告書から判明しました。
またIMFはその要旨をプレスリリースとして2022年1月25日付けで公表しています。
画像引用:IMF PRESS RELEASE
プレスリリースには以下のような内容が記述されています。
2021年9月以来、政府は法定通貨としてビットコインを採用しています。
しかし、法定通貨としての暗号通貨の採用は、金融と市場の完全性、金融の安定性、および消費者保護に大きなリスクを伴います。
また、偶発債務を生み出す可能性もあります。
(中略)
ビットコインの使用に関連する大きなリスクがあることを強調しました。
彼らは当局に対し、ビットコインの法定通貨のステータスを削除することにより、ビットコイン法の範囲を狭めるよう要請しました。
一部の取締役は、ビットコインで裏付けされた債券の発行に関連するリスクについても懸念を表明しました。
引用:IMF PRESS RELEASE Google翻訳
つまりエルサルバドルが経済の縮小と公的債務の拡大の解決策として法定通貨に定めたビットコインは、国としての経済回復につながらず、むしろ妨げていると指摘しているわけです。
またIMFはエルサルバドルがビットコイン法定通貨化にあたって導入した独自ウォレット「Chivo(チボ)」について、金融包括の促進に重要な役割を担っていると理解を示したものの、決済システムについては規制と監督が最重要であるとの認識を示しています。
IMFが懸念を示したのは初めてではなかった
IMFがプレスリリースでエルサルバドルのビットコイン法定通貨化に懸念を示したのは初めてですが、実はこれまで何度もIMFはこのことに懸念を表明していました。
つまりIMFがエルサルバドルのビットコインに対して懸念を示したのは、今回が初めてではなく、分かっている限りでは3回目ということになります。
これまでにIMFが懸念を示したタイミングは以下のようなものとなります。
・2021年6月5日
エルサルバドルのNayib Bukele(ナジブ・ブケレ)大統領がマイアミで開催されたカンファレンス「ビットコイン2021」向けの動画メッセージ内で、ビットコインを法定通貨化する法案の提出を発表した際には、リスクがあることを懸念する旨を表明していました。
・2021年11月
エルサルバドルの議会でビットコイン法定通貨化に関する法案が採択され、既にビットコインが法定通貨として稼働していたが、IMFは改めてビットコインを法定通貨から除外するべきであると表明していました。
エルサルバドルのビットコインリスク
IMFが懸念しているエルサルバドルのビットコインリスクの一例として、ビットコイン価格の変動による含み損についてご紹介しましょう。
エルサルバドルはビットコインを法定通貨化して以降、何度かビットコインを購入しています。
2021年12月4日までで1,370BTCを購入していることが明らかになっています。
それ以降の購入履歴としては、2021年12月21日に「21世紀の21年目の21日を記念」するとして21BTCを購入しており、2022年1月22日には410BTCを購入しています。
これまでの購入合計としては、1,801BTCを購入していることになります。
この過去に購入したビットコインが価格の下落によって価値がどうなっているのか、仮想通貨トレーダーでエコノミストでもあるAlex Krüger(アレックス・クルーガー)氏が試算した表を2022年1月22日にツイートしています。
画像引用:Alex Krüger Twitter
この資産表は2022年1月22日のビットコイン価格を基に試算されていますが、これによるとエルサルバドルはビットコインを購入したことによっておよそ23億円の含み損を抱えていることになります。
もちろんビットコインを売却しなければ、現在は含み損であり、今後価格が上昇していけば含み益になるとも考えられますが、この含み損は非常に価格が不安定なビットコインを法定通貨にしたことによるデメリットのひとつといえます。
エルサルバドルは今後、10億ドルのビットコイン債を発行することで資金調達するだけでなく、追加でおよそ5億ドルのビットコインを購入することを考えています。
また税金が不要なビットコインシティを建設することも構想していることが発表されています。
IMFが懸念しているビットコイン価格の不安定さがこのような形で現れているということであり、今後の構想の成否も全てビットコイン価格次第ということでしょう。
まとめ
ビットコインを法定通貨化したエルサルバドルに対して懸念を表明し、法定通貨から除外することを要請したIMFについてと、エルサルバドルの実情についてご説明しました。
今後ビットコイン価格がどのように動いていくかは分かりませんが、エルサルバドルのビットコインに対する取り組みが上手くいくかどうかは、ビットコインの将来にも影響してくることは間違いないでしょう。
またエルサルバドルが成功を収めた際には、追随してビットコインを法定通貨にする国が出てくる可能性もあります。
今後の動きに注目しておく必要があるでしょう。