米ブロックチェーン協会が仮想通貨の信頼性向上を推進
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- 2020.01.26.
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仮想通貨を利用する人に広がりがあまり見られないのにはいくつかの原因があります。
例えばビットコインなどはボラティリティの大きさがあり、あくまでも投機対象だと認識されていることが挙げられるでしょう。
しかし原因はそれだけではありません。
ハッキング事件が起こったり、仮想通貨取引所が取引高を偽るなど、仮想通貨そのものだけでなく、仮想通貨を取り巻く環境にダークなイメージが付きまとっていることも大きな原因です。
このダークなイメージを取り除こうと、米のブロックチェーン協会がワーキンググループを立ち上げました。
このワーキンググループはどのようなもので、どんな活動をするのでしょうか。
このニュースについて詳しくご説明しましょう。
米ブロックチェーン協会がワーキンググループ立ち上げ
米国のブロックチェーン協会が2020年1月24日、マーケット・インテグリティのためのワーキンググループを立ち上げたことを発表しました。
画像引用:Blockchain Association Twitter
ツイートされた内容は以下のものでした。
本日、重要なワーキンググループ、Market Integrityを立ち上げます。
グループは、暗号通貨市場の透明性と公平性を確保する公共政策を支援するために働きます。
引用:Blockchain Association Twitter Google翻訳
マーケット・インテグリティとは
米ブロックチェーン協会が説明しているマーケット・インテグリティとは、どういう意味なのでしょうか。
Google翻訳で「Integrity」を調べてみると、誠実さ、清廉、正直などとなっています。
つまり現在の仮想通貨市場は誠実、清廉、正直ではないと認識しており、新しく立ち上げられたワーキンググループは、これらを改善し透明性と公平性を確保していくことを目的として立ち上げられたということになります。
米ブロックチェーン協会について
米ブロックチェーン協会とはどういう目的で設立された組織なのでしょうか。
Blockchain Association(米ブロックチェーン協会)のwebsiteを見ると、ブロックチェーンネットワークが米国で繁栄できるよう、公共政策環境を改善することを目的とした組織であることが記述されています。
今回の米国における仮想通貨市場を透明性が高く、公平なものにしていくために適任の組織といえます。
現在、米ブロックチェーン協会に加盟しているのは22社あり、coinbaseやripple、etoroなど米を代表する仮想通貨取引所や仮想通貨運営企業、ブロックチェーン企業などが加盟しています。
ワーキンググループの組織編制
このワーキンググループは、米の大手仮想通貨取引所であるcoinbaseとripple社から共同議長が選出されています。
Coinbaseからは上級管理職であるレイチェル・ネルソン氏が、そしてripple社からはグローバル機関市場責任者のブレアン・マディガン氏がグループを率いることになりました。
ワーキンググループ設立の背景
このワーキンググループを立ち上げるにあたり、米ブロックチェーン協会は仮想通貨市場のインテグリティの無さが仮想通貨に対する制限や壁になっていることで、社会的制度への採用などが困難になっていると述べています。
ではインテグリティの無さとは、実際にどのようなものを指すのでしょうか。
また制度への採用とはどんなことを意味しているのでしょうか。
インテグリティの無さを示す取引高粉飾疑惑
仮想通貨市場で指摘されているインテグリティの無さを示す例として挙げられるのが、仮想通貨取引所の取引高粉飾疑惑です。
仮想通貨のコンプライアンスツール開発やマネーロンダリング調査などをおこなっている米のChainalysis社は、2019年11月15日に仮想通貨取引所の取引高に対するレポートを発表しています。
画像引用:Chainalysis blog
「チェーン上のデータは、偽の取引量を見つけるのに役立ちますか?(Google翻訳)」と題されたレポートによると、粉飾かどうかを見極めるための鍵はオフチェーン取引とオンチェーン取引にあると指摘しています。
オフチェーン取引は取引開始と取引結果だけをブロックチェーンに記録するため、仮想通貨取引所内での処理は容易になり、偽造も容易です。
一方オンチェーン取引は、送金などの全ての取引における情報をブロックチェーンに記録していくため、承認するのに時間がかかるだけでなく、マイニング手数料の支払いも必要になってきます。
もちろん仮想通貨も移動させなければならず、データを偽造すること自体が非常に難しくなります。
そこで取引高とオンチェーン取引の比率から、取引高を正確に発表していると考えられる仮想通貨取引所10社を特定し、それ以外の仮想通貨取引所とオンチェーン取引比率について調査を実施しました。
なお取引高が正確だと考えられ、基準とされた10社の仮想通貨取引所は以下の通りです。
- Binance
- Bitfinex
- bitFlyer
- Bitstamp
- Bittrex
- Coinbase
- Gemini
- itBit
- Kraken
- Poloniex
そしてこれら10社の取引比率に比べ、取引比率が大きく異なる仮想通貨取引所12社を特定したとのことです。
つまり取引高を粉飾している可能性が非常に高いと考えられる12社が特定されたということです。
ただしこの傾向は2018年7月から2019年1月にかけては顕著だったものの、それ以降の取引比率は基準となる10社に近づいていると述べています。
以下のグラフは、基準となる10社と粉飾の可能性が高い12社との取引比率の違いをあらわしたものです。
オレンジの折れ線が基準となる10社のもの、ブルーの折れ線は粉飾の可能性が高い12社のものです。
赤い円で囲んだ部分が特に乖離していることが分かるでしょう。
画像引用:Chainalysis blog
仮想通貨取引所が取引高を粉飾する理由
なぜ仮想通貨取引所が取引高を粉飾する必要があるのでしょうか。
最も大きな理由としては、取引高を大きく見せるほど多くの顧客を確保しやすくなるということにありますが、それ以外にも幾つかの理由があります。
特に米国の場合は州によって仮想通貨取引や取引所に対する規制が異なるため、対応が非常に厄介であることが挙げられます。
加えて、新しい州で運営を開始するためには個別の規制に対応しなければなりません。
つまり、それだけ運営にコストがかかるということです。
仮想通貨取引所による市場操作
仮想通貨取引所の取引高粉飾に加え、市場操作がおこなわれているのではないかという話題も何度が起きています。
近年ではテザー(USTD)に関する市場操作疑惑が話題になっていました。
その疑惑とは、テザーが大量に発行されて数時間以内にビットコインが高騰しているというものです。
しかもその現象は、ビットコインが高騰したうちの48.8%が、テザー社のグループであるビットフィネックスのウォレットへの着金2時間以内に起こっているというものです。
なおかつテザー(USTD)は米ドルにペグされているステーブルコインでありながら、テザー(USTD)の発行量に見合った米ドルを準備していないことも指摘されています。
これらを考え合わせると、準備金の無いテザー(USTD)を大量に発行することでビットコイン価格を高騰させた、つまり操作したとも推測できます。
もしそうであれば、テザー社もしくはテザー社内部の人間が保有しているビットコインの価値を高めることにつながるわけです。
米国証券取引委員会によるEFTの非承認
仮想通貨取引所によるインテグリティの無さは、SEC(米国証券取引委員会)によってEFT(上場投資信託)が承認されない事態にまで及んでいます。
SECは上で説明したような、仮想通貨取引所による市場操作や取引高粉飾などによって価格に影響が出ることを懸念しており、これが完全に無いと確信できるまでは承認しないことを繰り返し説明しています。
まとめ
米ブロックチェーン協会による、信頼性向上のためのワーキンググループ設立に関してご説明しました。
日本の場合は米と少し事情が異なり、仮想通貨取引所に対する規制は非常に厳しいものの、政府の仮想通貨に対する見かたに偏りがあります。
仮想通貨に対する税制などはその最たるものでしょう。
米で仮想通貨に対するインテグリティが向上すればその効果は全世界に広がり、日本にも好影響を与えてくれるはずです。
新しく設立されたワーキンググループの活躍に期待しましょう。