ビットコイン法定通貨化のエルサルバドルでビットコイン債が審議に
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- 2022.11.24.
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2021年9月7日に世界で初めてビットコインを法定通貨に採用したエルサルバドルにおいて、2022年11月17日付けでビットコイン債を発行するための法案が議会に提出されました。
この法案は同国がビットコイン債を発行するのに必要な法整備をおこなうためのものとなります。
エルサルバドルではブケレ大統領が、ビットコイン債を発行することで資金調達を可能にし、ビットコインの買い増しやビットコインシティの建築にも着手したい考えを以前から表明していました。
このビットコイン債が可決される可能性はあるのでしょうか。
また可決されたとして、エルサルバドルや仮想通貨の世界においてどのような変化が起きるのでしょうか。
このニュースについて詳しくご説明しましょう。
エルサルバドル議会にデジタル証券に関する法案を提案
世界で初めてビットコインを法定通貨に定めたエルサルバドルの議会に対し、2022年11月23日にビットコイン債が発行できるようにするためのルールについての法案が提案されました。
画像引用:エルサルバドル法案
この法案が議会に提案されたのは2022年11月23日ですが、法案そのものは同年11月17日に提出されていたようです。
ビットコイン債とは
ビットコイン債はエルサルバドル政府が発行を予定しているもので、導入計画では10億ドル分の資金を調達すると予定されていました。
そしてその資金は、エルサルバドル国内のコルチャグア火山の麓にビットコインシティ建設のためと、ビットコイン購入にも活用するとされていました。
なおビットコインシティが火山の麓に建設を予定しているのは、火山の地熱エネルギーを利用することで、二酸化炭素の排出を抑えることを可能にしたマイニング施設にすることも構想されているからです。
またビットコインシティでは、税制面での優遇措置を実施することも構想されており、所得税や固定資産税、キャピタルゲイン、給与税を全てゼロにすることも発表されていました。
提出された法案について
この法案を提出したのはエルサルバドルのマリア・ルイサ・ハエムブレブ経済大臣で、法案そのものは全33ページにもわたっています。
法案の内容としては、ビットコイン債を発行するための法的な枠組みを作成するとともに、ビットコイン債の発行手順や発行者の義務、さらに監督する方法も含めて検討しなくてはならないことが記述されています。
この背景には、ビットコイン債を発行するにあたって、エルサルバドルの証券法などの法律を多項目にわたって改訂しなくてはならないことが挙げられます。
そしてビットコイン債発行の目的として10億ドルの調達、さらにその資金をもとにしてビットコインシティを建設する旨も記載されています。
再三のビットコイン債プロジェクトの延期
今回エルサルバドル議会に提出されたビットコイン債に関するプロジェクト法案は、これまで何度も延期されてきていました。
プロジェクト自体は2021年のビットコイン法定通貨化と同じタイミングで発表され、2022年3月にはスタートするはずでしたが、同年9月に延期されました。
しかしセキュリティ上の理由でさらにもう一度延期されていました。
つまり3度延期されていたわけです。
法案通過と実施時期
何度も延期されて提出されたビットコイン債法案ですが、法案が通過するまでにはどのぐらいの期間がかかるのでしょうか。
エルサルバドルのビットコイン法を定めたブケレ大統領派閥が、現議会においても過半数を占めていることから反対の動きになることは考えにくく、年末のクリスマス前には法案が承認されるのではないかという意見もあります。
ただし実際にビットコイン債が発行に至るにはクリアしなければならない幾つものハードルがあります。
前述したエルサルバドルの証券法を含めて、20ほどの法律を改訂しなければならないことは決して容易ではなく、発行時期は不透明だといえます。
ビットコイン債プロジェクト実施の効果予測
エルサルバドルが計画しているビットコイン債には幾つかの協力企業が存在しています。
仮想通貨テザー(USDT)を発行しているTether社もそのうちの一社で、CTO(最高技術責任者)であるパオロ・アルドイノ氏が、このビットコイン債が実施された際の効果についてツイートしています。
デジタル証券法により、エルサルバドルは中南米の金融センターになることができます。
引用:Paolo Ardoino Twitter Google翻訳
ビットコインを法定通貨にしたエルサルバドルの実情と今後
エルサルバドルが2021年9月7日にビットコインを法定通貨に定めてから、現在までで1年以上経過しています。
さらにビットコイン債発行のための法案を提出し、クリスマスまでに議会に承認される可能性があることを考え合わせれば、ビットコインシティの建築も夢ではないと受け止めるかもしれません。
しかし実際にはそれほど容易ではなさそうです。
ロイターが、ビットコインを法定通貨に定めて1年経過したエルサルバドルの実情を2022年9月10日に報じています。
画像引用:REUTERS
ロイターの記事によると、ビットコインが法定通貨に定められた当時、1BTCが47,000ドル付近だったのが、1年後の取材当時は19,770ドル付近にまで値下がりしていることで、投資家が関心を失っていること。
さらにビットコイン価格の下落が国の財政リスクをも高めてしまっていることを指摘しています。
また法定通貨に定められたビットコインが、企業や国民に普及していないことが明らかになりました。
エルサルバドルでは法律で、全ての企業がビットコインの受け入れを義務付けていますが、調査では20%ほどしか受け入れておらず、本国への送金にビットコインを利用したのも2%未満という結果になっています。
さらにビットコインシティ建設予定地では何の建設準備もされておらず、ジャングルのままであることも明らかになっています。
これらの状況はビットコイン価格が下落したことだけが原因とは言い難く、今後ビットコイン債に関する法案が議会を通過し、発行されたとしても、購入する投資家が存在するのでしょうか。
加えて、このような状況下でビットコインシティが建設までに至り、無事に稼働するのかどうかは不透明といえるでしょう。
まとめ
昨年にビットコインを法定通貨に定めたエルサルバドルで、ビットコイン債に関する法案が提出されたことに加えて、何度も延期されてきたことやエルサルバドルでのビットコインの実情などについてもご説明しました。
ビットコイン価格は現在低迷していますが、今後高騰していけばビットコイン債やビットコインシティも実現可能でしょうが、低迷が続いてしまうとエルサルバドルの財政自体が危うくなってしまいかねません。
ビットコイン価格が少しでも早く元の高値に戻ることが、エルサルバドルの将来を豊かにするためにも必須なのかもしれません。