ブラジル証券会社がリップル技術を活用した送金サービスを提供
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- 2019.06.08.
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ブラジルの為替ブローカーFrente Corretora社がリップル社と提携し、新たな国際送金プラットフォームを開発したことがわかりました。
昨今、国際送金を行う企業は、リップル社との提携を強めています。
これらの国際送金プロバイダは、なぜリップルの技術を使うのでしょうか?
Frente Corretora社がリップルの技術を利用した詳細を解説するとともに、なぜこれほどまでにリップルの技術が求められているのか、その背景についてもご説明しましょう。
ブラジル為替ブローカー、リップル技術を使った新プラットフォームを提供開始
ブラジルサンパウロに拠点を置く為替ブローカーFrente Corretora社は、リップルの技術を使った新たなプラットフォームの提供を開始することを、5月21日に公式ウェブサイト上で発表しました。
新しいプラットフォームの名前は「Simple」と名付けられています。
「Simple」の由来は、外国為替市場へのアクセスを簡素化し、民主化するというFrente Corretora社のビジョンにリンクさせたものです。
このプラットフォームには、リップル社のブロックチェーン技術が使われており、海外への送金をわずか数秒で完了させることができます。
利用者を「多額の送金を必要とせず、自身の子供が国外に居住している一般的なブラジル市民」と想定し、送金上限は3,000米ドル(約33万円)に設定されています。
これまで海外へ送金するときは、着金するまでに数日かかり、手数料も高くつきました。
一般的な金融機関を利用すると、少額の送金であっても、最大400ブラジルレアル(約1万1,000円)の料金が請求されます。
家族のために送金する金額のおよそ10%程度を手数料が占めることもあって、一般的な市民にとって多額の手数料は大きな負担となっていました。
一方、「Simple」ではスプレッドとして、お金を送金する側と受け取る側に差額を設けていますが、送金を行うのに手数料を請求しません。
Frente Corretora社はスプレッドの大きさについては明言していませんが、スプレッド幅は市場において最小レベルになることを保証しています。
代表の一人であるCarlos Brown氏は、次のように述べています。
「伝統的な金融機関がこれまでやってきたような非常に高いスプレッドを設けるのではなく、私たちは『たくさん使われること』で勝ちたいと思っています。」
「Simple」は6月から利用でき、Frente Corretora社と提携する100社以上のパートナーにもホワイトラベルプラットフォームとして提供され、パートナーの顧客が利用できるようになります。
しかもプラットフォームのレイアウトは、パートナー企業が自由にカスタマイズできるとのことです。
なお、海外に通貨を送金したい人が「Simple」を利用するには、オンラインでKYC認証を済ませる必要があります。
ブラジル企業Frente Corretoraとは
画像引用:Frente Corretora
Frente Corretora社は、Carlos Brown、RicardoBaraçal、Daniela Marchioriの3人によって、2017年に設立された新興為替ブローカーです。
ブラジルのサンパウロに拠点を置き、ブラジル国内に8箇所の支店があります。
3万人の顧客を抱え、2018年には3億ブラジルレアル(約84億円)の取引が行われました。
ブラジル中央銀行のデータによると、今日では国内で15番目に大きい為替ブローカーであり、2019年には国内で5番目に大きいブローカーになることを目標としています。
米国市場での事業を拡大するために、マイアミに駐在員事務所を開設したあと、ニューヨークとボストンに事務所を開設する計画を2019年4月に発表しました。
これは、米国からブラジルに対する国際送金を強化することを目的としています。
現在、Frente Corretora社は100社のパートナーで運営されていますが、2019年上半期のパートナー企業の数は400社に達する予定です。
従来の国際送金システムの問題
一般的に、国をまたいで送金を行うには、金融機関はSWIFT(スウィフト)と呼ばれるネットワークを使います。
SWIFTは、世界200カ国以上の銀行で利用されている世界標準の金融フォーマットです。
1万社以上の金融機関と接続し、3日毎に世界のGDPの3分の1の金額がネットワークを通るほど、重要なインフラとなっています。
そんな世界標準となっているSWIFTの問題点は、着金されるまでに時間を要すること、そして手数料が高いことです。
例えば、日本からブラジルにブラジルレアルを送金するとしましょう。
日本にあるA銀行で手続きを行うと、その銀行がSWIFTネットワークを通じてブラジルの中継銀行Bへ送金してくれます。
そして、中継銀行Bから、銀行口座があるブラジルのC銀行へ送金される流れになります。
A銀行→C銀行というように2行間で直接お金が流れるわけではなく、中継銀行であるB銀行が仲介する形になり、お金の流れとしてはA銀行→B銀行→C銀行というように3段階になります。
送金するのがマイナーな通貨だった場合、この中継銀行が2つになる場合があり、A銀行→B銀行→B‘銀行→C銀行のように、4つの銀行を経ることもあります。
着金まで時間がかかる上に、それぞれの銀行で手数料が加算されてしまい、手数料が送金額と比較して高額になってしまうなど、不便な点も多くありました。
これらマイナス要素が、インターネットで瞬時に多くの情報をやり取りできる現代社会において、適合しないのは事実といえるでしょう。
短時間で着金する新システム「SWIFT gpi」
画像引用:SWIFT
SWIFT社は、従来のシステムよりも短い時間で着金できる新たなシステム「SWIFT gpi」を2017年にリリースしています。
「SWIFT gpi」は、これまで数日かかっていた国際送金が30分以内に完了するというものです。
従来のSWIFTよりもセキュリティが向上し、資金の透明性についても向上しています。
現時点では、SWIFTに加盟している10,000行以上の銀行のうち約300行がSWIFT gpiを使っているとのことですが、全ての加盟銀行が「SWIFT gpi」に参加するにはおそらく数年かかると見込まれています。
まだしばらくの間は、即日着金の利便性を利用者が享受することは難しいでしょう。
SWIFT社はブロックチェーン技術を採用しない方針
SWIFT社は、「時間がかかる」・「手数料が高い」という問題を把握していないわけではありません。
2017年末にSWIFT社は、ブロックチェーンネットワークの大規模なテストを行っていますが、「ブロックチェーン技術そのものが未成熟であり、商用化するには時間がかかる」と判断したようです。
そのため、当面はブロックチェーンを使った技術を採用しない方針を打ち出しています。
リップルが解決すること
リップルの技術が解決するのは、「国際送金にかかるスピード」と「手数料の高さ」です。
リップル社の技術は、毎秒1000トランザクションを処理でき、さまざまな支払いシステムと相互に接続できるよう設計された、送金システムとして機能します。
従来のシステムのように、「中継銀行を経由する」必要はありません。
リップルネットワーク上に接続された2行が相互にやりとりでき、直接送り先の銀行へ通貨を送金できます。
中継銀行を経由する必要がないので、手数料を安く抑えることが可能となります。
さらに、リップルネットワークを利用することで、これまで数日かかっていた着金までの日数がわずか数秒となります。
素早い送金処理を実現することで、金融機関の業務効率はこれまでよりはるかに向上し、利用者にとってのメリットも計り知れないものがあります。
まとめ
国際送金プロバイダの既存のシステムには「手数料の高さ」と「着金までのスピードが遅いこと」の大きな問題がありましたが、利用者はその環境下で送金するしか手段はありませんでした。
しかし仮想通貨のブロックチェーン技術がその常識を打ち破り、多くの国際送金プロバイダに採用され始めてきています。
SWIFTのシェアにリップルが追いつき、追い越していく日はもう間もなくなのかもしれません。