米下院で仮想通貨規制明確化に関する法案FIT21が承認
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- 2023.07.30.
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仮想通貨に対する対応や取り組みが世界各国で進む中、以前から米では仮想通貨に対する拒絶感があり、仮想通貨に対してどう取り組むべきなのかが不明瞭なままでした。
そしてこのことが置き去りにされたまま、この通貨は証券であるor証券ではないなどの議論が巻き起こり、場当たり的に規制しようと動いてきたのがSEC(米国証券取引委員会)でもあったわけです。
SECのこのような動きは、米における仮想通貨の定着や発展を阻害しているだけでなく、仮想通貨の存在そのものを否定する動きにつながっていきます。
しかし2023年7月27日、これらの問題を解決するのに必要な第一歩になる「21世紀金融イノベーション・テクノロジー法(Financial Innovation and Technology Act for the 21st Century Act)」が米下院で承認され、可決しました。
この法案はどのようなもので、可決までにどのような議論があったのかなど、このニュースについてご説明しましょう。
「21世紀のための金融イノベーションとテクノロジー法」が可決
2023年7月27日、米下院農業委員会において「21世紀金融イノベーション・テクノロジー法(Financial Innovation and Technology Act for the 21st Century Act)」が可決通過したことが報じられました。
画像引用:AGRICULTURE
この法案は、前日の2023年7月26日に下院金融サービス委員会において、賛成35、反対15の賛成多数で通過していたもので、その後に米下院農業委員会で審議されていました。
「21世紀のための金融イノベーションとテクノロジー法」とはどのような法案か
ではこの「21世紀のための金融イノベーションとテクノロジー法」とはどのような法案なのでしょうか。
現在米における仮想通貨規制に関して、多くの人々はSEC(米国証券取引委員会)の管轄下にあるものだと考えているかもしれません。
事実SECは仮想通貨プラットフォームを何度も非難しており、Ripple社のXRPを有価証券に当たるとして訴訟を起こし、裁判は3年にもわたって続けられてきました。
これ以外にも2023年6月には大手仮想通貨取引所バイナンスを訴えています。
しかし仮想通貨を規制する管轄はSEC(米国証券取引委員会)なのか、それともCFTC(商品先物取引委員会)なのかも明確になっていませんでした。
「21世紀のための金融イノベーションとテクノロジー法」では、SECとCFTCに仮想通貨に特化したルールを共に作成することの内容が盛り込まれています。
これ以外にも、トークン販売が証券法の適用を免除されるのには、デジタル資産発行者に一定の条件を課すことも含まれています。
また大多数の仮想通貨が該当する、既に世の中に分散化しているトークンが、SECから認証を受けられる制度についても言及したものになっています。
これらが明確に規定されることで、これまで不明瞭だった仮想通貨トークンが証券なのかどうかという問題が正しく判断されることになり、上記のXRP訴訟のような問題が起きることがなくなるわけです。
法案通過に際して議論されたこと
では「21世紀のための金融イノベーションとテクノロジー法」が米下院を通過する際、どのような議論が交わされたのでしょうか。
この法案を推進し、共同提出したトム・エマー議員はこの法案によって「市場とコミュニケーションをより効率化できるイノベーションを活用することで、世界経済の中で米のリーダーシップは今まで以上に後押しされるだろう」と説明していました。
しかし、もともと仮想通貨に対して反対しているブラッド・シャーマン下院議員は、ビットコインに代表される仮想通貨は革新的だと思えないと、法案ではなく仮想通貨に対する取り組み姿勢そのものに反対する意見を述べています。
また法案に対して反対の立場を示しているスティーブン・リンチ議員は、この法案はSECの権限を部分的にCFTCに移管することになるため、CFTCには移管後に正常に機能させるだけのリソースがあるのかを問いかける発言をしていました。
これらの意見があった一方で、より法案を充実させるための意見もありました。
仮想通貨市場に参加する人は物理的な住所を持たなければならないことに加え、仮想通貨取引所などに対する開示要件をより強化する必要があると訴え、最終的には法案に修正事項を加えることになりました。
他にも2つの仮想通貨関連法案が可決
「21世紀のための金融イノベーションとテクノロジー法」法案以外にも、仮想通貨関連法案が2023年7月28日に米下院金融サービス委員会において可決されました。
それは「支払ステーブルコインの透明性に関する法案」と「キープ・ユア・コイン法案」を含んだ計5つの金融関連法案です。
画像引用:financial services committee
「支払ステーブルコインの透明性に関する法案」は、支払ステーブルコインの発行者を今まで以上に適切に規制することを目的として策定された法案です。
もうひとつの「キープ・ユア・コイン法案」は、ユーザーが仮想通貨資産を保持する際に非カストディ型ウォレット(セルフカストディウォレット)を使えるようにすることを目的としたもので、ユーザーが自分の秘密鍵を自身で管理する仮想通貨セルフカストディを前向きにとらえた法案といえます。
法案可決を称賛する声
「支払ステーブルコインの透明性に関する法案」と「キープ・ユア・コイン法案」が可決されたことを称賛する声もあります。
米仮想通貨取引所Coinbese(コインベース)のChief Policy Officer(チーフポリシーオフィサー)であるFaryar Shirzad(ファリヤール・シルザド)氏は、2023年7月28日に以下のようなツイートをしています。
@PatrickMcHenry さらにおめでとう
超党派の支持を得て、ステーブルコイン支払いの透明性に関する法律を可決させたことに感謝します。
今週は歴史的な一週間であり、消費者保護にとって大きな前進でした。
引用:Faryar Shirzad Twitter Google翻訳
遅れていた米のデジタル資産規制が大きく進む可能性
2023年に入ってから、多くの仮想通貨取引所や仮想通貨関連企業がSECによって取り締まりを受けました。
今回の法案通過に尽力したデジタル資産・金融テクノロジー等に関する小委員会議長のFrench Hill(フレンチ・ヒル)下院議員は、今回の法案がもっと早い段階で整っていればFTXの破綻を未然に防ぐことができたかもしれないとし、さらに仮想通貨業界に必要な透明性をもたらすことができ、ユーザーの保護にもつながるだろうと述べています。
もっと早い段階で仮想通貨関連規制法案ができていれば、SECによる偏った取り締まりもなく、FTXも破綻に至るようなことがなかったのかもしれません。
米仮想通貨取引所コインベースのファリヤール・シルザド氏のツイートにもでてきた下院金融サービス委員会のPatrick McHenry(パトリック・マクヘンリー)委員長も、米の対応は仮想通貨規制を進めつつある他国よりも遅れていると述べています。
今回の法案によって、米の仮想通貨市場がより透明性の高い、利用者が被害を被ることのないものに変化していくはずです。
まとめ
米下院でFIT21法案と呼ばれる「21世紀のための金融イノベーションとテクノロジー法」が通過し、他の仮想通貨規制関連法案も続々と通過していることについてご説明しました。
現在の米の仮想通貨市場は統一性のない規制に翻弄されています。
今回の法案通過をきっかけに、米が仮想通貨市場でも世界をリードするものになっていけば、仮想通貨の未来もおのずと開けていくのではないでしょうか。