香港の逃亡犯条例デモは仮想通貨にどんな影響があるのか
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- 2019.06.27.
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香港における逃亡犯条例改正に反対するデモ活動は、参加者200万人ともいわれる空前の大規模デモになりました。
このデモによって、香港政府のトップである林鄭月娥行政長官は逃亡犯条例の改正を事実上の撤回に等しいと発言しました。
しかしデモ参加者はこの発言に納得しておらず、完全撤回と林鄭月娥行政長官の辞任の要求、さらにデモを暴動と表現したこと、デモ制圧のために催涙弾などを使用して武力鎮圧しようとしたことに対して責任追及しています。
香港はアジア圏でも二番目の株式取引高があり、シンガポール、東京と並んで経済都市としての地位を確立していました。
そんな香港における大規模デモは、仮想通貨にも大きな影響を与えました。
逃亡犯条例改正に対するデモが仮想通貨に与えた影響やその背景、また仮想通貨の特性についてご説明していきましょう。
逃亡犯条例改正に対するデモ
逃亡犯条例とは、香港で身柄を拘束された犯罪容疑者はその人権が守られる政府にのみ引き渡すと定めたものです。
これは香港がイギリス領だった頃の1992年に制定されており、香港が返還された後も改訂されていませんでした。
そのため香港と中国は犯罪容疑者を引き渡すために、事前に連絡を取りつつ国外追放という形を取り、実質的な引き渡しをおこなっていました。
ただし、香港から中国への実質的な引き渡し件数はそれほど多いものではなかったようです。
今回の逃亡犯条例改正案は、犯罪容疑者の引き渡し協定を結んでいない国などに対して、引き渡すことができるよう改正しようとするものです。
この改正案に香港の多くの人々が反対している理由は、香港の「一国二制度」が崩壊してしまう危険性を感じているからです。
もし改正されたとすれば、中国の体制に批判的な香港居住の人物が容疑を捏造されてしまい、中国に引き渡されてしまうなど、香港居住の人々までが中国の取り締まりを受ける可能性が高くなってしまいます。
こうなると経済都市香港の地位を確固たるものにしている「一国二制度」は形骸化してしまい、いずれ中国支配と変わらないものになってしまうことを恐れているわけです。
逃亡犯条例改正で中国ができうること
もし逃亡犯条例が改正されれば、中国ができることは犯罪容疑者を引き取れるだけではありません。
中国における犯罪に関連した資産の没収までもが可能になります。
またこれは香港に居住する人だけでなく、旅行やビジネスで香港を訪れている人も対象にしたものです。
これによって、香港にある資産が中国によって没収・差し押さえられてしまう可能性が非常に高くなってしまいます。
香港の資産が海外や仮想通貨に流れる
逃亡犯条例改正に反対するデモが行われている香港では、ビットコインの値動きが他の国とは異なる動きを示していました。
香港を拠点とする仮想通貨取引所Tidebitで、1BTCが73,120香港ドル、米ドルでは9,337ドルと、世界標準価格と比べるとおよそ160ドルの高値となり、価格乖離が起こっている状態でした。
この現象について投資プラットフォームeToroのMati Greenspan 氏(シニア・アナリスト)は、香港の資産がビットコインに流れ、避難しているのではないかとの見解を示しています。
なぜ仮想通貨に資産が流れたのか
香港の逃亡犯条例改正がもし実施されれば、資産家たちは中国に資産を没収される可能性があります。
そのため資産家たちは、資産を海外や仮想通貨に移動させ始めているようです。
提示できる明確なデータはありませんが、香港のファイナンシャルアドバイザーは、自分の顧客が香港からシンガポールに資産を移していることを語っています。
シンガポールは税率が低く、しかも法人事業税や地方税はありません。
また赤字企業は法人税を支払わなくても良く、損金も永年繰り越しができます。
資産を移すのに絶好の国といえます。
また前述のようにビットコインなどの仮想通貨に資産を移しておけば、世界中どの国に行っても自由に引き出すことができます。
しかも仮想通貨なら現物があるわけではありません。
大量の現金を持っているよりも安全で、身動きがとりやすいともいえます。
今回の逃亡犯条例改正に対するデモは、報道を見ている限り暴徒化しておらず、香港政府が実力でデモを鎮圧するために暴徒だと呼んでいるように見受けられます。
このデモを鎮圧するための人員を中国が送り込んでいるとのニュースも散見しますが、もし香港政府が今後デモ鎮圧のために今以上の実力行使をしてしまうと、暴徒化してしまう可能性もゼロではありません。
そうなってしまうと経済都市香港の地位が揺らいでしまいかねません。
また逃亡犯条例改正の背後に中国の力が働いていたとすれば、今後の香港での経済活動が不安なものになってしまいます。
これらが香港企業の株価に影響を及ぼす懸念もあります。
おそらく資産家たちは、これらのことを感じ取って資産を海外や仮想通貨に移していったのではないでしょうか。
仮想通貨にリスクヘッジさせる傾向
仮想通貨は株などと連動することがないのは、これまでの仮想通貨の価格変動と株価の動きから明らかになっています。
一般的な金融商品は株価と連動して価格が上下することがほとんどですが、仮想通貨の場合連動しないばかりか、その逆の動きをするケースが多く見られています。
これは株価が下がってしまうと儲けることができないため、それまで株に投資していた分を仮想通貨に投資する傾向があるということです。
また国の政情不安や戦争、貿易摩擦などが起きると、株価は下がってしまいますが、それとは逆に仮想通貨が値上がりすることがあります。
これは不安定な株や金融商品から、安全な仮想通貨に資産を移動させたと読み取ることができるでしょう。
バンクオブアメリカ・メリルリンチによる調査で、興味深いものがあります。
画像引用:Bank of America Merrill Lynch
この調査によると、アメリカと中国の貿易摩擦、そしてイギリスのEU離脱などによって回答者は先行き不安を感じており、全回答者の34%の人が株価暴落に備えてリスクヘッジをしているとの結果が出ています。
実は34%もの人がリスクヘッジを考えているのは、リーマンショック以来の最大の比率になるとのことです。
一般的にリスクヘッジは、資産のポートフォリオを小さくしたり、金や日本円など安全性の高いものに資産を移行することがほとんどです。
しかし最近は仮想通貨がリスクヘッジの対象として加わっていると考えられています。
アメリカ株をメインに取引している「T.Kamada」氏は、このエビデンスとしてアメリカの仮想通貨投資会社Grayscaleによるビットコインの投資信託が高騰していることだけでなく、出来高が8倍にまで拡大していることを紹介しています。
画像引用:T.Kamada twitter
Grayscaleのデータによると、2019年の第1四半期は対前期比で1,270万ドル増えています。
これは仮想通貨に流入する資金が42%増えている計算になります。
仮想通貨へのリスクヘッジはさらに高まる可能性も
これまで説明したように、投資家が資産をリスクヘッジするために仮想通貨への投資を加速させてきていることは、ほぼ間違いないでしょう。
その背景には仮想通貨が登場した当時に比べて知名度が上がったことに加え、以前よりは信頼感が高まってきていることなどがあるはずです。
今後、仮想通貨を資産のポートフォリオとして加える傾向はますます高まっていくことが予想されます。
香港の逃亡犯条例改正に対するデモは現時点で終息したとは言い切れず、おそらく完全決着するまで続くのではないでしょうか。
またアメリカと中国の貿易摩擦やイギリスのEU離脱なども決着がついた状況ではありません。
世の中の混乱時に価格が上昇するという皮肉な結果ではありますが、それだけ仮想通貨の価値が認められつつあるということでしょう。
仮想通貨FXに取り組む際には、これらの動向を注視しておくことで利益につないでいけるのではないでしょうか。