日本の取引所SBIバーチャルカレンシーズがビットコインキャッシュを取り扱い廃止
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- 2019.04.30.
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2019年4月16日、大手金融会社・SBIグループ傘下の仮想通貨取引所「SBIバーチャルカレンシーズ」が、ビットコインキャッシュ(BCH)の取り扱いを廃止する方針を決定しました。
公式発表上では、具体的にいつ廃止するかのスケジュールは4月下旬を目途に公表、取り扱い廃止の日時は2019年6月下旬を予定しています。
BCHは、ビットコインのバージョンアップに伴い、システムの仕様を変えて分岐させるハードフォークによって誕生した仮想通貨です。
ビットコインの取引量が増えたことによって生じた、スケーラビリティ問題(取引・送金がスムーズに行われないこと)を解消できると期待されている通貨です。
しかしSBIバーチャルカレンシーズによると、BCHの時価総額が大幅に減少したことにより、将来的にブロックチェーンの承認率が1グループに過半数を独占され、不正に操作されるおそれがある状態を指す「51%攻撃」が実施され、次に生成されるブロックの記録に不正な取引を配信する可能性が高まっているとしています。
ブロックチェーンの安全性に問題が生じ、さらにハードフォークが行われてしまうと、価格がより大幅に下落してしまうリスクがあることから、顧客の便益を損なうと判断したと説明されています。
BCHの返還スケジュールとしては、4月下旬を目途に売却を通じた換金をスタートさせ、5月下旬には指定ハードウェアウォレット(CooXWallet)への出庫が開始される見通しです。
かなり目まぐるしい動きになりましたが、ここまでの状況に陥ったのは何故なのでしょうか。
今回は、BCHが取り扱い廃止になった理由に加え、その背景についてもご紹介します。
なぜBCHの時価総額は下落したのか?
今回の方針が決まった原因として、BCHの時価総額が下落したことが説明されています。
しかし、そもそもなぜBCHの時価総額が下落したのでしょうか。
もともと、ハードフォーク当初は不安定な値動きだったものの、その後はビットコインやイーサリアム・リップルといった通貨に次ぐ勢いで仮想通貨市場を賑わせていました。
しかしBCHのアップデートに伴う問題として、WHC(Wormhole Protocol)とDSV(op_checkdatasigverify)という新しい機能を実装させるかどうかで、ビットコインキャッシュ内にあった大きな二つの派閥が割れてしまいました。
これら2つの機能が実装されると、簡単に言えばイーサリアムのようなスマートコントラクト機能・各種拡張機能がBCH自体に付加できるようになります。
しかし、BCHはビットコインのハードフォークなのだから、無駄な機能は極力省いてブロックサイズだけを大きくすればよいだろうという一派もありました。
機能拡張を重視したのがビットコインABCというチーム、シンプルなスタイルでハードフォークすることを提案したのがSVというチームだったのです。
これら2つの対立が深まったことで、仮想通貨として取引を続けることに難色を示した投資家が増えた結果、BCHの人気が一時的に凋落したものと考えられます。
もちろん、単純な不安要素だけで相場が動いたわけではなく、水面下では大きな動きがありました。
ビットコインABCとSVとの対立構造
それぞれのチームにどのような違いがあったのかを一言で説明するならば、主要メンバーの「思い入れ」に違いがあったということです。
SV側には、自称サトシ・ナカモトを名乗る「クレイグ・ライト」氏がいたのです。
サトシ・ナカモトの正体は実のところ誰も知らないため、クレイグ・ライト氏が本当にサトシ・ナカモトであるのかどうかについて、何らかの根拠はありません。
しかし、少なからずビットコインの仕様に詳しかったことから、初期のビットコインから大きく性能が変わることに反発するほど思い入れが強かったものと考えられます。
ビットコインABC側とSV側との違いについて考えてみると、ABCはどちらかというと通貨流通に重きを置いたビジネス寄りの考え方をしています。
これに対してSV側は、基本に忠実な通貨を作りたいという思惑から、おそらくはマイナー寄りの考え方に近い思想を持っています。
仮想通貨の取引はマイナーによって支えられている点は否めず、そこを忘れてしまったら仮想通貨は成り立たないとSV側が考えていたことで、深刻な対立を招いたのです。
ハッシュ戦争と51%攻撃
BCHの将来について、ビットコインABCとSVとが対立する中、どちらが正しいのかを決めるための戦いが始まりました。
これはハッシュパワーの競争によるもので、一言で言えば「どちらのチームがより長いブロックチェーンを作れるのか」の勝負でした。
この戦いに勝利した側が、実質的なBCHの継承者になれるため、2018年11月から熾烈な競争が続いてきました。
しかし11月26日、グレイグ氏はこの戦争が終結した旨を公表し、ビットコインABCが最終的な勝者となりました。
ただ、仮想通貨を公的な通貨として考えたとき、この戦いは部外者にも少なからず影響を与える結果になってしまいました。
特に、競争が行われてSV側がリードしていたころ、ビットコインABC側に向けて「51%攻撃」を想定していたのではないかと噂されていました。
つまり承認を増やすために、意図的に二重支払いを起こすことを想定していたのではないかといわれていたのです。
このような戦いが一般人に支持されるはずもなく、いつ51%攻撃が意図的に起こされるのかを警戒し、市場に不信感を与えてしまいました。
その結果、いったん収束したBCHを巡る流れは、新たな局面を迎えることになったのです。
大手であるバイナンスが裁定に入った
仮想通貨の最大手の一つ・バイナンスは、CEOのジャオ・チャンポン氏を中心として、ビットコインSV側のクレイグ氏に対する不信感をあらわにしました。
自分がサトシ・ナカモトであると大っぴらに宣伝するクレッグ氏の姿勢から、彼を「偽のサトシ・ナカモト」と評し、日本時間の2019年4月15日の夜、正式にビットコインSVの上場廃止を決定しました。
この流れは、仮想通貨業界の主要取引所にも影響を与え、SVを上場廃止した取引所の情報が発表され始めました。
ここで注目したいのは、今回話題になっているSBIバーチャルカレンシーズは、ビットコインSVではなく「ビットコインキャッシュABC」側だという点です。
そもそもSVは日本の取引所には上場していないため、今後のABC・SV競争が再度勃発することをおそれた動きであることが考えられます。
もともとSBIグループ側の姿勢としては、BCHには好意的であり、マイニングにも力を入れていました。
しかし仮想通貨コミュニティの対立は、取引の正常化にとって大きな障害になることが懸念されたため、SBIバーチャルカレンシーズは、不毛な争いに投資家が巻き込まれないよう対処することを優先したのです。
おわりに
仮想通貨の取引はまだまだ始まったばかりで、各通貨のコミュニティ側が持つ思惑にまで考えが行き届かない人も多いと思います。
しかし、このような動きは国家単位でも少なからず干渉が見られるもので、過去には日本経済バブルの引き金となったプラザ合意などがありました。
それぞれの通貨価値に対する考え方は、仮想通貨に携わる人それぞれにあり、価値観の違いが技術力で凌駕されることは好ましい傾向ではありません。
今後、世界中の通貨を保有・利用する人が何らかの得を得るようになり、長くその状態が続くことを望みたいものです。