金融庁がフォビジャパンとフィスコに立入検査を実施
- 取引所
- 2019.05.12.
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金融庁が、フォビジャパンとフィスコ仮想通貨取引所に立ち入り検査を実施したことが報じられました。
なぜこの2社が立入検査を受けることになったのでしょうか?
実は立ち入り検査の背景には、フォビジャパンとフィスコ仮想通貨取引所を取り巻く環境の変化に理由があったのです。
この記事では、フォビジャパンとフィスコ仮想通貨交換所に金融庁が立入検査を実施したニュースについて掘り下げてみましょう。
フォビジャパンとフィスコ、金融庁から立ち入り検査
2019年4月23日、フォビジャパンとフィスコ仮想通貨取引所に対して金融庁が立ち入り検査を行っていることを、関係者筋の話としてロイターが報じました。
フォビジャパンは、韓国やオーストラリアなどグローバルに取引所を設立している、世界的な取引所フォビの日本法人です。
その前身は、金融庁に仮想通貨交換業者として登録されていたビットトレード株式会社です。
ビットトレードの実質的支配者であったシンガポールの法人を2018年9月にフォビが買収し、2019年1月からフォビジャパンとして取引所を開設しています。
ロイターの報道によると、フォビジャパンは、経営体制や法令遵守体制、マネーロンダリング防止体制について重点的に調査されている模様です。
また、立入検査を受けたとされているもう1社のフィスコ仮想通貨取引所は、金融情報配信会社フィスコのグループ企業です。
2016年にサービスを開始しており、仮想通貨取引所のなかでは老舗企業のひとつとなっていますが、流出事件を起こしたテックビューロ社から仮想通貨取引所Zaifの事業を2018年11月に譲り受けています。
事業を譲り受けたことによって顧客基盤が拡大しているため、利用者保護の体制や内部管理体制などに影響がないかどうかを、金融庁は調査する方針のようです。
ロイターが金融庁に事実確認したところ「個別の立ち入り検査についてはコメントしない」と話したとのこと。
また、立入検査を受けているとされる2社に対してロイターがコメントを求めたところ、2社とも「回答できかねる」と述べています。
立入検査の背景
立入検査が入った2社は、検査に入られなかった他の仮想通貨交換業者とは何が違ったのでしょうか?
実は、この2社は1年以内に大きく業態が変化しています。
フォビジャパンは、2018年9月にビットトレードの実質的支配者を買収したことで仮想通貨交換事業者となりました。
代表取締役社長はビットトレード社のときと変わらないものの、経営体制は大きく変わっています。
フォビ社の日本支社長である陳海騰氏をトップの代表取締役会長に据えており、さらに退任した現任社外取締役2名の代わりに新たな社外取締役を就任させています。
一方、フィスコ仮想通貨取引所は、仮想通貨取引所Zaifの事業を譲り受けた際に、Zaifが保有していた約73万口座を移管しています。
経営体制等は変わらないものの、業容が急拡大したといえるでしょう。
これらの変化により、サービスが健全に顧客へ提供できなくなる可能性があると金融庁は見ているようです。
例えば、経営体制が変化したことで、それまでできていたことが円滑にできなくなることもあるでしょう。
権限が誰かに集中したり内部監査機関が機能しなくなったりなど、管理体制が変化している可能性もあります。
また、経営体制が変化していなくても、口座数が急激に増えると、内部管理体制や内部監査体制が今までのままで良いのか、見直しも必要です。
企業を取り巻く環境の大きな変化が、今回の金融庁の立入検査を招いた要因となっています。
フォビジャパンについて
フォビジャパンは、2019年1月に仮想通貨交換業サービスを開始しています。
前身の仮想通貨取引所ビットトレードから顧客口座を引き継ぎ、取扱通貨はビットトレードのときと同じ6種類を取り扱っています。
- ビットコイン(BTC)
- イーサリアム(ETH)
- ビットコインキャッシュ(BCH)
- ライトコイン(LTC)
- リップル(XRP)
- モナコイン(MONA)
一方、フォビグループの最大の取引所Huobi Globalでは、100種類以上の仮想通貨を取扱い、世界130カ国以上に300万人のユーザーを抱えている大企業です。
国ごとに仮想通貨の規制が異なるため、シンガポールや日本、韓国、イギリス、オーストラリア、カナダ、ブラジル、香港にコンプライアンスサービスチームを設立して、信頼性の高いサービスを世界各国に提供しています。
現在は、ファンドを設立したり分散型取引所を設立する計画を発表したりするなど、業務を拡大させています。
フィスコ仮想通貨取引所について
フィスコ仮想通貨取引所は、金融情報配信サービスを提供するフィスコのグループ企業です。
どちらかというとマイナーな取引所で、流動性はそれほど高くありません。
株主はフィスコデジタルアセットグループで、現在はZaifとフィスコ仮想通貨取引所の2つのプラットフォームを運営しています。
Zaifを譲り受けたのは、2018年9月に発生したZaifの仮想通貨流出事件がきっかけです。
流出した約70億円相当の顧客資産の補てんをフィスコに求めたことで、テックビューロ社は仮想通貨交換事業をフィスコ仮想通貨取引所へ譲渡しました。
なぜフィスコに補てんを求めたのかというと、元々協力会社という関係性があったからです。
フィスコ仮想通貨取引所が利用していた取引システムはZaifのOEMでした(現在は変更)。
また、フィスコグループのシステム開発企業カイカとも協力関係にありました。
Zaifではまだ一部のサービスが再開されていませんが、2019年中には、フィスコ仮想通貨取引所とZaifは統合される予定です。
それぞれの取引所の取扱通貨を見てみると、以下のようになっています。
Zaifで取り扱っている主要通貨は次のとおりです。
- ビットコイン(BTC)
- ネム(XEM)
- モナコイン(MONA)
- ビットコインキャッシュ(BCH)
- イーサリアム(ETH)
フィスコ仮想通貨取引所で取扱っている主要通貨は、次の3種類です。
- ビットコイン(BTC)
- ビットコインキャッシュ(BCH)
- モナコイン(MONA)
この2社が統合されると、取り扱い主要通貨も増えることになります。
仮想通貨交換業者に求められること
フォビジャパンとフィスコ仮想通貨取引所の立入検査では、具体的にどのようなことが調査されるのでしょうか?
おそらく、仮想通貨交換業者におけるガイドラインの基準を満たしているかどうかを調査されるでしょう。
例えば、経営体制については、次のようなことが求められます。
- 経営者に権限が集中していないか
- 内部管理機能は整っているか
- 監査機関は有効に機能しているか
- 反社会勢力との取引を未然に防止する措置があるか
もし、立入検査された企業が上記のことを満たしていないときは、行政処分を受ける可能性があります。
また、内部管理体制については、次のようなことがチェックされるでしょう。
- 社内規則があること
- 内部管理部門を強化することを、経営上の重要な課題と位置づけていること
- 重要な問題が起こったときに内部管理部門から経営陣に対して迅速に報告がこと
こちらも同様に、基準を満たしていない場合は、行政処分を受ける可能性があります。
まとめ
金融庁は利用者が安全に取引できることを第一に考え、仮想通貨交換業者に対してさまざまな視点から調査を行っています。
立入検査に関して、金融庁やフォビジャパン、それにフィスコ仮想通貨取引所からは具体的な発表がありません。
しかしもし何らかの行政処分があるなら、仮想通貨に対する信頼性が薄れる結果にもつながりかねません。
そうなった場合、仮想通貨の値動きにも何らかの影響があるかもしれません。
この件に関する続報を注意深く見守るべきでしょう。