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米と欧州とのデジタル通貨に対する取り組み姿勢の落差

  • 仮想通貨関連
  • 2019.12.07.

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  • 米と欧州とのデジタル通貨に対する取り組み姿勢の落差

フェイスブックの仮想通貨リブラは世界中の金融機関から猛反発を受けていますが、世界の国々の各中央銀行によるデジタル通貨発行の必要性に気付かせてくれた側面もありました。

 

また時を同じくして、中国がデジタル人民元を発行するとの報道も流れており、中央銀行発行のデジタル通貨への流れは加速しているように見えます。

しかしその一方で、国や地域によってその取り組み姿勢は大きな差があるのも現実です。

特に欧州と米ではデジタル通貨に対する姿勢は全く異なります。

 

現在の欧州と米とのデジタル通貨に対する姿勢についてご紹介するとともに、日本の取り組み姿勢、そして中国のデジタル通貨発行の狙いについてもご説明しましょう。

 

仏中央銀行がデジタル通貨試験を来年実施

フランス中央銀行のビルロワ・ド・ガロー総裁が、2019年12月4日に開催されたACPR(フランス金融健全性規制監督・破綻処理機構)の会議の席上、2020年の第一四半期末までにデジタル通貨の試験をおこなうことを明らかにしたと、AFP通信が報じました。

 

さらに、フェイスブックなどによって計画された新しい通貨、すなわちリブラに対する懸念が政府の間で高まっていると述べたと報じています。

 

なお、ビルロワ・ド・ガロー中銀総裁はデジタル通貨の可能性については認めているものの、今回の実験に関しては「真剣に秩序立った方法」によって進めなければならないと考えているようです。

AFP news agency Twitter

画像引用:AFP news agency Twitter

 

ビルロワ・ド・ガロー中銀総裁の今回の発言より前、2019年11月21日に開催されたAFMEの年次キャピタルマーケット技術改革におけるカンファレンスの場で、フランス中央銀行のデニス・ボー第1副総裁は欧州全体に対して革新的な呼びかけをおこなっています。

 

その内容は、欧州全体が決済や支払いのシステムにおいて、DLT(分散型台帳技術)を採用することを進言するものでした。

そしてブロックチェーン技術を導入することは、欧州全体の金融業界に収益面や決済処理、異なる通貨との決済などにおいて多くのメリットがあり、組織としての対応力が高まると説明しています。

 

なおデニス・ボー第1副総裁は、これらには市場インフラに対するリスクはあるものの、欧州の金融システムを今まで以上のものにするためには、技術革新が必要であり、チャレンジしていかなければならないことも説いています。

AFMEキャピタルマーケット技術改革カンファレンス

画像引用:banque-france.fr

 

欧州中央銀行もユーロ圏デジタル決済に前向き

デジタル通貨に対して積極的な姿勢を見せているのはフランスだけではありません。

2019年11月26日、27日の日程で開催されたECB(欧州中央銀行)とベルギー国立銀行主催の会議において、ECBの執行役員であるベノワ・キューレ氏がデジタル通貨における技術などに対する監視は今後も継続していくが、民間のデジタルソリューションについて妨害するつもりはないと述べました。

 

加えて中央銀行が発行するデジタル通貨は、将来的に現金が不要な環境になったとしても顧客資金を保証できるとして、今後の広がりも視野に入れていることを説明しています。

 

この説明は、ECBがこれまでフェイスブックの仮想通貨リブラに対して非常に厳しい意見を述べていた姿勢から変わりつつあることを示しています。

ECBは過去にリブラが深刻なリスクをもたらすことを指摘しており、規制当局が承認するまでには高いハードルがあるとも述べていましたが、リブラに対して柔軟な姿勢を取りつつ、中央銀行発行のデジタル通貨に対しても前向きに考えるようになってきたといえます。

 

米はデジタル通貨発行を5年間必要なしと判断

米のムニューシン財務長官が、2019年12月5日に実施された米下院金融サービス委員会で、今後5年間はデジタル通貨を発行する必要がないと述べました。

 

これは中国政府が米ドルに対抗するためにデジタル人民元の発行を準備していることに対する質問に答えたものです。

 

さらにムニューシン財務長官は、この件についてFRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長と議論を交わしたうえでの結論であることを説明し、米には高度な決済システムがもう備わっていることを理由に挙げています。

 

今回の発言からはデジタル通貨を発行する必要がないとも受け取れますが、財務省やFRBはデジタル通貨発行に対し、いかに普及させるかよりも、どう規制を設けるのかが重要であるとしており、そのために安易な発言をせずに慎重な姿勢を見せているとも受け取れます。

 

ただ「どう規制を設けるのか」という点について、どのように、誰が検討しているのか、具体的なことは何も見えてきておらず、実際に検討が始まっているのか定かではありません。

 

日本のデジタル通貨は調査研究中

欧州ではデジタル通貨に前向きな姿勢がはっきりと出てきており、米では現在のドルの強さなどを背景にデジタル通貨に消極的であることが、ニュースから見て取れます。

では日本ではデジタル通貨についてどのように考えているのでしょうか。

 

2019年12月4日、日銀の黒田東彦総裁が東京都内でおこなわれた講演において、デジタル通貨の必要性が高まってきた時、すぐにでも対応できるよう技術面だけでなく、法律面での調査研究を既に進めていると説明しました。

 

この調査研究については、2019年12月3日のニュース記事「日銀が進めるデジタル通貨についての研究」で詳しくご説明させていただきましたが、デジタル通貨の法的問題を色々なケース別に抽出し、検討していることが分かる内容でした。

 

ただこの報告書を読む限りでは、法的な問題点は挙げられているものの、その問題点をどう解消していくのか、どう取り組んでいくのかが全く記述されていません。

 

つまり問題の抽出には役立つものの、デジタル通貨を発行するという具体的な目標が決まっていないために、いつまでに、誰が、何を、どうするのかという点が決まっていないわけです。

すなわち準備していますと宣言するための研究資料に過ぎないと感じざるを得ないものになっています。

 

中国のデジタル通貨の裏にある野望

これまで説明したように、デジタル通貨に欧州は前向きではあるものの、まだ準備は整っておらず、米もこの調子では今後5年間動くことはないでしょう。

日本もまだまだ先は長そうです

 

そんな中で、間もなくリリースを始めるとされているのが中国のデジタル通貨です。

中国はどうしてデジタル通貨に意欲的なのでしょうか。

考えられる狙いは幾つかあります。

 

その1つが、個人情報の直接的収集です。

中国は自国民の個人情報を徹底的に管理し、統率を図りたいわけですが、ブロックチェーン技術を応用したデジタル通貨を使えば、ほとんどの個人情報を入手することができます。

 

そしてもう1つが、中国にとって厄介な米の力、すなわち米ドルの力を弱めることです。

現在、世界における貿易では米ドルが基軸通貨になっています。

ほとんどの国の取引に米ドルが介在しているため、米は大きな影響力を発揮することができるわけですが、これを切り崩していくことも中国は狙っています。

例えば中国の「一帯一路」政策は、ユーラシア大陸からアフリカを視野に入れた対外的な経済政策ですが、このエリアにデジタル人民元を波及させていけば、少しづつ米ドルの影響力を切り崩していくことができます。

 

このような中国の狙いを欧州だけでなく米や日本は理解しているのでしょうか。

それとも理解したうえで、おそるるに足らずと考えているのでしょうか。

 

まとめ

欧州と米とのデジタル通貨に対する取り組み姿勢の違いだけでなく、日本の取り組み姿勢、そして最も現実的な中国のデジタル通貨の狙いについてもご説明しました。

 

中国がデジタル通貨の発行を急ぐ意味を、米だけでなく欧州の国々や日本は理解しているのか不思議に感じます。

デジタル通貨に対する動きとして報道されていることは、おそらく実際に起きていることの一部分でしかなく、実際には色々な駆け引きがおこなわれているのかもしれませんが、将来的にどうなっていくのか不安に感じてしまいます。

 

デジタル通貨はいずれ世界中で導入されることになるでしょう。

その時に国の力関係はどうなっているのでしょうか。

 

デジタル通貨に関する今後の報道には注目しておくべきでしょう。

 

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