G7が認めない仮想通貨とステーブルコイン
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- 2019.10.23.
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画像引用:Chair’s Statement on Stablecoins
このところ話題に上ることが多いステーブルコインですが、2019年7月17日から18日に開催されたG7財務大臣・中央銀行総裁会議でも議題に取り上げられていました。
これらの協議内容を受けG7のワーキンググループがステーブルコインについて調査を実施していましたが、調査の最終報告書にG7の議長が歓迎するとの文書を公表しました。
なお2019年10月21日に、日本銀行も同内容を公表しています。
これによると、現状の仮想通貨やステーブルコイン、リブラなどについて否定的な意見がまとめられています。
どのような内容がまとめられているのか、詳しくご説明しましょう。
G7議長声明でステーブルコインを現状否定
2019年7月に開催されたG7財務大臣・中央銀行総裁会議において議題になっていたステーブルコインについて、G7のワーキンググループが報告書を発表しました。
またこの報告書を受け、G7の議長国であったフランスも「Chair’s Statement on Stablecoins」(ステーブルコインに関するG7議長声明)を発表し、日本銀行もこれら2つについて公表しています。
画像引用:日本銀行 公表資料2019年
G7ワーキンググループの報告書
G7ワーキンググループの報告書は、一般的な仮想通貨からステーブルコイン、そして今現在最も注目されているリブラについて、複合的に言及しています。
まず一般的な仮想通貨、おそらくこれはビットコインなどについて書かれていると考えられますが、これについては信頼性の欠如や決済の際にも利用しづらさがあることを指摘しています。
その理由としてボラティリティの高さだけでなく、スケーラビリティがどうしても制限されてしまうこと、そして利用するにあたってのインターフェイスが複雑であることなどを挙げています。
またこれらの状況から、仮想通貨は投資家に向けたものにすぎないと結論づけています。
ステーブルコインについては、リスクは存在しているものの、銀行からの国際送金で生じる高い手数料や送金完了までの時間がかかることなどを解決しうる可能性は認めています。
ステーブルコインに欠けているもの
G7ワーキンググループの報告書では、ステーブルコインには現状欠けているものがあり、それらを是正するまでは 世界的に運用するべきではないと指摘しています。
当報告書は、ステーブルコインが以下の項目に関する法律上、規制上及び監督上の課題とリスクを惹起することを指摘する
:法的確実性;健全なガバナンス;マネーロンダリング、テロ資金供与及びその他の違法な金融活動;決済システムの安全性、効率性及び公正性;オペレーションの頑健性やサイバー耐性;市場の公正性;データのプライバシー、保護及び移転可能性;消費者や投資家の保護;税務コンプライアンス。
上記の報告書におけるステーブルコインついての指摘は、これまで各国の中央銀行などから指摘されてきたものと同様の内容になっています。
現状のまま運用開始された場合
上記の指摘に加えて、現在のままステーブルコインが運用開始されるとどのような弊害が予想されるかまでもが記述されています。
もしステーブルコインがグローバルに受け入れられると、こうしたリスクは増幅され、また金融政策、金融安定及び公正な競争に関して言えば、新たなリスクが生起するかもしれない。また、より広範には、通貨代替を含む国際通貨システムへの影響を持つ可能性があり、ゆえに通貨主権に対する課題を惹起しうる。
上記の内容も、以前から指摘されてきたもので、国が国たるゆえんは通貨主権であり、それを侵害することになると論じています。
報告書のステーブルコインに対する結論
そしてステーブルコインに対して、G7として合意したのは以下のような内容になっています。
我々は、適切な設計及び明確かつリスクに応じた規制を遵守することによって、法律上、規制上及び監督上の課題やリスクに十分な対応がなされるまで、いかなるグローバル・ステーブルコインもサービスを開始すべきではないということに合意した。
これも以前から各方面で指摘されてきたことですが、リスクや規制に十分対応できるまでステーブルコインの運用を開始すべきではないと結論づけています。
しかしこの結論の背景には、ステーブルコインの可能性に期待していることもあり、そのために運用そのものを否定する形にはなっていません。
あくまでもリスクや規制をクリアして運用を開始したいとの思いが透けて見えています。
G7の発表に対するリブラ協会の反応
G7の「Chair’s Statement on Stablecoins」内ではリブラの名前は書かれていませんが、この発表内のステーブルコインやグローバルステーブルコインの表記は、明らかにフェイスブックの仮想通貨リブラのことを指しています。
この「Chair’s Statement on Stablecoins」発表に対して、リブラを運営するリブラ協会も書面を発表しています。
画像引用:libra
この文書の中でリブラ協会としての取り組み姿勢を以下のように説明しています。
リブラ協会は、金融政策に対する国家主権を維持しながら、マネーロンダリングと不正資金調達を防ぐために、消費者保護、金融の安定性、およびグローバルな協力に関する現在の基準を複製または超えるシステムの構築に取り組んでいます。
また上記以外にも、規制当局とのパートナーシップや透明性、規制に沿って運用されることなども記述されています。
10月23日の米議会にザッカーバーグCEOが出席
本ニュース記事が公開される2019年10月23日には、フェイスブックのCEOであるマーク・エリオット・ザッカーバーグ氏が、米議会の公聴会で証言することになっています。
この日程はG7の報告書が発表される以前から決まっていたことですが、報告書の内容はこれまで諸外国の中央銀行などから指摘されていた内容とほぼ変わらず、改めてリブラが苦境にあることを再認識するものになりました。
ザッカーバーグCEOが米議会でどのような発言をするのか、注目が集まっていますが、規制当局からの承認を得るまで、フェイスブックはリブラの立ち上げに関与しないと説明するようだとの報道が見られます。
また報道によると、中国が開発中のデジタル通貨が米の金融面を阻害する可能性と、これまでも指摘されてきた個人情報の管理についてもSNSのFacebookとリブラのデータを区別することも説明するようです。
まとめ
G7の報告書に関する詳細と、報告書内で重点的に記述されていたグローバルステーブルコイン「リブラ」の動きについてご説明しました。
米議会公聴会でザッカーバーグCEOは、G7の報告書にあったように、承認を得るまで関与しない方針を説明するはずです。
リブラの運用は、フェイスブックがこれまで何度もあった個人情報流出による信頼の失墜をどのようにカバーしていくのかに掛かっているはずです。
それができなければ、机上の空論に終わってしまう可能性も考えられるのではないでしょうか。
そしてもう一点気になるのは、ザッカーバーグCEOが説明するとされている中国のデジタル通貨です。
確かに中国が世界に先駆けてデジタル通貨を運用し始めると、米国経済や金融面だけでなく、世界中に大きな影響が生じてきます。
米議会は、リブラについて否定的な意見を述べるだけにとどまらず、中国のデジタル通貨に対する対応策も考えておくべきではないでしょうか。