アステリアが議決権投票にブロックチェーン技術を投入
- 仮想通貨関連
- 2019.06.18.
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2019年6月6日、ソフトウェアの開発・販売を手がける東証1部上場企業、アステリア株式会社が、6月22日に開催する株主総会の議決権投票(本番環境)においてブロックチェーン技術を投入することを発表しました。
過去2回の株主総会では、既に実証実験としてブロックチェーンによる投票をおこなっており、6月22日に開催される株主総会では初めての「本番環境」への適用となります。
そもそも議決権の投票システムに、ブロックチェーン技術を投入する目的や意味は何なのでしょうか。
またソフトウェア開発販売会社であるアステリアが、議決権投票にブロックチェーン技術を導入する狙いは何なのでしょうか。
株主総会の議決権投票にブロックチェーン技術を導入することは、非常にユニークで革新的だからこそ、多くの疑問が湧いてきます。
アステリア株式会社がブロックチェーン技術を投入した背景、そして投票システムにブロックチェーン技術を活用するメリットなどについてご説明していきましょう。
アステリア、議決権投票にブロックチェーン技術を投入
画像引用:アステリア公式ツイッター
2019年6月6日、アステリア株式会社は、同月22日に行われる株主総会の議決権投票システムにブロックチェーン技術を投入することを発表しました。
まず、アステリア株式会社の会社概要からご説明します。
アステリア株式会社について
画像引用:アステリア
アステリア株式会社(旧:インフォテリア株式会社)は、1998年9月に設立されたソフトウェア開発・販売企業です。
同社が開発・販売しているデータ連携用のソフトウェア「ASTERIA Warp」は、国内の大企業から中小企業まで7,000社以上で採用実績があり、会社設立から9年後の2007年6月22日には東証マザーズ上場を果たしました。
その後、2018年3月に東証1部へ市場変更しています。
共同設立者の1人であり代表取締役社長の平野洋一郎氏は、ブロックチェーン技術の幅広い普及推進を行っている団体「一般社団法人 ブロックチェーン推進協会」の代表理事も務めています。
画像引用:一般社団法人 ブロックチェーン推進協会(略称BCCC)
議決権としてトークンを発行し投票履歴をブロックチェーン上に記録
ブロックチェーン技術を投入した議決権システムについてのアステリア株式会社による発表は次のとおりです。
本システムでは、今回の株主総会において議決権を有する株主9,307名に議決権としてのデジタルトークンを発行し権利行使(投票)に伴うトランザクションをブロックチェーン上に記録します。本システムの利用方法については、本日6月6日(木)に発送する「第21回 定時株主総会招集通知」で議決権を有する全ての株主に通知します。ブロックチェーンにはEthereumを採用し、Ethereumのスマートコントラクトによって、賛否を問う4議案10項目に必要なデジタルトークンを登録します。そして議決権の総数に応じて、それぞれ167,642個のデジタルトークンによる投票の受付を行います。
引用:アステリア
アステリア株式会社の発表内容を要約すると、まず最初に株主に対して議決権としてのデジタルトークンを発行し、株主が投票した結果はブロックチェーン上に記録されていくということになります。
画像引用:アステリア
「デジタルトークン」とは
まず「デジタルトークン」とは、ブロックチェーン上で発行された独自のコインのことで、「トークン」とも呼ばれています。
トークンの主な発行目的は資金調達です。
スタートアップ企業が自分たちのトークンを発行するのは、投資家にトークンを買ってもらうことで資金を集めるためであり、この方法で新規事業を起ち上げることをICO(Initial Coin Offering/新規仮想通貨公開)といいます。
未上場企業が資金調達する方法としては、IPO(Initial Public Offering/新規公開株)と呼ばれる新規に株式を証券取引所で上場し、投資家に株式を購入してもらう方法が有名です。
しかしIPOよりも、トークンを活用したICOのほうが短い準備期間で、かつ低コストで手軽に資金調達することが可能でます。
「Ethereumのスマートコントラクト」とは
次に「Ethereumのスマートコントラクト」です。
「Ethereum(イーサリアム)」とは、2013年12月以降から開発が進められている分散型アプリケーションのためのプラットフォームのことです。
ちなみにEthereum(プラットフォーム)上で使用される仮想通貨は「ETH(イーサ)」と呼ばれています。
そして「スマートコントラクト」とは、ブロックチェーン上で動作するアプリケーションを指し、ブロックチェーンだけでは成しえなかった契約条件なども記録することが可能な技術です。
つまりEthereumのスマートコントラクトを採用したことによって、細かな契約内容を記録することが可能になったわけです。
これにより、期間の短縮や不正防止ができるだけでなく、第三者による仲介サポートが不要になります。
投票システムにブロックチェーンを導入するメリット
議決権投票システムにブロックチェーンを投入するメリットは、どのようなものがあるのでしょうか。
アステリア株式会社は以下のように発表しています。
・議案毎に複数デジタルトークンを同時に発行して集計が可能
・票数はリアルタイムで集計が可能(最終集計結果の開示は総会当日を予定)
・特別なアプリを必要とせず、PC、スマートフォン等から投票が可能
・票数の改ざんが株主総会主催者関係者でも物理的に不可能
・投票期間内は24時間いつでも投票の受付が可能
これはつまり以下のようなメリットがあるということです。
- 投票や集計作業が瞬時に、しかも簡単にできる
- 票数の改ざんは物理的不可能で、公平性と透明性が保証される
このことはアステリアが発表する「議決権投票システムの特長」でも明確に書かれています。
アステリア株式会社の今後の取り組みと狙い
アステリア株式会社が投票システムにブロックチェーン技術を導入するのには、大きなメリットがありますが、実はこれ以外にも大きな狙いがあります。
それは、今回本番環境に適用した議決権投票システムを自社サービスとして展開していくことです。
このブロックチェーン投票システムは、上場企業を中心とした企業向けサービスとして展開していくとともに、行政さらにはエンターテイメント領域における投票の集計方法や結果に公正性を担保できる仕組みとして提案していく方針です。
アステリア株式会社は代表取締役社長の平野洋一郎氏がブロックチェーン推進協会の代表理事をつとめていることからも、ブロックチェーン技術を活用した事業開発を積極的に進めていくことを考えています。
そのターゲットは金融分野に限らず、広い分野を目標にしています。
アステリアでは、「ブロックチェーン事業推進室」が中心となり、ブロックチェーンを活用した事業開発を積極的に推進しています。特に、仮想通貨や金融機関の勘定系以外の幅広い分野におけるブロックチェーンの適用に力を入れ、これまでにも「文書改ざん検知ソリューション」「投票ソリューション」などを展開しています。
またソフトウェア開発だけでなく、企業の経営部門や企画部門などを対象に、ブロックチェーン導入支援のコンサルティング業務も行っています。
画像引用:アステリア ブロックチェーン導入支援コンサルティング
ブロックチェーン技術を活用した議決権投票システムも、上場企業では世界初の試みであり、今後のブロックチェーン技術を拡大していく際の足がかりになっていくはずです。
まとめ
アステリア株式会社のブロックチェーン技術を活用した議決権投票システムは短時間に、しかも簡単に集計作業ができる手軽さだけでなく、公平性・透明性をも担保できることから、従来の投票方法(直接投票、書面投票、電子投票)を稚拙なものに感じさせてしまうほどの優位性があります。
アステリア株式会社の取り組みを契機として、ブロックチェーン技術は今後様々な領域で活用されていくでしょう。
そしてそれらが仮想通貨に対する信頼度をも高めていくことにつながっていくはずです。
ブロックチェーン技術の今後の活用に期待しましょう。