次期トランプ政権がSECの仮想通貨監督の権限をCFTCに大幅移行か?
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- 2024.11.27.
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画像引用:Fox Business
米国における仮想通貨規制は、これまでSEC(米証券取引委員会)がおこなっており、SECのGary Gensler(ゲイリー・ゲンスラー)委員長の発言が何度も報道で取り上げられてきました。
実際SECは、ほとんどの仮想通貨は証券であると主張し、仮想通貨企業に登録とSECが主張する規則に沿って活動することを主張してきました。
その規則は不透明であるにもかかわらず、意に沿わない活動をしている仮想通貨企業を提訴してきたため、仮想通貨関連業界だけでなく、仮想通貨を支持する人々からは不満の声が上がっていました。
そして来年1月に大統領に就任するトランプ次期大統領は、選挙活動中に公約として就任1日目にゲイリー・ゲンスラー委員長を解任すると宣言していました。
このような状況の中、トランプ次期政権が仮想通貨の監督を現在のSEC主導から、CFTC(商品先物取引委員会)に移行させるつもりであることが報じられました。
この報道に加え、ゲイリー・ゲンスラー委員長だけでなく、複数名のSEC委員が仮想通貨規制について越権行為であると提訴されていること。
そしてゲイリー・ゲンスラー委員長が自ら退任する意向であること。
そしてトランプ次期大統領がホワイトハウス初の暗号資産管理役として、CFTCの元委員長であり、仮想通貨擁護派であるChris Giancarlo(クリス・ジャンカルロ)氏を迎えることを検討していることも明らかになりました。
米国における仮想通貨発展の今後を大きく左右する、これらの報道についてご説明しましょう。
SECからCFTCへ仮想通貨監督権限の大幅移行報道
次期トランプ政権が、CFTC(商品先物取引委員会)の仮想通貨監督権限をこれまでよりも広げることを検討しており、これまで仮想通貨を監督してきたSECから、実質的にCFTCへ大幅移行することで、不透明だった仮想通貨規制が明確になるのではないかと米のケーブルニュースチャンネル「Fox Business(フォックス・ビジネス)」が2024年11月26日に報じました。
「Fox Business」によると、次期トランプ政権はSECによる仮想通貨企業への規制や提訴などが、米国における仮想通貨の成長や発展を大きく阻害していることから、米国で仮想通貨をより発展、定着させるためにはこれらの規制を緩和する必要があると考えていることを報じています。
そしてSECに代わってCFTCが仮想通貨の現物市場だけでなく、仮想通貨取引所の規制までをも担うことになる可能性があるとも報じています。
この背景にはトランプ氏が大統領選挙に勝利したことで、共和党の影響力が拡大していることも取り上げています。
そしてCFTCの元委員長であり、2017年12月にビットコインオプションを承認した経歴のあるChris Giancarlo(クリス・ジャンカルロ)氏は、資金と指導力さえあればCFTCはトランプ大統領が就任する初日から、仮想通貨商品の規制のために素早く動くことができると語っています。
クリス・ジャンカルロ氏が語っているCFTCの資金とは運営予算のことで、現在のCFTCの予算は7億600万ドルですが、一方のSECは30億ドルの予算を受け取っています。
職員数ではCFTCが約700人であるのに対し、SECは5300人もの職員を抱えています。
そのためCFTCのRostin Behnam(ロスティン・ベナム)委員長は、仮想通貨市場に対するより効果的な規制のために必要な追加資金を要請していました。
つまりSECと比べてあまりにも予算が少なく、職員を雇用することもできないため、現状では十分な活動ができないということです。
CFTCとSECの仮想通貨に対する認識の違い
CFTCとSECは仮想通貨に対する認識が大きく異なります。
CFTCのロスティン・ベナム委員長は2023年に12月に仮想通貨トークンはほとんどがコモディティ、つまり商品だと認識していると述べています。
画像引用:SquawkCNBC X
しかし一方のSECのゲイリー・ゲンスラー委員長は、仮想通貨のほとんどを証券とみなす発言をしています。
さらに仮想通貨に関する規制についても認識が異なることが明らかになっています。
CFTCのロスティン・ベナム委員長は規制の体制そのものに不足があると述べ、その不足を補える立法に期待していることを明らかにしています。
一方、SECのゲイリー・ゲンスラー委員長は現在の規制で十分だと、新たな立法の必要性がないことを述べています。
現在、仮想通貨に対して明確な基準がないまま規制と法的措置を繰り返してきたのがSECですが、CFTCが仮想通貨企業に対して法的措置を行っていないわけではありません。
しかしCFTCはSECと比べると仮想通貨に対して融和的であり、CFTCのロスティン・ベナム委員長は、仮想通貨市場で巻き起こっている明確な規制のルールに賛同していました。
また仮想通貨に対して否定的な姿勢を保ち続けてきたSECが、仮想通貨規制の主体となっているのは、ゲイリー・ゲンスラー委員長を任命したのが現米国大統領であるジョー・バイデン大統領だからだと考えられています。
仮想通貨規制に影響を及ぼす色々な動き
米の次期大統領がトランプ氏に決まったとともに、共和党の勢力が高まったこともあり、仮想通貨規制に影響を及ぼす色々な動きが報じられています。
SECとゲンスラー委員長、複数のSEC委員が米18州から提訴される
2024年11月15日、SECとゲンスラー委員長、そして4人のSEC委員が米18州の検事総長および、暗号資産擁護団体であるDefi Education Fund(ディファイエデュケーションファンド)から提訴されました。
画像引用:THE BLOCK
提訴している米18州はケンタッキー州、ネブラスカ州、テネシー州、ウェストバージニア州、アイオワ州、テキサス州、ミシシッピ州、モンタナ州、アーカンソー州、オハイオ州、カンザス州、ミズーリ州、インディアナ州、ユタ州、ルイジアナ州、サウスカロライナ州、オクラホマ州、フロリダ州の各州の検事総長です。
提訴されたのはSECとゲンスラー委員長に加え、SEC委員のキャロライン・クレンショー氏、ハイメ・リザラガ氏、ヘスター・ピアース氏、マーク・ウエダ氏です。
訴状によると、SECによる仮想通貨企業の取り締まりは、経済成長を妨げるだけでなく、米各州による経済管理の権利侵害にあたると申し立てています。
ゲイリー・ゲンスラーSEC委員長の辞任
SECが2024年11月21日、ゲイリー・ゲンスラー委員長が来年1月20日に辞任することを発表しました。
画像引用:sec.gov
ゲイリー・ゲンスラー委員長が辞任する1月20日は、トランプ次期大統領が就任する日、すなわち第二次トランプ政権が誕生する日です。
トランプ次期大統領は選挙期間中、就任1日目にゲイリー・ゲンスラー委員長を解任すると宣言していましたが、米大統領はSEC委員長を指名できても、SEC委員を解任する権限はありません。
ゲイリー・ゲンスラー委員長は2021年4月に就任したため、本来であれば2026年6月までの任期となっていましたが、トランプ次期大統領によって堂々と宣言されたため、自ら退くことになったわけです。
ホワイトハウス初の暗号資産管理役にクリス・ジャンカルロ氏を検討
トランプ次期大統領は選挙期間中に仮想通貨のための規制委員会を設立することも宣言しており、就任は2025年1月20日ではあるものの、現時点でも具体化に向けて動きが報じられています。
そしてホワイトハウス内に初めて暗号資産管理役を設けることを検討しており、その候補としてCFTC元委員長のChris Giancarlo(クリス・ジャンカルロ)氏を有力候補として検討していることをFOXビジネスが報じています。
クリス・ジャンカルロ氏は金融家であり、暗号資産を長年支持している人物でもあります。
早くから暗号通貨の重要性を見抜き、ブロックチェーンの採用推進とデジタルドルプロジェクトを主導してきたことなどから、SNS上で「クリプト父さん(Cryptodad)」と呼ばれる人物です。
まとめ
次期トランプ大統領が就任前にもかかわらず、選挙期間中に宣言した仮想通貨に対する施策の実現のために動いていることが報道されていることについてご紹介しました。
大統領が変わることで、仮想通貨に対して否定的だったSECはおそらく仮想通貨に対して規制する権限を失っていくでしょう。
そして今度は仮想通貨を真摯に捉え、規制すべきは規制し、許可すべきことは許可するCFTCがこれまでとは違う動きを見せてくれるはずです。
今後の米国での仮想通貨市場の発展が、世界における仮想通貨の発展につながっていくことを期待しましょう。