仮想通貨の不正取引は意外と少なく件数も減少傾向
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- 2020.03.07.
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Bybitなどで仮想通貨FX取引をしている方にとって、仮想通貨は投資の対象であり、あまりダーティーな見方をしない人がほとんどでしょう。
しかし仮想通貨のことを良く知らない人には、仮想通貨のイメージはあまり良いものではないのが一般的です。
イメージを悪くしている原因としては、ハッキングによる流出やマネーロンダリング、不正取引、詐欺などが挙げられるでしょう。
しかし実際にこれらの不正取引はどの程度おこなわれているのでしょう。
やはり多いのでしょうか。
また近年では世界的にも仮想通貨に対する規制が厳しくなってきていますが、やはり不正取引は多いままなのでしょうか。
これらの疑問を解消できる報道がされていますので、詳しくご紹介しましょう。
仮想通貨の不正取引はそれほど多くない
仮想通貨の不正取引などの検出やマネーロンダリング調査を手掛ける調査分析会社であるChainalysis社が、2019年の仮想通貨不正利用について報告しています。
それによると、全ての仮想通貨取引のうち、不正に利用されたのは1.1%とごく少ない比率であったとのことです。
画像引用:Chainalysis blog
上記のグラフは、2017年から2019年までの3年間の不正取引額と、その不正取引額が全ての仮想通貨取引の中でどのぐらいの割合になるかをあわらしたものです。
2018年は2017年より不正取引額、割合ともに減っていますが、2019年は再びどちらも増加しており、およそ1兆2200億円(115億ドル)となっています。
この金額は決して少なくない不正取引額ではありますが、全取引額からみた場合には、わずか1.1%となっています。
つまり一般の人々が抱いているほど、仮想通貨取引においては不正がおこなわれていないということになります。
不正取引の内訳
では、2017年から2019年までの間の不正取引にはどのようなものが多いのでしょうか。
Chainalysis社は、この内訳の変化も明らかにしています。
画像引用:Chainalysis blog
上記のグラフは、仮想通貨不正取引の時期別の内訳をあらわしたものです。
目につくのが黄色の部分と薄い青色の部分ですが、黄色の部分はダークネットでの取引をあらわしており、薄い青色は詐欺での取引をあらわしています。
これをみると、2017年はダークネットでの取引割合が多く、2019年は詐欺での取引割合が一時的に多くなっていることが分かります。
Chainalysis社によると、仮想通貨詐欺の金額はおよそ9,130億円(86億ドル)に上ったとのことです。
さらに仮想通貨詐欺の中でも多かったのが出資金詐欺で、2019年の仮想通貨詐欺事件で有名な「PlusToken」詐欺など、特に被害額の大きかった3大詐欺を除くと、不正取引割合は0.46%になるとのことです。
PlusToken詐欺は、2018年に始まった中国のウォレットサービス「PlusToken」を使った詐欺のことで、犯人は専用のウォレットに仮想通貨を預ければ増やすことができるとの謳い文句で、多額のビットコインやイーサリアムを集めた後、未確認のウォレットに送金し、資金洗浄・売却した事件のことです。
なお被害額はビットコインがおよそ200,000BTC、イーサリアムがおよそ6,400,000ETHになるといわれています。
ハッキングによる被害の変化
仮想通貨不正取引の中で、最も多くの人に知られているのがハッキングです。
特に日本はコインチェックへのハッキングでおよそ580億円相当の被害を受けており、仮想通貨取引をしない人の記憶にも残っているはずです。
実はハッキングの不正取引にも変化があります。
画像引用:Chainalysis blog
上記のグラフは2011年から2019年までのハッキング関するデータをまとめたものです。
黒い折れ線はハッキング件数をあわらし、棒グラフがハッキングによる不正取引額をあらわしています。
このグラフの中には、2014年のマウントゴックス事件の114億円、2018年のコインチェック事件でのおよそ580億円も含まれています。
グラフによると2018年は不正取引額が大きく増えていますが、2019年になるとハッキング件数は11件と増えているものの、被害額はおよそ300億円(2億8,300万ドル)になっています。
つまり、ハッキング一件あたりの被害額が少なくなっていることが分かります。
Chainalysis社はこの理由について、仮想通貨取引所がハッキング対策としてコールドストレージでの保管比率を高め、不審な動きの監視などが効果を発揮していると分析しています。
さらに、ハッキングを受けた際にもコミュニティなどに情報をオープンにすることが増え、ハッキングされた仮想通貨の追跡がしやすくなったことも理由に挙げています。
警察庁の報告書ではマネロン件数も減少
警察庁が2020年3月5日、「犯罪収益移転防止に関する年次報告書」と題したマネーロンダリングなどに関する報告書を公開しました。
画像引用:警察庁
この報告書が対象にしているのは、犯罪によって得られた収益との関係性が疑わしい取引に関してのことで、事業者などからの届け出によって公安や警察が情報分析をおこなうようになっています。
またこの報告書の対象施設は仮想通貨取引所などの仮想通貨関連事業者とは限らず、金融機関なども含まれたデータとなっています。
報告書によると、2019年に届け出があり受理した件数は440,492件となり、2018年と比較すると5.5%(23,000件)増えています。
しかしその中で、仮想通貨関連事業者による届け出は、昨年より15.6%(1,100件)少ない5,996件でした。
疑わしい取引の参考事例
報告書で記述されている疑わしい取引とは、具体的にどのようなものを指しているのでしょうか。
金融庁が仮想通貨取引所などに向け、参考事例として紹介している事例には以下のようなものがあります。
- 顧客の資産ではありえない高額取引や現金による高額取引、短い期間に頻繁に取引を繰り返し、その総額が多額な場合
- 架空名義であることが疑われるケースや、同一IPアドレスでありながらも違う顧客名で取引されている場合
- 取引に際して確認の必要がある金額を避けるように、わずかに下回った金額で何度も取引している場合
これらをみると、非常に具体的で分かりやすい参考事例を示していることが分かります。
届け出が減少した背景
2019年になって届け出が大幅に減少した理由としては、仮想通貨取引所で口座開設する際のKYC(本人確認手続きなど)の徹底化に加え、AML(アンチマネーロンダリング)が充実しつつあり、仮想通貨取引が犯罪に利用しづらくなってきたことが挙げられます。
つまり仮想通貨業界がこれまでの悪習慣を正し、安全・安心な取引ができるよう努めてきた結果が出つつあるといえます。
まとめ
2019年の仮想通貨取引において不正取引は一般の人が考えているほど多くなく、日本においては、不正利用しようとしている届け出が少なくなってきている実情についてご説明しました。
不正取引はそれほど多くないにもかかわらず、多くあるようなイメージを持ってしまうのは、不正があった時に一般マスコミが大きく報道することが影響しているのだと考えられます。
また日本において不正利用の届け出が少なくなってきているのは、仮想通貨業界全体が一丸となって改革に取り組んだためでしょう。
しかし仮想通貨の不正利用が意外に少ないことや、不正利用の届け出が減ってきていることに納得するのは、仮想通貨取引などをおこなっている人々であり、関心を持たない人々の認識を変えることは、並大抵なことではありません。
だからといって改革をおこなわなければ、仮想通貨が世の中に認められることは永遠にありません。
また仮想通貨に関心があるものの、現在は取引をおこなっていない人々が取引に参加するかどうかは、業界の姿勢が大きく左右するでしょう。
今後も地道な改革努力を継続してもらうしか方法はないようです。