CFTC(米商品先物取引委員会)の新会長としてHeath Tarbert氏が就任
- 仮想通貨関連
- 2019.07.17.
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画像引用:CTFC PressRoom
米国CFTC(米商品先物取引委員会)の新しい会長としてHeath Tarbert氏が就任し、米時間の7月15日から新体制でスタートしました。
前会長であったGiancarlo氏は今年の4月で退任していましたが、移行期間として監督する立場に就いていました。
これでGiancarlo氏はCFTCから完全に離れることになるわけですが、これまで示してきた氏の仮想通貨に対する言動は、クリプトの父と呼ばれるほど肯定的でした。
新会長のHeath Tarbert氏は、仮想通貨に対してどのような主張をするのかに注目が集まっています。
米国CFTCとは
CFTC(米商品先物取引委員会)は米国の米商品先物取引委員会法によって設立されました。
設立は1974年で、米国大統領直轄の政府機関として位置づけられています。
CFTCは米国内における先物取引についての認可権を持っており、商品取引の際の商品や金利、デリバディブなどについて不正がないよう監督・監視しています。
特に近年の先物取引ではコンピュータープログラムが導入されており、相場が激しく動いた時にでも操作された相場ではないかを監視することもあります。
なお拠点が米国にある先物取引業者の場合は、CFTCに登録しなければならない義務があるなど、米国における先物取引に対して絶対的な発言力を有する機関といえます。
仮想通貨に肯定的だったGiancarlo前会長
CFTCは本来、デリバディブ取引など仮想通貨の取引に対しては監督・監視し、規制する立場の機関です。
しかしGiancarlo前会長は、仮想通貨やその基本となるブロックチェーンなどに対して干渉しない重要さを訴えていました。
ほとんどの政府機関が仮想通貨に懐疑的姿勢を示すなか、仮想通貨に対して肯定的な発言やツイートを繰り返していたために、「クリプトの父」とも呼ばれていました。
そんなGiancarlo前会長の過去の発言例を幾つかご紹介しましょう。
画像引用:Bloomberg
2018年2月 SECとの暗号通信に関する会議
ブロックチェーン技術は今後、金融機関だけでなく、様々な機関でその恩恵を受けられる可能性があると発言しています。
2018年7月25日 聴聞会
この聴聞会ではすでに稼働していたCFTCの研究機関であるLabCFTCは、今後何を目標としていくのかが話し合われました。
この時Giancarlo前会長はLabCFTCについて、重要なのは革新的技術であるブロックチェーンを理解して、規制を対応させていくことだと述べています。
つまり、仮想通貨の基本的技術であるブロックチェーンを積極的に理解していくことを示したわけです。
そればかりか、代理店とイノベーターとが情報共有する過程において、ブロックチェーンを用いたいと考えていること、そして4年後の導入と事前テストの実施など、具体的な計画を説明していました。
2019年3月14日 国際未来産業カンファレンス
この会場でのスピーチでGiancarlo前会長は、今日の金融市場を変えるのはブロックチェーン技術と仮想通貨であると述べました。
また2017年に設立したLabCFTCは政府機関や規制機関にブロックチェーンの技術革新を説明するとともに、この技術をこれらの機関に採用することを促すためのものだと発言しています。
そのためにLabCFTCはブロックチェーン技術を学ぶだけでなく、これを採用しようとしている外部組織に対しても提供していく旨まで発言しました。
2019年5月 SECおよびCFTC における2020年度予算ヒアリング
米の金融規制当局であるSEC(証券取引委員会)とCFTCの2020年度予算についてのヒアリング公聴会の席上、Giancarlo前会長はブロックチェーン技術についてサードパーティが必要とされておらず、すでにプロジェクトは進んでいる。
規制する側である当局はブロックチェーンについてのリテラシーが必要であるにもかかわらず、現在は知識が欠如していると述べました。
また提示した予算は、CFTCが独自に市場データとブロックチェーンネットワークの分析や研究を展開するために必要なものと説明しています。
このヒアリングにはSECのJay Clayton長官も出席していましたが、彼は仮想通貨がリスクの高い投資商品であると位置づけていると述べています。
ただし仮想通貨に警戒してはいるが、ブロックチェーン業界に関する知識は重要であることから、ブロックチェーンの専門家を募集していることも説明しています。
今公聴会でCFTCのGiancarlo前会長は、これまでの仮想通貨に対する肯定的な姿勢と同様の発言をしていますが、SECのJay Clayton長官は仮想通貨に対して慎重な考えであることが読み取れます。
Heath Tarbert氏の新会長就任までの経緯
Heath Tarbert新会長はメリーランド州ボルチモアの出身で、リベラルアーツ大学で学士号を取得後、ロースクールで法学博士も取得しています。
その後、法律事務所を経て米政府の司法書記官として勤務しています。
ブッシュ政権の最後の1年では大統領の准顧問となり、オバマ政権でも大統領を支えてきました。
2017年4月にトランプ大統領によって国際市場開発担当の財務次官補に指名され、その後、世界銀行グループで役員を務めています。
財務省任期中には金融市場を規制する国際機関において米国代表になるなど、国際金融分野での規制に関しては精通している人物といえます。
そして2019年6月、上院議会の公聴会においてHeath Tarbert氏がCFTCの新会長として正式に承認され、今日に至ります。
Heath Tarber新会長の仮想通貨に対する姿勢
CFTC がHeath Tarbert新会長体制となり、仮想通貨に対する姿勢は変化するのでしょうか。
実はHeath Tarbert新会長は、仮想通貨やブロックチェーン技術に対する見解を述べていません。
Giancarlo体制時のCFTCは、ブロックチェーン技術などの革新的技術を阻害しない規制を確立することが重要であるとの見解を示してきました。
またGiancarlo前会長は会長交代が決まった際、以下のようなコメントを出しています。
私が勤務している間は、CFTCを今日のデジタル市場向けの21世紀の規制当局に変えることが最優先事項でした。 ターバート博士の承認を得て、私はこの機関がこの移行を継続するのに安全な手元にあることを知っています。
引用元:CFTC PressRoom を翻訳
つまりGiancarlo前会長は、Heath Tarbert新会長はこれまでの仮想通貨やブロックチェーン技術を肯定する路線を継続すると述べているのです。
またCFTCに3人いる他のコミッショナーも、これまで仮想通貨に対して否定的なコメントは発言していません。
例えば、Dan Berkovitz氏はトランプ大統領によってCFTCコミッショナーに任命されましたが、彼も仮想通貨やブロックチェーン技術に対しては肯定的なスタンスを取っており、革新的な技術を阻害するつもりはなく、不正が規制の対象であることを主張しています。
画像引用:BLOCKTV NEWS
トランプ大統領の影響は?
Giancarlo前会長のコメントやDan Berkovitz氏のインタビューなどを見ている限り、Heath Tarbert新会長はこれまでのCFTCの仮想通貨肯定路線を継続するのではないかと思われます。
しかし両氏とかかわりの深いトランプ大統領の存在が、その予想に影響しそうな雲行きです。
トランプ大統領は7月11日に自らTwitterに仮想通貨に関する書き込みをしました。
その内容は、自分自身が仮想通貨のファンではなく、仮想通貨の価値に関しても変動が激しくて根拠になるものがない。
また不法な行為を容易にしうるものだと批判しています。
このツイートが書き込まれた日は、ホワイトハウスでソーシャルメディアサミットが開かれており、その参加者は保守系シンクタンクであったことから、それに影響されて書き込んだことも考えられます。
またサミットでは仮想通貨リブラについても話し合われたことが推察され、このことが仮想通貨に対するネガティブな書き込みにつながった可能性もあります。
トランプ大統領のTwitterは、とても大統領とは思えない書き込みで話題になることが多いですが、もしこのTwitter通り、仮想通貨に否定的になっていたとしたら、大統領とかかわりの深いHeath Tarbert新会長は今後どのような方針を打ち出すのでしょうか。
Heath Tarbert新会長の今後の発言に注目する必要があるようです。