万が一日本の仮想通貨FX業者が破綻したら資産は戻らないのか?
- 考察
- 2019.05.08.
- 仮想通貨FXブログ
- 万が一日本の仮想通貨FX業者が破綻したら資産は戻らないのか?
日本国内において、仮想通貨をネガティブなイメージでとらえる人は少なくありません。
マウントゴックス事件のような仮想通貨を巡る事件やトラブルは、ほぼ毎年のように世界各地で起こっています。
そして仮想通貨FX業者もこれらの事件によって淘汰される渦中にいます。
多くの場合、管理体制に問題があってハッキングされる、システムの穴を突いた手法で仮想通貨が奪われるといった事件が報道されています。
また、このような状況に陥った仮想通貨取引所の中には、最終的に取引所を閉鎖してしまうようなケースも見られました。
マウントゴックス事件は、結果的にビットコインが大暴騰したことによって、被害者に対する補償が行われましたが、これは奇跡的なケースに過ぎません。
日本で仮想通貨取引所への保全管理を明確に義務付けた法律が施行されたのは、2017年のことです。
法的にはまだまだインフラ整備の段階であるため、仮想通貨取引所に対して完璧な補償を期待するのは、正直厳しいでしょう。
とはいえ、大きなお金を動かすことの多い仮想通貨FXにおいて、全資産が戻ってこないというリスクがある中での取引は受け入れにくいはずです。
そこで、日本でも金融庁が投資家の保護に向けて、いくつか施策の動きを見せています。
今回は、日本国内における仮想通貨FX業者の破綻に伴う資産の保護に関する現状と、金融庁の施策内容についてご紹介します。
改正資金決済法で仮想通貨FX業者に課せられた義務
2017年に施行された改正資金決済法では、それまで仮想通貨FX業者側に任せていた管理体制などを、きちんと法律に基づいた対応をするように促す格好の機会となりました。
その中には、金融機関や証券会社では当たり前の話だった制度もあり、仮想通貨取引の歴史の浅さが浮き彫りになりました。
主な内容としては、以下の4つが義務化されました。
- 財産の分別管理
- 本人確認を取引時に実施する
- 事業者に対する登録制の導入
- リスクなどの適切な情報提供
財産の分別管理とは、仮想通貨FXを行うユーザーから預かった資産(法定通貨・仮想通貨)と、事業者が保有している資産とを区別して管理するというものです。
これは、資産管理を行う事業者としては基本的な考え方であるものの、改正資金決済法の義務化まではきちんと分別していない業者も多かったようです。
取引時における本人確認とは、簡単に言うと運転免許証・パスポートなどの公的証明書を確認することです。
これは、マネーロンダリング対策や不正取引を防ぐための方法で、口座を開設する際や200万円をこえる仮想通貨の交換・現金取引時にチェックが入るようになっています。
ただ、取引時確認を一度終えたら、原則として公的証明書の再提示は要求しない業者も多いようです。
業者目線で言えば、改正資金決済法の目玉はおそらく「登録制の導入」でしょう。
金融庁・財務局の登録を受けた事業者だけが、日本国内において仮想通貨の交換業を営める制度です。
登録に際しては、資本金は1,000万円以上で純資産がマイナスとなっていない株式会社であること。
そして仮想通貨交換業を適正・確実に遂行できる体制が整っていることが条件になっています。
過去には、業者の体制について金融庁が立入検査を行ったケースもあり、そのために撤退・廃止を余儀なくされた業者も存在しています。
またユーザーに安心して取引してもらうためには、リスク要因もしっかり理解しておいてもらわなければなりません。
そのため、取り扱う仮想通貨の中身やボラティリティ、手数料の情報などを分かりやすく説明することも義務化されています。
財産の分別管理は顧客資産を保証するものではない
分別管理が義務化されたため、理論上、会社の資産と顧客の資産は分離されたことになっています。
よって、仮に仮想通貨FX業者が破綻となっても、顧客の資金はそのまま残っているので返却できるはずです。
しかし、これは希望的観測に過ぎず、残念ながら破綻時に仮想通貨・預入金が全て戻ることを意味しているわけではありません。
銀行や証券会社の金融商品とは違い、仮想通貨FX業者には証券保管振替機構・預金保険機構による財産保護の仕組みがありません。
つまり、証拠金などを信託保全する義務があるとはいえないのです。
そのため、仮想通貨FX業者が倒産した場合に最優先されるのは、従業員の賃金と他の優先債権です。
これらを除いた資産の中から顧客の資産が分配されることを考えると、破綻が決まった時点で顧客の資産が全額残っているという状況は考えにくいでしょう。
今後、仮想通貨にかかる財産保護についても、金融機関同様の仕組みが構築されることを期待したいところです。
金融庁は仮想通貨をどう考えて業者にどう対応しているのか
改正資金決済法が施行されてから、金融庁では仮想通貨をどのように認識し、問題と向き合ってきたのでしょうか。
2018年4月27日に金融庁が公表した「仮想通貨交換業者に対するこれまでの対応等」によると、かなり細かい部分にまで目を行き届かせようと試みていたことが分かります。
仮想通貨FX業者への対応については、改正資金決済法の施行に伴い、みなし仮想通貨交換業者の廃止に向けて規制を実施し、利用者保護のルールを明確に打ち出しました。
また、事務ガイドラインやモニタリングチームの設置など、仮想通貨FX業者の審査体制を整えるとともに、利用者への継続的な注意喚起もこまめに行われています。
仮想通貨の流出を招いたコインチェック社については「みなし業者」として明示され、業務改善命令などの措置が取られていました。
また、コインチェック社同様、問題が起こった時点でみなし業者に区分された業者に対しては、業務停止命令・業務改善命令などの厳しい措置が取られました。
その他、無登録業者に対する対応としては、無登録営業の疑いがある業者に対し事業の詳細を確認するために「照会書」が発出され、無登録業者であることが判明した場合は「警告書」が発出されています。
実際に海外事業者に対しても発出されていることから、今後グレーゾーンの状態で営業している業者は少なくなっていくことが予想されます。
業者に課せられた行政処分の具体的な内容とは
金融庁の立入検査によって問題があるとみなされた部分については、業務停止命令・業務改善命令といった行政処分が出されています。
具体的な内容を紐解いてみると、問題点として浮き上がってきたのは、やはり「リスク管理・コンプライアンス」に関する要因でした。
以下に、顧客の立場から見て特に問題があると思われる部分について、「仮想通貨交換業者に対するこれまでの対応等」より抜粋していきます。
顧客への情報開示・利用者情報の安全管理が不十分であるという指摘がなされています。
自分の資産情報を安全に管理できない業者に対して資産を預けていたら、当然破綻時に資産が戻ってこない可能性は高くなります。
立入検査の結果、複数の仮想通貨取引所で私的な流用が行われていたようです。
このような結果が出ると、取引を行うことに不安を感じ、仮想通貨FX取引を続けるなら、こまめに出金するようにしようと考えてしまうでしょう。
仮想通貨を取り扱う以上、仮想通貨に関わるシステムの問題は最重要項目の一つです。
にもかかわらず、問題の根本的な原因が十分に分析されていないというのは、利用者に不安を与えます。
金融庁の調査結果を見る限り、良い業者とそうでない業者とが徐々に振り分けられているものの、仮想通貨流出や取引停止・破綻のリスクを完全に払しょくできたわけではないようです。
おわりに
残念ながら仮想通貨FX業者が破綻してしまった場合、2019年の段階では預け入れていた資産が全て戻ってくる可能性は低いようです。
しかし、今後取引が活発化する中で、預金を保護してくれる制度や機構が誕生する可能性は十分あります。
金融局が事務局を務める「仮想通貨交換業等に関する研究会」によると、2018年12月21日に仮想通貨に関する新たな法制度についての検討結果を取りまとめた報告書が公表されました。
その中で、仮想通貨交換業者に対して顧客を受益者とする信託義務を課すことが提案されています。
顧客を守る制度を構築しようと金融庁が動いているなら、仮想通貨の未来は明るいといえるかもしれません。
まだまだ仮想通貨を巡る環境が落ち着くには時間がかかりそうですが、市場において諸問題が露見する中、大きな問題もなく運営している仮想通貨FX業者も存在します。
仮想通貨市場全体で何か問題が起こった場合は、それを試金石にして業者の信頼度を見極めるくらいの気持ちで取引に臨み、当面は利益が出たらこまめに引き出すことで、リスクを最小限に抑えるように心掛ける方が良いのかもしれません。