ケニアでワールドコイン調査結果から議会が業務停止を求める
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- 2023.10.03.
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- ケニアでワールドコイン調査結果から議会が業務停止を求める
画像引用:worldcoin.org
仮想通貨と聞くと、ほとんどの人はビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)、リップル(XRP)、ビットコインキャッシュ(BCH)などを思い浮かべるでしょう。
しかし現在、仮想通貨にはおよそ20,000種類以上のものがあり、なおかつ時間の経過とともに種類は増えつつあるようです。
もちろん仮想通貨の中には、いつの間にか無くなっているようなものも含まれていますが、仮想通貨の中でも非常に特異なものとして知られているのがWorldcoin(ワールドコイン)です。
ワールドコインは他の仮想通貨にないビジョンを伴って展開されていますが、ケニアの議会委員会によって調査された結果、ケニア議会が国内での業務を呈するよう、規制当局に求めました。
ケニア議会はどうしてワールドコインの業務停止を規制当局に求めたのでしょうか。
またワールドコインとはいったいどのようなものなのでしょうか。
このニュースについて詳しくご説明しましょう。
ケニア議会が規制当局にワールドコインの業務停止を求める
ケニア議会が2023年9月30日に発表した報告書によると、ケニア国内で活動をおこなっているWorldcoin(ワールドコイン)について合同特別調査委員会が調査をした結果に基づいて、ケニアにおけるワールドコインの業務停止を規制当局に求めていることが明らかになりました。
ケニアにおける規制当局はケニア通信庁となります。
そして業務停止を求められているのは、ワールドコイン関連会社のTools for Humanity Corp(ツールズフォーヒューマニティ)とTools for Humanity GmbH Germany(ツールズフォーヒューマニティ・ドイツ)です。
報告書では、この2社の仮想通貨プラットフォームだけでなく、関連サイトも含めて無効にするべきであるとも述べられています。
さらに報告書では、2023年5月にワールドコインに対して業務停止命令が出されていたにも関わらず、その命令を無視していたことが明らかになったとされています。
この業務停止命令は、ケニア裁判所命令だけでなく、行政的な指示も出されていましたが、ワールドコインのアプリによる登録が停止していないことを指摘しています。
画像引用:parliament.go.ke
ワールドコインに業務停止命令が出た背景
ではどうしてワールドコインに対して業務停止命令がでたのでしょうか。
ワールドコインの特徴
ワールドコインとは、「チャットGTP」を提供している米OpenAIのCEO、Sam Altman(サム・アルトマン)CEOらが創業した仮想通貨プロジェクトです。
ワールドコインが目標として掲げているのは、人工知能が発展していくのに伴って、いずれ人間とボットの区別がつかなくなる可能性があり、それに対処するとともに、すべての人々が仮想通貨を使って世界の経済にアクセスできることを目指していると主張しています。
人間とボットの区別をつけるための方法としてワールドコインがとっていたのが、網膜スキャンと、そのデータに基づくWorld ID(ワールドID)によって世界のどこにいても使えるID管理システムの構築でした。
また網膜をスキャンし、ワールドIDを取得すれば、ワールドコイントークンが無料で配布されるという施策も打ち出していました。
このトークンの無料配布施策によって、2023年7月までに数百万人がワールドIDを取得したとされています。
そしてサム・アルトマンCEOが2023年7月24日、このプロジェクトのトークンである「$WLD」をローンチすることを発表し、その日のうちに一斉に上場されていました。
ケニア通信庁のワールドコインに対する懸念
ケニアの通信庁とデータ保護当局がワールドコインに対して予備的調査を実施した結果、ワールドコイントークンの無料配布という金銭的見返りによって消費者の同意を得る方法に懸念を感じていました。
つまりケニアの弱い立場である人々から、お金を引き換えにして網膜データを収集していることが問題にされたわけです。
ワールドコインのデータ収集方法とデータ活用に問題
ケニア通信庁の懸念の通り、ワールドコインは利用者のプライバシーを保護することに重点を置くと説明しているものの、実際の行動とは大きな開きがあることが明らかになっています。
例えば網膜データを取得する際に、ケニアという貧しい人々が多い地域で、金銭を対価にして利用者から十分な同意を得ることなく、データを取得していること。
さらに個人データは、AIの訓練にも使われることが利用者に知らされていなかったことが分かっています。
各国でワールドコインに対する調査実施
上記のようにワールドコインは、利用者から網膜データを収集する際、その意味や活用方法などがしっかりと同意されていたのか、つまりデータ収集方法が合法なものなのかが幾つかの国で問題視されています。
すなわちワールドコインのデータ収集方法について問題視しているのはケニアだけではないということです。
画像引用:REUTERS
フランスやドイツでは、2022年11月からワールドコインに対して調査を実施しています。
また英は7月25日にワールドコインに聞き取りをする旨を発表しています。
そしてケニアは、ワールドコインがデータ保護法を遵守しているかどうかの調査実施を発表し、調査結果がでるまでは事業停止するよう命令を出していました。
しかしワールドコイン側は、ケニアの事業停止命令に従わず、アプリでの網膜データ収集を続けていたことになります。
まとめ
網膜データによるワールドIDという考えは未来的で、非常にユニークだといえますが、そのデータを収集するために貧困層が多い国で、しかも金銭を餌にして、利用方法に十分な同意を得ずに収集していることは大きな問題です。
そして、そのことに対して国が問題意識を持ち、事業停止命令を出していたにもかかわらず、データ収集を続けていたことは、さらに大きな問題といえます。
「チャットGTP」が広まりつつある現在、それを提供している企業がこのような問題を起こしてしまうことは、人工知能AIに対する拒絶感にもつながりかねません。
米OpenAIには、国の命令を聞く能力が備わっていないのでしょうか。
米OpenAIのこの行動が、仮想通貨に対する向かい風にならないことを祈るばかりです。