米ナスダックが支援する取引所Bcauseが仮想通貨市場に参入
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- 2019.05.03.
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- 米ナスダックが支援する取引所Bcauseが仮想通貨市場に参入
アメリカの最大手証券取引所であるナスダックが、仮想通貨取引所Bcauseに対して技術提供を行う旨を発表しました。
2019年上半期にはローンチの計画があり、歴史のあるナスダックが金融フレームワークを実装した形の取引所になることが予定されています。
ナスダックと言えばすぐに株式市場を思い浮かべるほど、世界の超最大手証券取引所が仮想通貨市場に参入するニュースを聞いて、仮想通貨の投資家たちも大きな期待を寄せています。
具体的には、市場操作のような不正行為を防止する点での期待が高まっているようです。
スプーフィングのような、取引を完了する前にキャンセルをする行為を取り締まったり、ある通貨の価値が大幅に増減した場合に発動する「売買停止措置」のルールを決めて運用したりと、株式市場で培ったノウハウを応用できれば仮想通貨の信用性は高まります。
また、匿名性の高い現状を一部改善し、既存の規制内容でできることを応用して適用するという、監督機能の強化も市場から要請されることが予想されます。
ナスダック・Bcauseのタッグが新しい仕組みを作り出したとき、仮想通貨の新しい未来が開けるかもしれません。
今回は、仮想通貨の未来に大きく影響する、ナスダックの仮想通貨市場参入について掘り下げます。
今さらだけどナスダックってどういう組織?
仮想通貨の取引から投資を本格的に始めた人の中には、ナスダックについて名称は知っていても、細かい部分は知らないまま取引を続けているという方も多いと思います。
テレビ・ラジオのニュースなどで指数に関するレポートは聞いたことがあるかもしれませんが、日本でその実態を知る人は、おそらく株式投資や投資信託を行っているような一部の人に限られることでしょう。
そこで、簡単にナスダックについてご説明します。
ナスダック(NASDAQ)とは、全米証券業協会が1971年に開設したベンチャー向け株式市場であり、その規模は世界最大レベルです。
インターネットや情報技術と相性がよく、電子株式市場としては50年近い歴史を誇る市場です。
経済ニュースなどで紹介される「ナスダック」とは、ナスダック総合指数のことを指しており、アメリカ・アメリカ外の全上場銘柄で構成される、時価総額加重平均指数を言います。
主にシリコンバレーやIT関連株の占める割合が高く、その業績動向が反映されやすい傾向にあります。
アメリカでは代表的な株価指数として世界的に有名で、AppleやNetflix・Costcoなども銘柄に数えられています。
ナスダックが支援するBcauseが、将来的にアメリカで主流の取引所になれば、いずれは何らかの世界共通指数が発表されることになることもあり得るかもしれません。
取引所Bcauseのプロフィール
ナスダックが支援する取引所であるBcauseは、どのような取引所なのでしょうか。
所在地はアメリカ合衆国のバージニアビーチ市にあり、2012年に設立されています。
Bcauseは、アメリカにおいて、仮想通貨エコシステムを構築している会社の一つとして知られています。
ここで言うエコシステムとは、いわゆる環境問題に関わる話ではなく、IT・ビジネスにおける新しい表現で、分野や国境を超えた世界中の人々がお互いに協力するシステムのことを指します。
スポット取引所・ビットコインマイニングプラットフォーム・デリバティブ組織の運営を含めてエコシステムを実現し、ユーザー・マイナー・投資家・団体それぞれの立場で物事を考えられる数少ない会社の一つとして注目されています。
また、Bcauseは米国商品先物取引委員会(CFTC)から、デリバティブ取引所への公認取引所認可(DCM)を取得するために手続きを進めています。
公式サイトで見る限り、2018年時点では承認を待っている状況のようですが、実現すればアメリカ初の「個人向け仮想通貨デリバティブ取引所」への適用となります。
実はBcauseは日本の仮想通貨取引所とも縁があります。
SBIバーチャルカレンシーズの大元であるSBIホールディングス株式会社は、2017年10月18日にBcauseへの出資を決めています。
出資比率は40%となっており、ボラティリティの安定やデリバティブ市場を新しく創設することを目指すという考えに基づき行われた出資とのことです。
よって、日本の仮想通貨普及や新しい取引形態の発生においても、今後Bcauseが少なからず関与することが考えられます。
ナスダックが仮想通貨取引所を支援する理由
ナスダックにとって、Bcauseを支援するのはどのようなメリットがあるのでしょうか。
以下に、ナスダック側の思惑について触れていきましょう。
今回の件が発表される以前から、ナスダックは仮想通貨ビジネスに対して強い関心を抱いていました。
既にビットコインとイーサリアムのインデックスを提供していますし、アメリカの投資企業であるヴァンエック(VanEck)とも提携して、ビットコイン上場投資信託の上場計画をアメリカ証券取引委員会に提出しています。
つまり、ナスダック側は何らかの形で仮想通貨取引に参入することを考えており、仮想通貨が将来有望な投資対象であるという認識を持っていたことが分かります。
ナスダックが味方に付くことで、仮想通貨取引所としてはどのような恩恵を得られるのでしょうか。
複数ある理由の一つとしては、機関投資家のような大口の投資家が仮想通貨市場に参入することが考えられます。
大量の資金を使い運用を行う機関投資家は、株式であれば優良企業の株をじっくりリサーチし、その上で「買い」の判断を下します。
信用を得ている企業であれば自然と株価が上昇しますから、結果的に投資家たちは得をするのです。
しかし、現状では仮想通貨は投機目的での短期保有が多く、10年先を見越して仮想通貨を保有しているケースは稀といっていいでしょう。
保有価値が必ずしも高いと言いきれないのが仮想通貨の特徴でもありますが、それが高いボラティリティを生んでいる理由の一つでもあります。
その点、既に投資で一定の実績がある機関投資家が仮想通貨を保有すれば、信用度は高まっていくはずです。
ナスダックの取引を支配している機関投資家が仮想通貨の保有に動けば、将来的に仮想通貨が金融業界で大手を振って取引できる投資対象となることも、十分にあり得るのです。
おわりに
ナスダックがBcauseを援助するのは、もちろん仮想通貨市場の可能性に対して投資する意味合いもありますが、Bcause側の思惑としては「不正行為の抑制」が狙いになっているはずです。
仮想通貨に関する数多くの取引方法を提案するBcauseに対し、その安全性を水面下で守るのがナスダックという構造になります。
市場をけん引してきた大手が参入し、安全性が担保されれば、仮想通貨の取引はより活発化します。
それと同時に、やってはいけないこともより具体的に明文化され、規律ある取引も実現するでしょう。
仮想通貨が持つ匿名性の高さと、取引の安全性を保証するセキュリティを両立させることは簡単なことではないものの、投資家や消費者にとって魅力的なものになっていくのであれば、市民権を得ることは難しくないはずです。
事実、一部の国では「仮想通貨の方が自国通貨よりも価値がある」と考えられているケースも見られますし、送金手段としても自由度が高く安価なため、将来的にどの国でも一般的な資産となり得る可能性を秘めています。
このような時代の潮流に従い、仮想通貨取引を適切に管理する技術・概念を提供することが、今後の仮想通貨に関わる全ての業者に求められることでしょう。