仮想通貨開発の動きを見せる中国中央銀行
- 仮想通貨関連
- 2019.08.06.
- ニュース
- 仮想通貨開発の動きを見せる中国中央銀行
仮想通貨のマイニングやICOを禁止している中国で、中央銀行にあたる中国人民銀行が独自の仮想通貨発行を視野に入れて動いていることが分かりました。
実際に発行すると発表されているわけではありませんが、世界中がフェイスブックの仮想通貨リブラを含めて大きな動きを示している中で、改めて仮想通貨の可能性を探ろうとしているようです。
このニュースについての詳細と、これまでの中国の仮想通貨に対する姿勢や現状などについてご説明しましょう。
中国人民銀行が独自仮想通貨開発を視野に
2019年8月2日に開催されたビデオ会議において、中国人民銀行の党委員会メンバーであるChen Yulu氏が会議の最後のスピーチの中で、中国の法定デジタル通貨について言及しました。
画像引用:中国人民銀行
スピーチでは詳細まで述べられていませんでしたが、法定デジタル通貨の開発加速だけでなく、国内外での仮想通貨開発動向の追跡と研究、そしてインターネット金融におけるリスクの改善強化を進めていくことと明確に述べています。
つまり中国独自の仮想通貨の開発をすすめながら、世界でどのような仮想通貨の開発が進んでいるかを調べるとともに、リスクを回避できるようにしていくと述べているわけです。
以前から仮想通貨に関心を寄せていた中国
実は中国は以前から仮想通貨に対して関心を寄せていました。
特にFacebookの仮想通貨リブラに対する関心は大きいようです。
2019年7月8日付けの中国地元メディア「South China Morning Post」によると、北京大学デジタルファイナンス研究所のカンファレンスにおいて、中国人民銀行調査局代表であるWang Xin氏がリブラに対して以下のように述べていると報道されています。
Libraは潜在的に中国の国境を越えた支払い、金融政策、さらには金融の主権にさえ挑戦をもたらす可能性があるため、Facebookが独自の暗号通貨を作成する計画は、中国の中央銀行が独自のデジタル通貨の作成に関する研究を強化することを余儀なくした。
リブラが決済で広く使われ、特に国際決済で普も普通のお金として機能し得るのか。
また機能したとするならば、金融政策や財政の安定、国際通貨制度に大きな影響を与えられるのか。
引用:South China Morning PostをGoogle翻訳
すなわち、リブラが中国の金融政策と金融の安定性に大きな影響を与える可能性があると考えているため、2014年から中国政府がデジタル通貨に対して進めていた研究を加速させ、リサーチから開発段階に移行せざるを得ないと考えているのです。
この発言は、2019年の中国人民銀行にとって、デジタル通貨への取り組みが単なるリサーチだけで終わるものではなく、実施を視野に入れたプロジェクトになったということを示唆しています。
4大銀行のひとつがビットコインについて解説
仮想通貨に対する規制が厳しい中国において、2019年7月26日、中国の4大銀行のひとつである中国銀行が、websiteにおいてビットコインの基本的な知識や歴史、価格の推移などについての解説を掲載しました。
画像引用:中国銀行
この中には、仮想通貨に投資するリスクやグローバルな決済手段となりえること、そして仮想通貨リブラに付いても説明されています。
中国の中央銀行である中国人民銀行が掲載したものではないにしても、国営である4大銀行のひとつが仮想通貨に対する解説を掲載することは、厳しい規制が敷かれている中国では珍しいことです。
この背景には、仮想通貨に対する何らかの意図があるのか、もしくは仮想通貨に対する考え方の変化があるのではないかとも推測されています。
人民元が仮想通貨になる可能性を指摘
中国の人民元は、将来的に仮想通貨のみになるだろうと指摘している人物がいます。
それがブロックチェーン研究所(BRI)の設立者であり、会長でもあるDon Tapscott氏です。
画像引用:Don Tapscott website
彼は中国を歴訪した際、習近平氏がブロックチェーン技術は将来の中国にとって大切な技術だと感じており、そのことから将来的に中国の人民元は仮想通貨になるはずだと述べています。
習近平氏がDon Tapscott氏に対して具体的に人民元の仮想通貨化を述べたわけではないため、人民元仮想通貨説の真偽は不明ですが、Don Tapscott氏と同じ説は何人ものブロックチェーン技術や仮想通貨に関する有識者が語っています。
中国での仮想通貨に対する規制
中国での独自仮想通貨発行に関する色々な情報をご紹介しましたが、現在中国では仮想通貨取引は禁止されています。
はたして現状の厳しい規制から、一気に独自仮想通貨発行にまで至るのでしょうか。
中国の仮想通貨規制の現状についてご説明しましょう。
仮想通貨大規模取引とICOを規制
2013年から2017年頃までの中国は、仮想通貨の取引量で世界一位でした。
特に株式よりも資金調達しやすいICOがブームとなりますが、ブームが過熱し始めるとICOを騙った詐欺が横行し、ネズミ講のようなものまで登場し始めます。
また仮想通貨取引によって中国の法定通貨である人民元が流出することを恐れた中国政府は、仮想通貨取引とICOを禁止しました。
しかもICOに関しては、すでに調達した資金は全て投資家に返却するよう通達しています。
なおこの通達通りに実行しなければ、厳罰があることまで付け加えられていました。
マイニングと仮想通貨取引所
中国政府の仮想通貨規制によって、仮想通貨を発掘するマイニングは実質不可能となったため、海外に移転する動きとなりました。
また中国で大きな取引量を誇っていた仮想通貨取引所も、香港へ移転するケースが多く見られました。
香港において、ICO企業のライセンスは申請すれば所得可能だったからです。
仮想通貨取引をしている人なら誰でも知っているBinanceやHuobi、BitMEXなどの大手取引所も香港を拠点として運営されています。
中国での仮想通貨取引の現状
このような仮想通貨規制が敷かれている中国において、仮想通貨取引はできるのでしょうか。
実は公にはできないものの、購入する方法はあるのです。
この方法は2018年9月8日、South China Morning Postによって報道されましたが、プライベートネットワーク(VPN)を利用すれば、ステーブルコインであるTether(USDT)を使ってビットコインなどの仮想通貨を購入することが可能になります。
政府の規制を逃れて仮想通貨取引をするには、このような地下取引をするしか方法はないということです。
規制しづらくなってきた仮想通貨
このように中国では仮想通貨に対して厳しい規制がありますが、規制するからこそ取引は地下に潜り、犯罪に利用されやすい環境になってしまいます。
これはもちろんマネーロンダリングに利用されやすいだけでなく、一般の投資家も危険性が増すということです。
また2019年7月には中国の杭州インターネット裁判所において、仮想通貨が財産としての権利が存在していることを認める判決を下しています。
そしてG20やG7などでもFacebookの仮想通貨リブラをテーマにして協議されるほど、仮想通貨は無視できない存在になりつつあります。
つまり中国としても、仮想通貨をいつまでも規制し続けることができない状況になってきているというわけです。
まとめ
中国の仮想通貨に対する規制は、現実とそぐわないものになりつつあります。
かと言って、以前から噂されているように、中国が仮想通貨を全面解禁するという説も信ぴょう性は薄いようです。
今回ご説明した中国の独自仮想通貨が、仮に人民元の代わりになるものだとすれば、世界でも初めての試みとなりますが、もし独自仮想通貨を発行するとしても、投資家が飛びつくビットコインのようなボラティリティの大きな仮想通貨まで解禁に至るかどうかは不明です。
しかし中国で以前のように仮想通貨取引が全面解禁されたとしたら、仮想通貨全体の取引量は大きくなり、このニュースだけでビットコイン価格は大きく上昇することは間違いないでしょう。
仮想通貨の今後に大きく影響するのは仮想通貨リブラではなく、中国の動向なのかもしれません。