中国は仮想通貨を認めつつあるのか?
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- 2019.09.22.
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- 中国は仮想通貨を認めつつあるのか?
仮想通貨取引をしている国の中で、一時は世界一の取引高であった中国では、2017年9月15日に国内にある全ての仮想通貨取引所に対して全面的に操業をストップするよう通告しました。
その後マイニングも規制されるなど、中国における仮想通貨取引は公的に認められないものになりましたが、中国のトレーダーたちは相対取引や中国政府がアクセスをブロックしていない海外の仮想通貨取引所で取引をしていました。
すなわち、規制を逃れながら仮想通貨取引は行われていたのです。
しかしここにきて、中国政府の仮想通貨に対する姿勢に変化が生じてきているようです。
その根拠を実例を挙げながらご説明しましょう。
中国政府代表がデジタル資産に柔軟な姿勢
2019年9月14日から18日の日程で、中国のブロックチェーン研究機関であるWanxiang Blockchain Labsによって開催されたブロックチェーン会議Shanghai International Blockchain Week 2019において、中国政府代表の一人である李礼輝(Li Lihui)氏が、デジタル資産に対して肯定的な意見を述べました。
李礼輝氏は元中国銀行総裁で、中国インターネット協会におけるブロックチェーン・ワーキンググループのリーダーです。
画像引用:blockchainlabs 左端が李礼輝氏
李礼輝氏の語ったこととは
李礼輝氏はこの会議の中で講演し、仮想通貨とは表現せず、一貫してデジタル資産と表現していました。
同氏はデジタル資産がデジタル金融において中核をなしていること、そしてデジタル化は保有している資産を多方面で使えるようにしてくれると述べました。
また資産をデジタル化することがデジタル金融のベースになるとも語っています。
この発言は、単なるブロックチェーン技術の研究者が語ったということではなく、李礼輝氏の置かれているポジション、すなわち元中国銀行総裁であり、現在の中国インターネット協会のワーキンググループリーダーであることを考えると、中国政府の考え方を表現していると理解できます。
仮想通貨と表現しなかったのは、仮想通貨取引やICOなどを規制している現状を踏まえてのことでしょうが、中国が経済基盤をデジタル化していくことに肯定的であることを示唆しています。
また李礼輝氏はフェイスブックの仮想通貨リブラに対しても言及しています。
リブラが承認されることになれば、リブラを発行している期間は信頼できるものだという証になっていく。
そんなリブラが金融基盤に広がることで多くの人々に浸透していくだけでなく、フィンテックの代表となるのではないかと語っています。
リブラに対するこの発言は、ホワイトペーパー発表後に多くの国の中央銀行や規制当局から非難を受けているリブラの現状とは大きく乖離しています。
また中国が独自の仮想通貨発行を考えていること。
そしてリブラがペッグするのは米ドルがメインであり、中国元を対象としていないことによって、リブラが流通すれば必然的に米国との経済的なかかわりが増えてしまうことからも、リブラに対しては否定的な発言が出るものと考えられていました。
これらの発言の意図を考えていくと、中国は仮想通貨を流通させることを真剣に考えているのではないかという結論に達するのです。
バイナンスの人民元OTC取引サービス
Shanghai International Blockchain Week 2019の講演で驚かされたのは、李礼輝氏の発言だけではありません。
今回の会議には大手仮想通貨取引所バイナンスの共同創設者であるHe Yi氏も出席しており、同氏の口からバイナンスが1ヶ月以内に人民元建てによるOTC取引サービスを実施すると発表されました。
画像引用:Yi He Twitter
He Yi氏の説明によると、今回の人民元建てOTC取引サービスはバイナンスの事業戦略であり、今後は中国に注力していく方針とのことでした。
人民元建てOCT取引きが実現すると、中国の仮想通貨トレーダーの大多数を取り込むことが可能になるでしょう。
それは中国が仮想通貨取引を禁止しており、海外の仮想通貨取引所にアクセスできないようになっていることが背景にあります。
中国のトレーダーがビットコインなどを取引する際には、VPN(仮想プライベート ネットワーク)を利用して匿名状態でアクセスするしかなく、しかも銀行から送金することができないため、テザーを取引ペアにするか、チャットなどを利用した闇のOTC取引しか方法がありませんでした。
つまり、これまで裏でコソコソと取引していたのが、バイナンスのOTC取引であれば堂々と取引することができるわけです。
仮想通貨取引を禁止している現在の中国においては画期的な出来事だといえます。
そしてもうひとつ、バイナンスの中国におけるOTC取引に関して画期的なことがあります。
それはこのOTC取引に関する発表を、中国政府が主催するShanghai International Blockchain Week 2019の場でおこなったということです。
中国政府は仮想通貨取引を禁止した際、公式な場において仮想通貨取引の宣伝を一切禁止しています。
そのためバイナンスも中国では一切宣伝活動にあたる行為は行っていません。
今回の会議が上海で開催されたために、厳密にいうと中国本土ではないといえます。
しかし仮想通貨取引を禁止している中国政府が主催する会議の場で発表できたということで、バイナンスと中国政府との間には何らかの特別なつながりがあるはずと推測されています。
そのつながりが何なのかは現時点で特定できていませんが、バイナンスと中国政府との関係は、他の仮想通貨取引所にできていない何かがあるはずです。
中国の仮想通貨に対する姿勢変化
最近の中国では裁判所が仮想通貨を資産として認める判決をだしたり、独自の仮想通貨発行を計画しており、ほぼその準備も整っていることを政府関係者が匂わす発言をするなど、仮想通貨に関するニュースが頻繁に報道されています。
それは禁止されているにもかかわらず、中国のトレーダーが闇OTCやテザーを使って取引をしていることも関係しているのかもしれませんが、もっと大きな要素としてはフェイスブックの仮想通貨リブラの影響があるのではないかといわれています。
一説によると、中国が計画している独自の仮想通貨はリブラをも上回る機能を持っているともいわれています。
だからこそ、リブラを否定しなかったのではないかとも考えられます。
中国政府が今度どのように仮想通貨と向き合っていくのかはもう少し様子を見てみなければ分かりませんが、これらの報道を見ている限りは、頑なに禁止していた少し前とは異なり、より柔軟な姿勢に変化してきていることは間違いないでしょう。
まとめ
中国の仮想通貨に対する姿勢が変化してきている現状について紹介いたしました。
中国は仮想通貨取引高が世界一だった時期があり、仮想通貨取引に対するトレーダーの意欲は潜在的にあることは間違いないでしょう。
これは、仮想通貨取引が禁止されているのにもかかわらず、VPNを利用したり、チャットを使ったOTC取引をするなど、抜け道を考え出して取引を継続させていることからも想像できます。
バイナンスの中国におけるOTC取引が、今後どのように仮想通貨市場に影響してくるかは不明ですが、中国の今後の動きには注意しておく必要があるでしょう。
そして中国の動きが、世の中に仮想通貨をより良い形で広げていく契機になることを期待したいものです。