米ウォルマートがリブラに似た仮想通貨を開発
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- 2019.08.03.
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Facebookの仮想通貨リブラについての賛否は続いており、世界中を巻き込んだ論争になっていることはご存知でしょう。
リブラが今後どうなっていくのかは誰にも予想できませんが、そんな中、リブラに似た要素を持った独自の仮想通貨に対する特許申請を、米国小売業の大手であるウォルマートが提出していたことが分かりました。
このニュースについての詳細に加え、米ウォルマートのブロックチェーンに対する取り組みについても詳しくご説明しましょう。
米ウォルマートがステーブルコインの特許を申請
米国小売店の大手であるウォルマートが、独自のステーブルコインについて特許を米国特許商標局に申請をしていたことが明らかになりました。
提出された書類では、このステーブルコインはFacebookの仮想通貨リブラと同じように米ドルや他の法定通貨を裏付け資産にする可能性についても言及されています。
またこの仮想通貨は、指定小売店やパートナーと呼ぶ人々に限定したものであることも触れられています。
リブラとの違いについて
ウォルマートの仮想通貨とリブラとの大きな違いは、あくまでもウォルマートに関した利用に限定されるという点です。
リブラが世界中の誰もが利用できることを目指しているのに対して、ウォルマートの仮想通貨は使える人達や使える場所が限定的で、何らかの形でウォルマートと関連のある企業や人達だけとなっています。
リブラとはその点が最も大きく異なります。
ウォルマート仮想通貨が目指す展開
ウォルマートの申請している仮想通貨について、全貌が明らかになっているわけではありませんが、目指している展開の一端を知ることはできます。
ウォルマートの特許申請内容を一部ご紹介しましょう。
画像引用:US Patent & Trademark Office
保管や換金について
一般的な仮想通貨の場合は、自分自身のウォレットに保管するか、仮想通貨取引所に保管するしか方法はありません。
一方ウォルマート仮想通貨は、ウォルマートの小売店で無料もしくは格安で保管することができ、必要な時にいつでも現金に換金することもできます。
また法定通貨を銀行に預金した時と同様、利子が発生するだけでなく、米ドルなどの法定通貨とペッグされているため、預ける金額を増やすことも簡単にできるようになっています。
低所得者層の財産管理
米国で銀行口座を開設するには学生口座を除けば、とほとんどの銀行で最低100ドルを入金しなければなりません。
また口座を維持するのに毎月費用が発生する銀行も多く、低所得者層の人々にとって銀行口座を持つことは大きな負担であり、口座を持っていない人がほとんどです。
ウォルマート仮想通貨は、日常的に必要な商品を取り扱っているウォルマートの小売店で保管できることから、日々の金銭と生活に必要な商品の全てをウォルマートで賄うことができるようになります。
クレジットカードなどが不要に
低所得者層の人々は銀行口座を持つことができないたないため、クレジットカードやデビットカードを所有することができず、商品を購入するには現金を使うしかありません。
特に米国では現金の取り扱いをせずに、クレジットカード払いしかできない店舗が多く、マイノリティや移民などの低所得者層に対する差別ではないかとの意見も出ています。
ウォルマート仮想通貨を利用すれば、クレジットカードやデビットカードなどを使わずに買い物できるため、これらのカードが不要になります。
無人店舗への展開
米国の小売店では人件費削減のために無人店舗が増えてきていますが、無人店舗で買い物をすると、支払いはクレジットカードやデビットカードなどに限定されてしまいます。
つまり銀行口座を持たない人たちにとって、無人店舗は使うことのできない店舗になってしまうわけです。
ウォルマート仮想通貨ならカードが不要になるため、例えば月初めに必要な金額さえ入金しておけば、例えウォルマートが無人店舗であっても問題なく使うことができます。
つまりウォルマートの小売店も無人化することが可能になるということです。
商品値上がりへの対応
一般的にモノの価格は値下がりすることはなく、値上がりしていきます。
特に低所得者層にとって値上がりは厳しいものになってしまいます。
ウォルマート仮想通貨は米ドルなどで自由に購入することができますが、購入した日から実際に使う日までの間に、モノの価格が値上がりしていた場合でも、仮想通貨を購入した日の価格でモノを買うことができます。
もちろんこれは一定期間の制限付きではあるものの、消費者がウォルマート仮想通貨を購入した時点での購買力を保証することになると同時に、ウォルマート小売店でも売り上げが予測できるようになります。
緊急デジタル融資
収入が少なく信用性が低い低所得者層などに対して、銀行は融資することはありません。
ウォルマート仮想通貨は、無利子もしくは低い金利で短期的な緊急デジタル融資をしていくことを視野に入れています。
もちろん融資するのはウォルマート仮想通貨であり、必要不可欠な食品などはウォルマート小売店で購入できるわけです。
ウォルマートが仮想通貨を発行できる可能性
ウォルマートが特許申請した仮想通貨について、その特徴的な内容を幾つかご説明しましたが、仮想通貨リブラとは明らかに違うものであることがご理解いただけたでしょう。
しかし果たしてこのような仮想通貨が本当に発行できるものなのでしょうか。
実はウォルマートは、これまでブロックチェーン技術を活用してきており、独自の仮想通貨発行の可能性は非常に高いと推測されます。
その実例をご紹介しましょう。
ウォルマート中国での活用例
ウォルマート中国ではブロックチェーン技術を活用して、消費者がQRコードを読み込むだけで商品の原産地や流通過程、検査レポートなどの情報を得られるプラットフォームを構築しました。
現時点では全ての商品をカバーしているわけではありませんが、2020年までに精肉の半分、野菜の40%、シーフードの12.5%をカバーできるよう現在取り組んでいます。
食の安全について疑問視されている中国での取り組みに注目が集まっています。
医薬品業界に向けた活用例
ウォルマートは、製薬会社や医薬品のサプライチェーンなどが参加しているブロックチェーン共同事業体であるメディレッジャーに参画しています。
この共同事業体では医薬品のサプライチェーン内でデータ共有することにより、在庫管理を容易にし、流通商品の健全性確保と契約の照合自動化などから、これらに掛かる費用を削減することにまでを目指しています。
食品衛生管理への活用例
ウォルマートに食品を納入しているサプライヤーに対して、ブロックチェーンを活用して食品衛生管理を徹底するよう働きかけています。
特に、特定の出荷元で何らかの衛生面の問題が出た際、納入された食品が問題ある出荷元のものでないかどうかを判断するのに役立てることができます。
まとめ
ウォルマートが特許を申請した独自の仮想通貨についてと、ウォルマートがこれまでブロックチェーン技術を積極的に活用してきたことについてご説明しました。
Facebookの仮想通貨リブラとは明らかに異なり、いかにも大手スーパーマーケットらしい仮想通貨であることがお分かりいただけたのではないでしょうか。
米国にはマイノリティや移民が多く、彼らは仕事が見つからないために低所得にならざるを得ない問題を抱えています。
ウォルマートの仮想通貨が実現すれば、彼らにとっては大きな助けになるはずです。
また現在米国で最大手のスーパーマーケットであるウォルマートにとっても、顧客の囲い込みが強化でき、さらなる売り上げにもつながっていくことは間違いありません。
多くの課題が指摘されているリブラよりも、ウォルマートの仮想通貨の方を先に実現させる方が米国にとってはより現実的で、重要なのではないでしょうか。