米SEC委員長が仮想通貨業界に対して更なる締付を示唆
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- 2023.04.01.
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2023年3月29日に米下院歳入委員会がおこなわれましたが、SEC(米証券取引委員会)のGary Gensler(ゲーリー・ゲンスラー)委員長がこの公聴会に出席し、仮想通貨業界での不正行為を取り締まるためにも追加で資金が必要であると説明しました。
ゲーリー・ゲンスラー委員長は、今回の発言はSECとしてのものではなく、あくまでも個人的な考えであると前置きして発言していましたが、明らかに仮想通貨業界を今以上に締め付けるため、更なる予算を確保することを目的として発言しています。
ゲーリー・ゲンスラー委員長の発言とはどのようなものだったのでしょうか。
またゲーリー・ゲンスラー委員長の過去の発言から、仮想通貨に対してどのような考えを持っているのかも含めてご説明しましょう。
米下院歳入委員会公聴会に米SEC委員長が出席
2023年3月29日の米下院歳入委員会の公聴会に、米SECのゲーリー・ゲンスラー委員長が出席し、仮想通貨業界にある不正な行為を取り締まる必要があり、そのためにもバイデン大統領が求めている規制当局に対する24億ドルの資金案に対する支持を求めました。
その際の発言内容は「ゲーリー・ゲンスラーの証言(Google翻訳)として、以下のように公表されています。
画像引用:docs.house.gov
SECとしての発言ではないと前置き
ゲーリー・ゲンスラー委員長は、前置きとして今回の発言はあくまでも要求する予算に納得してもらうためのものであり、仮想通貨を対象とした意図の発言でもなく、SECとしての発言ではないと述べています。
つまり今回の発言は、ゲーリー・ゲンスラー氏個人の発言であると前置きしているわけです。
追加資金の必要性について
ゲーリー・ゲンスラー委員長が主張しているのは、金融市場では以前は利用できなかった技術が利用されており、それに伴って投資家も増えているということです。
利用できなかった技術とは仮想通貨などを指しており、投資家は増えているのにコンプライアンスが不十分であり、不正が相次いでいることから、それらに対応するためのツールや専門知識などが必要であるというものです。
加えて、仮想通貨に投資する投資家は、投機性が高いというリスクを負っているだけでなく、急激に変化・発達した市場は犯罪も多く、それに対処するSECも成長するために資金やリソースが必要であることを主張しています。
例えば現代にはオンライン取引やクラウド、AI、予測データ分析などが当たり前のように活用されていますが、これらは以前にはなかった技術です。
加えて投資家が活用しているコミュニケーションツールも以前にはなかったものが多く登場しています。
そしてバイデン大統領の資金案、つまりSECに対する追加資金があれば、スタッフを170人追加でき、SECの執行部門と審査部門の充実にもつながるだけでなく、新しい技術にも対応して国民を保護することができると主張しているわけです。
公聴会では証券法への適応基準についての質問も
SECゲーリー・ゲンスラー委員長の上記の後、質疑応答があり、その中で仮想通貨に証券法を適用する基準そのものが不明確なのではないかとの質問がありました。
この質問に対してゲーリー・ゲンスラー委員長は、仮想通貨はほとんどが有価証券であり、仮想通貨に対する証券法の適用ははっきりしていると答えています。
また仮想通貨にはwebサイトやTwitterアカウントを持っている起業家がかかわっており、管理者がいない状態とは言えず、彼らが消費者から資金を集めるのであれば、情報を開示しなければならないことも指摘しています。
以前から仮想通貨のほとんどが有価証券であると主張
SECのゲーリー・ゲンスラー委員長は、以前からほとんどの仮想通貨は有価証券であると主張していました。
2022年9月15日に開催された米上院における銀行・住宅・都市問題委員会の公聴会でも、ほとんどの仮想通貨は有価証券で、証券法の対象となるため、SECによって規制されると主張していたことがウォール・ストリート・ジャーナルによって報じられています。
公聴会での発言の後、ゲーリー・ゲンスラー委員長は記者団の取材に対して、特定の仮想通貨について指摘しているわけではないと前置きしたうえで、ステーキングできる仮想通貨や、ステーキングサービスを提供している業者は、Howey(ハウェー)テストの「投資契約」に当たるので、証券法の当てはまる可能性があると述べていました。
Howey(ハウェー)テストとは、特定の取り決めが投資契約にあたるのかについて、SECとHowey社が1946年に最高裁で争ったことに端を発しています。
最高裁判所は、その取引が投資契約かどうかを判断するためのテストを開発しており、それをHoweyテストと呼んでいます。
テストによる判断結果に法的な拘束力はありませんが、SECはHoweyテストの結果を根拠として、過去に何度かICOに対して訴訟を起こしています。
つまりゲーリー・ゲンスラー委員長は、ステーキングサービスは融資とよく似ていると指摘しているわけです。
ゲーリー・ゲンスラー委員長への反論も顕在化
ゲーリー・ゲンスラー委員長の公聴会における発言に対する反論も顕在化していました。
反論していたのは仮想通貨を支持している米上院銀行委員会の共和党トップ、Pat Toomey(パット・トゥーミー)上院議員です。
パット・トゥーミー議員は、SECは何が証券にあるのかの基準を示していないと反論しましたが、ゲーリー・ゲンスラー委員長はここでもHoweyテストのことを持ち出し、事業の開発者グループが中核にあるかどうかが問題であり、仮想通貨に投資している人々は彼らに賭けているのだと主張していました。
ゲーリー・ゲンスラー委員長のこの発言に対してパット・トゥーミー議員は、その事業を誰もコントロールしていなければどうなるのかと更に反論し、実際に起こっている分散化の例を挙げています。
そして有価証券の定義はSECがするのではなく、議会がおこなうべきであると述べていました。
米SECが予算を得て更に仮想通貨業界を締付か?
米SECがバイデン大統領の資金案を後押し、その資金案が可決された場合には、SECに今まで以上の予算が配分されるはずです。
そうなれば、米SECは今まで以上に仮想通貨業界を締付けてくるでしょう。
しかもその締付の根底には、法的拘束力のないHoweyテストがあります。
規制を明確にしないまま、締付だけを厳しくすることは、仮想通貨業界にとって発展の妨げでしかありません。
もちろん不正は正すべきですが、規制が定まっていない現状では、何が不正なのかを判断できるのでしょうか。
まとめ
仮想通貨は金融の世界では新しい存在です。
業界全体で取り組まなくてはならない問題もあるでしょうし、世界各国で統一した規制も必要でしょう。
不正はもちろんダメですが、仮想通貨の価値を正しく判断できずに締付だけを厳しくするのは発展を阻害することにつながっていきます。
仮想通貨の価値を認め、日本を含めた世界で統一した規制を打ち出せなければ、この素晴らしい存在を埋没させてしまうことになってしまいます。
正しい発展につながっていく、正しい規制を作ってもらいたいものです。