韓国のほとんどの仮想通貨取引所が破綻寸前か?
- 仮想通貨関連
- 2019.08.24.
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- 韓国のほとんどの仮想通貨取引所が破綻寸前か?
韓国の仮想通貨取引所のほとんどが取引量の減少によって破綻寸前であると、韓国Business Koreaが報じました。
韓国の仮想通貨取引量は、2017年末には全世界の取引量のうちおよそ20%を占めていた仮想通貨大国でしたが、2018年以降には韓国内の仮想通貨取引所で閉鎖や海外への移転が相次いでいます。
どうしてこのような事態に陥っているのでしょうか。
また韓国の仮想通貨取引事情とはどのようなものなのでしょうか。
詳しくご説明しましょう。
韓国の多数の仮想通貨取引所に破綻の危機
韓国では近年、仮想通貨の取引高が減少しており、韓国国内のブロックチェーンプロジェクトが海外の仮想通貨取引所で上場するなど、海外に流出しつつあることを韓国メディアであるBusiness Koreaが報じました。
またプロジェクトの中には当初、韓国で上場する予定であったにもかかわらず、実際には海外の仮想通貨取引所での上場を目指したり、最初から海外の仮想通貨取引所に上場することを目標にしているものも見受けられると報じています。
画像引用:Business Korea news
韓国のプロジェクトが海外を目標にする理由
ではどうして韓国の仮想通貨プロジェクトが海外に移転し、海外での上場を目指さなくてはならないのでしょう。
韓国の仮想通貨市場でいったい何が起こっているのでしょうか。
その原因となった実名登録システムについて説明しましょう。
実名登録システムの施行
韓国では2018年1月30日から実名登録システムを施行し、匿名で仮想通貨取引をすることを禁止しました。
そのため、仮想通貨取引所と取引するための銀行口座には実名を用いることが義務付けられました。
これは仮想通貨取引に透明性を持たせることでマネーロンダリングを防ぐための施策でしたが、銀行6行が実名登録システムを導入したものの、実際に稼働させているのはそのうちの新韓銀行と農協銀行、そしてIBKの3行のみという状態になっています。
しかもこの3行は、韓国にある全ての仮想通貨取引所の口座に対して稼働させているのではなく、UpbitとBithumb、Coinone、Kobitの韓国の4大仮想通貨取引所だけにしか対応していません。
これ以外の仮想通貨取引所に対しては放置状態になっています。
画像引用:Upbit
実名登録システム施行の困難さ
実名登録システムを銀行が稼働させている4つの大手仮想通貨取引所であるUpbitとBithumb、Coinone、Kobitでも、実際には全ての顧客の実名登録ができているわけではありません。
税金面での不安を感じた投資家たちは銀行口座の実名登録を拒否しており、政府が当初予定した通りに進んでいるわけではありません。
このような状況に加え、実名登録システムを逆手に取ったケースとして、実名登録した口座を他人に譲渡している場合もあるようです。
こうすれば、税金面での不安はなくなるというわけです。
実名登録システムの障害にもなる銀行
このままでは実名登録システムを施行した意味がなくなるため、日本でいえば金融庁にあたる韓国金融監督院がシステムを稼働させていない銀行に対して稼働要請をしていますが、銀行側は応じておらず、仮想通貨取引所の口座を扱っていない状態になっています。
銀行が実名登録システムを稼働させるかどうかは銀行側の経営的判断であり、仮想通貨取引所の口座を扱わないことは法令に違反しているわけでもありません。
また無理に仮想通貨取引所の口座を扱うよう強制する権限は、韓国金融監督院にもありません。
韓国金融監督院は、仮想通貨取引に透明性があり、マネーロンダリングがおこなわなければそれで良いわけです。
悪循環を作り出した実名登録
高い理想を掲げた実名登録システムがうまく機能していない理由について説明しました。
つまり韓国においてはUpbitとBithumb、Coinone、Kobitの4大仮想通貨取引所でしか口座が作れない状況になってしまっており、これ以外の仮想通貨取引所は新規口座を獲得することができないわけです。
またこれら4つの仮想通貨取引所を利用しようとしても実名登録しなければならず、実名登録してしまうと税金面での不安が生じてきます。
これらのことから韓国の投資家たちは韓国国内の仮想通貨取引所を利用しにくくなり、海外の仮想通貨取引所を利用する人や、中には仮想通貨の取引そのものを止めてしまう人もいるようです。
実名登録システムが悪循環を生み出してしまったわけです。
苦戦する韓国の仮想通貨取引所
実名登録システムを導入したことで悪循環が生まれてしまい、韓国全体の仮想通貨取引高は大きく減少してしまいました。
現在、世界の取引高ランキングに名前が挙がる韓国の取引所は大手の5、6社程度に限定されてしまっており、これ以外の中小の仮想通貨取引所はどこも大変苦戦しています。
その中でも、仮想通貨取引所Prixbitは経営状態の悪化に伴って、2019年8月9日に仮想通貨取引サービスを停止せざるを得なくなりました。
また韓国の仮想通貨取引所の97%に破綻の危機があるともいわれています。
これらのことから韓国のブロックチェーンプロジェクトが新たな市場を求めて海外に流出するとともに、取引所の移転などが増えているわけです。
この状況を商機ととらえる企業も
非常に厳しい韓国の仮想通貨市場ですが、この環境を商機ととらえている企業もあります。
それが海外の仮想通貨取引所です。
海外の仮想通貨取引所は、新たな市場を求めて流出してきた仮想通貨プロジェクトを受け入れることで、韓国ウォンでのマーケットを展開できるようになります。
もちろん新たな仮想通貨を上場させることで取引高を大きくすることもできます。
同時に、韓国内で取引きしづらい投資家を新規顧客として受け入れることもできるため、利用者と取引高の拡大につないでいくことができるわけです。
これ以外にも、海外の仮想通貨取引所が新たな市場として韓国に参入してくるケースもあります。
これは韓国で新たな顧客を獲得することを目的とするよりも、韓国のブロックチェーンプロジェクトのスタートアップに対して存在感をアピールして、取り込むことに主眼を置いていると思われます。
まとめ
韓国における仮想通貨取引所の厳しい現実について紹介しました。
元々韓国には仮想通貨取引に関心が高い投資家が多く、それゆえに2017年末に世界での仮想通貨取引高が20%にも達していました。
つまり仮想通貨市場の基礎ともいえる、仮想通貨への投資意欲は十分備えている国のはずです。
しかしその投資意欲を阻害しているのは実名登録制度であり、銀行の取り組み姿勢です。
これらに対する打開策を見つけ出さない限り、韓国の仮想通貨市場はますます限定的なものとなってしまいかねません。
それには韓国政府のかじ取りが非常に重要になってきます。
また世界的な動きでもある、仮想通貨に対する規制の枠組み作りがどう進み、どんな規制内容になっていくのかも、政府の方針に大きく影響してくるはずです。
韓国政府の今後の取り組みに期待するとともに、一刻も早い世界的な規制の枠組み作りにも期待したいところです。