仮想通貨リブラを巡る世の中の反応
- 考察
- 2019.07.05.
- 仮想通貨FXブログ
- 仮想通貨リブラを巡る世の中の反応
米フェイスブック(Facebook)がホワイトペーパーを発表した仮想通貨リブラに対する反響は非常に大きく、世界中のあちこちで大きな議論が巻き起こっています。
まだホワイトペーパーが発表されただけにもかかわらず、仮想通貨リブラを法律で禁止する国もあると報道されるなど、逆風は大きいようです。
そこで仮想通貨リブラに対する反応をピックアップし、世の中の反応をまとめてみました。
仮想通貨リブラの特徴
米フェイスブックが発表した仮想通貨リブラの最も大きな特徴は、投資を主たる目的とするものではなく、通貨として機能させることに主眼を置いていることです。
そのためリブラはステーブルコインとして開発されています。
しかも一種類の法定通貨ではなく、何種類かの法定通貨や何か国かの国債を裏付け資産にしているのも大きな特徴です。
また米フェイスブックはリブラを運用するリブラ協会を設立したものの、フェイスブックではなく子会社のカリブラが協会に参画することで、自社の影響力が及ばないよう考慮しています。
なおリブラ協会にはmastercardやVISAなどの決算会社や仮想通貨取引所を含めた複数の企業が参加し、リブラの運用利益はこの協会の運営とリブラの開発に充てる考えです。
子会社カリブラからは専用のウォレットアプリもリリースされ、セキュリティを高めるためのアカウントもフェイスブックなどとは異なる専用のものを用意するとしています。
これ以外にも、送金などをしやすくするため、これまでの仮想通貨よりも送金手数料を低く設定することを明言しています。
銀行や金融政策関連機関からの反応
仮想通貨リブラに備わっている送金の迅速さと手数料の安さは、銀行からの送金の比ではありません。
例えば日本国内から海外の個人宛に送金しようとすると、手数料がかなりかかってしまうだけでなく、着金までに時間も数日必要になります。
しかもそれは相手が銀行口座を持っている場合しか送金できません。
海外では銀行口座を持たない人も多く、その場合には仮想通貨による送金が多く利用されています。
仮想通貨リブラを使えば、送金後まもなく相手の個人アドレスに着金します。
しかも銀行口座ではなく、相手の個人アドレスに着金するのですから、銀行は不要になってしまいます。
そのためか、銀行を含む金融政策関係者からのリブラに対する反応はあまり良いものとはいえません。
オーストラリア準備銀行はLibraに対して、現実味がないと反応しています。
フランスのBruno Le Maire経済財務大臣は、リブラを伝統通貨の代わりにすることは論外だと述べ、欧州議会Markus Ferber議員はリブラがシャドーバンクになる危険性について言及しています。
また、米上院銀行委員会委員であるSherrod Brown議員は、フェイスブックからの個人情報流出なども示唆しながら、フェイスブックは非常に巨大であり、その力によって個人情報を食い物にしていると批判しています。
米下院金融サービス委員会のMaxine Waters委員長は、仮想通貨を審議する議会や規制する部署がしっかりと精査するまでの間は、計画そのものを保留すべきと述べています。
そして仮想通貨規制そのものに対しても、現在の仮想通貨マーケットには投資家や消費者、経済を保護する仕組みが欠けていること。
また、フェイスブックがこれらの課題を持ったまま参入してくることを、個人のプライバシーや国家の安全、サイバーセキュリティ面などに問題があることを気付く目覚まし時計にすべきだという趣旨も発言しています。
米上院銀行委員会は、仮想通貨リブラと関連した個人情報保護に関して7月16日に公聴会を実施することを決めています。
公聴会の実施はリブラに対してのことだけでなく、フェイスブックの個人情報の扱いについて以前から問題視しており、リブラに対しても同様の問題意識を持っているようです。
規制の重要性を訴える声もある
上記のように、仮想通貨リブラに対してはあまり良くない反応が多く見られますが、それとは若干異なる反応もあります。
例えばFRB(米連邦準備理事会)のパウエル議長はリブラの有用性は認めつつも、リスクもあると指摘するとともに、仮想通貨がFRBの金融政策に影響することは懸念していないと発言しています。
またイングランド銀行総裁のカーニー氏もリブラに対して、高基準の規制が必要だと発言しています。
これらの意見は、リブラの有用性は認めているものの、運用に際してはフェイスブックのホワイトペーパー通りではなく、何らかの規制が必要だと認識しているわけです。
フェイスブック共同設立者の懸念
画像引用:Reuters
大学時代にマーク・ザッカーバーグと出会って、共にフェイスブックを設立したクリス・ヒューズ氏は、仮想通貨リブラに対して懸念を持っているようです。
その懸念とは、仮想通貨リブラが大企業だけに有利に働くものになるのではないかというものです。
その理由として、以下の趣旨を述べています。
リブラがホワイトペーパー通りに運用されたとすると、世界中の数億にも及ぶ人々が簡単に国境を越えて送金することができるようになります。
リブラは複数の法定通貨を裏付け資産にしているため、送金されたリブラを受け取った人々は、自国の通貨が不安定だと感じたら、ドルやユーロなどの法定通貨に換金するようになります。
このコントロールを国ではなく、リブラ協会に加盟している大企業がおこなうわけですから、国は混乱と弱体化が進むでしょう。
また、多くの人々が自国の通貨から安定感のある通貨に交換することが進めば、新興国にとって重要な通貨供給量や為替の管理、資本規制をも脅かしてしまうかもしれません。
クリス・ヒューズ氏の懸念は、例えばギリシャのように国が通貨をコントロールできなくなり、経済に大きなダメージを与えてしまうことを想定しているようです。
指摘されているフェイスブックの思惑
仮想通貨リブラに対する意見というより、フェイスブックのリブラを使った思惑を指摘する声も存在しています。
フェイスブックは、2018年9月におよそ5,000万人のユーザー情報が流出していることが明らかになっています。
これに端を発し、フェイスブックの個人情報保護方法について当局から調査を受けています。
またこれらのことから、フェイスブックは事業そのものを続けるべきではないという意見もあるほどです。
フェイスブックもこれらの批判意見の存在を十分理解しているため、個人情報を扱うことになる仮想通貨リブラの運用をリブラ協会に任せる形をとっているといわれています。
しかもフェイスブックがリブラ協会の主要メンバーになるのではなく、子会社のカリブラを参加させているのも批判から逃れるためだと指摘されています。
またリブラ協会にVISAやMasterCardなどの大手決済企業だけでなく、自動車配信アプリUberを提供しているウーバー・テクノロジーズ、世界最大手の音楽配信サービスSpotifyを提供するスポティファイ・テクノロジーなど、世界に名だたる大企業が参加しているのも、リブラの実現性の高さと影響力の大きさを実感させるとともに、フェイスブックへの批判をかわす狙いがあるようだといわれています。
加えて、リブラ協会が米国ではなくスイスに拠点を置くのも、スイスが米国よりも仮想通貨に好意的であることを利用しているからとの指摘もあります。
リブラのペグ設定による知られざる影響
仮想通貨リブラはステーブルコインとして開発されますが、裏付け資産とされるのは単一の法定通貨ではありません。
米ドルやユーロだけでなく、複数の法定通貨や複数の国債にペグ、つまり裏付け資産としています。
これによってリブラの信頼度は高まるでしょうが、リブラを購入するということは、これらの法定通貨を銀行に預金していた場合の金利を放棄するということでもあります。
これは銀行に資産を預け、金利で資産を増やしていく資産運用とは真逆の行動であり、このことについて、フェイスブックは一切触れていません。
また、ステーブルコインは特定の法定通貨と1:1で換金できることが信頼性を高める要素でもありますが、仮想通貨リブラは複数の法定通貨や国債にペグしているため、どの通貨や国債でも1:1で換金できるのかがはっきりしません。
その一方で、どの通貨とも1:1で換金できるとすれば、誰でも安定度が高い通貨、例えば米ドルに換金したいと考えるのが普通でしょう。
全てのリブラ購入者が米ドルに換金し始めたとすると、新興国の通貨は見向きもされなくなってしまうだけでなく、世界経済は混乱してしまいます。
このことに関してもフェイスブックは見解を明らかにしていません。
まとめ
フェイスブックの仮想通貨リブラは、まだホワイトペーパーが発表されただけであり、具体的な進展はありません。
そのような状況であるにもかかわらず、これだけの大きな声があちこちから聞こえてくるのは、ファイスブックの影響力の大きさや仮想通貨リブラ構想の新しさゆえでしょう。
説明した通り、リブラに対する反応はフェイスブックに対する危惧とリブラに対する危惧が混在しています。
また銀行などのように、今の立場を守りたいゆえの発言や反発心もあるでしょう。
純粋に自国の将来や世界経済を心配しての発言もあるはずです。
仮想通貨リブラが今後どうなっていくのか、将来的な姿はまだ明確に見えているわけではありませんが、従来にない画期的な新しいものが登場する時には、多かれ少なかれ反発や紆余曲折があるものです。
しかしそれが世の中にとって本当に必要なものでああれば、おのずと受け入れられるようになっていくのではないでしょうか。
仮想通貨リブラの今後がどうなるか、また世の中がどう変わっていくのか、行く末を見守りましょう。