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クレイグ・ライト氏が裁判所勧告に徹底抗戦へ

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  • 2019.08.30.

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クレイグ・ライト氏が、ビットコイン開発初期の頃にビジネスパートナーであった故ビッド・クレイマン氏の遺族から裁判を起こされ、裁判所の勧告通りに従う意向を示したものの、20万BTCが遺族によって売りに出される危険性を警告したことは、先日公開したニュース記事「クレイグ・ライト氏が20万BTCの売り可能性を警告」で紹介しました。

 

しかしここにきて、クレイグ・ライト氏が意向を覆し、裁判所の勧告に対して徹底的に抗戦する意向を、弁護士を通じて発表しました。

つまり、同氏の先日の20万BTCが売られる危険性に対する警告は、やはり悔し紛れの言葉だったとしか受け取ることはできません。

 

このニュースの詳細と、この裁判には仮想通貨業界の長年の疑問であったクレイグ・ライト氏がサトシ・ナカモトなのかをはっきりさせる側面があることも合わせてご説明しましょう。

 

クレイグ・ライト氏が勧告に徹底抗戦を宣言

ビットコインの開発初期の頃、故ビッド・クレイマン氏とともに共同マイニングをしていたクレイグ・ライト氏が、総額110万にものぼるBTCを、契約書を偽造して全てを自分のものにしていると故ビッド・クレイマン氏の親族から訴えられていました。

この裁判でフロリダ南部連邦裁判所は、2013年12月31日より前にクレイグ・ライト氏が保有していたBTC、そして知的財産の50%を親族に授与するように勧告しました。

 

この勧告に対し、クレイグ・ライト氏は弁護士を通じて裁判所の示した救済策は、自分が「情報を提供することができない状況」にあるにもかかわらず極端な判断がなされているため、今後も引き続いてできる限りの措置を講じるという内容を発表しました。

 

これはつまり、裁判所が示した勧告に対して徹底的に抗戦するという意味になります。

CRAIG WRIGHT

画像引用:CRAIG WRIGHT

 

親族側が起こした裁判について

故ビッド・クレイマン氏の親族は何を主張して裁判を起こしたのか、もう一度整理してみましょう。

 

クレイグ・ライト氏は故ビッド・クレイマン氏とともに、ビットコインの開発初期の頃に共同マイニングをしていました。

共同マイニングで発掘したビットコインはおよそ110万BTCだったといわれています。

しかし2013年4月にビッド・クレイマン氏が亡くなると、契約書を偽造して全てのビットコインと運営していた会社「W&K Info Defence Research」の経営権、そしてこれらに関する知的財産権も含めて自分のものにしてしまったと親族に主張されました。

 

8月26日に聴聞会の結果がでて、フロリダ南部連邦裁判所のブルース・ラインハート下級判事はクレイグ・ライト氏に対し、共同マイニングで得たビットコインの半分である55万BTC、そしてビットコインに関するソフトウェアの知的財産権も半分を支払うように勧告しました。

 

クレイグ氏のいう情報を提供できない状況とは

8月26日のブルース・ラインハート判事からの勧告は、今回の係争に関する証拠開示聴聞会における結論という位置づけのものでした。

 

つまり8月26日の前段階で、クレイグ・ライト氏は裁判所から過去にマイニングしたビットコインを保管してあるアドレスを提出するように指示されていました。

しかしクレイグ・ライト氏はそれを無効だと申し立て、提出しませんでした。

 

なぜ提出しなかったのか、クレイグ・ライト氏の弁によると、過去にマイニングしたビットコインの一覧を提出することは負担が大きすぎること、そしてこれらのビットコインのアドレスは分からず、しかも「Tulip Trust」というコードネームの信託資金とされているために同氏であっても2020年1月まで利用できないように設定されているとのことでした。

 

裁判所の判断と勧告にとどまった理由

クレイグ・ライト氏のビットコインアドレス提出への抗弁に対し、ブルース・ラインハート下級判事は事実としての裏付けにはならないと判断したようです。

そのために原告である故ビッド・クレイマン氏の親族の主張を全面的に認め、クレイグ・ライト氏に勧告をしたわけです。

 

しかしどうして裁判所命令でなく、勧告なのでしょうか。

また民事だけの判断で、刑事罰などに言及しないのでしょう。

もし契約書を偽造し、共同マイニングしたビットコインを独り占めしたのであれば、民事だけでは済まないはずです。

 

実は8月26日の勧告は、今回の係争における証拠開示聴聞会での結論に過ぎません。

つまり最終的に裁判が結審したのではなく、裁判の流れの中にある証拠についての聴聞会に対する見解だったということです。

 

すなわち、裁判所が調停をしてくれたとみるべきでしょう。

もしクレイグ・ライト氏が判所の勧告通りに55万BTCと知的財産権の半分を支払うことに納得していれば、親族側も納得し、訴訟を取り下げたかもしれません。

 

しかしクレイグ・ライト氏はこの勧告に従うつもりがなさそうですから、今後も係争は続き、色々な証拠に対する聴聞会が開かれていくはずです。

 

最終的な結審について

クレイグ・ライト氏に対する裁判は、今後も様々な手続きが必要であり、最終的な結審は2020年3月の最終審理が終わった後になると考えられています。

まだまだ裁判は続くということです。

 

Tulip Trustについて

クレイグ・ライト氏が過去に共同マイニングしたビットコインを保管してあるのは、「Tulip Trust」というコードネームの信託資金であると説明していましたが、「Tulip Trust」とはどのようなものなのでしょう。

 

Tulip Trustというコードネームは、故ビッド・クレイマン氏が生前に作成したPDFファイルの中に記述されています。

そのPDFファイルには、110万BTCを含んだ信託資金は亡くなったビッド・クレイマン氏が運用すると記されており、コードネームTulip Trustと名付けられているのです。

このPDFファイルはPGPによって署名されているため、署名を改ざんすることはできません。

 

特筆すべきことは、これほど大量のビットコインが1ヵ所に集められているのは他に類がなく、ブロックチェーン上でかなり以前から存在が認められていました。

また、これまで一度も移動されていないことも分かっています。

そしてこの110万BTCというビットコインの枚数は、サトシ・ナカモトのものではないかといわれてきた所有者が分からない資産とほぼ同じ規模のものなのです。

 

今後の裁判とサトシ・ナカモトの真偽

 

今後の裁判ではクレイグ・ライト氏が契約書を偽造したのかどうか、また同氏が敗訴したとすれば、今回裁判所が勧告したように55万BTCを引き渡す命令が出るのか、そしてその際に本当に引き渡すことができるのかどうかが注目されています。

 

またこれまでクレイグ・ライト氏は、自分がビットコインの生みの親であるサトシ・ナカモトだと主張していました。

もしクレイグ・ライト氏がサトシ・ナカモトであるなら、Tulip Trustに信託された110万BTCの半分の55万BTCを引き渡すことは可能なはずです。

そして同氏の説明通り2020年1月になれば利用できるのであれば、裁判の最終審理は2020年3月であるため、引き渡しに障害はないでしょう

 

つまりこの裁判は、クレイグ・ライト氏と故ビッド・クレイマン氏の親族との争いだけでなく、クレイグ・ライト氏がサトシ・ナカモトなのかどうかを確かめることができる裁判でもあるのです。

 

まとめ

クレイグ・ライト氏が裁判所の勧告に従わず、徹底抗戦する構えであることをご説明しました。

 

裁判の行方次第で、クレイグ・ライト氏から55万BTCを受け取る故ビッド・クレイマン氏の親族が、遺産税支払いのために40%のビットコインを一気に売ってしまう可能性もあります。

また裁判の結果は、長年の疑問であった、クレイグ・ライト氏のサトシ・ナカモト説が正しいのかどうかもはっきりさせてくれるでしょう。

裁判の今後から目が離せません。

 

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