政治資金規正法で仮想通貨が金銭にあたらない判断
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- 2019.10.21.
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- 政治資金規正法で仮想通貨が金銭にあたらない判断
仮想通貨FX取引をしている皆さんにとって、仮想通貨は金銭と同じ価値があるというのが一般的な考え方でしょう。
だからこそ価格の上下に一喜一憂するわけです。
しかし仮想通貨は、政治家にとって金銭ではないという判断を政府が下しました。
このニュースについて詳細をご説明しましょう。
政府が仮想通貨は金銭に該当しない決定
2019年10月18日の閣議の中で、仮想通貨は金銭や有価証券に該当しないという解釈の答弁書を閣議決定しました。
政治資金規正法では政治家個人に対して金銭や有価証券を寄付する行為、すなわち献金は禁じられています。
しかし仮想通貨が金銭や有価証券には当たらないということであれば、政治家個人に対して仮想通貨で献金することは違法ではないということになります。
つまり、仮想通貨でなら政治家個人への献金は問題なくできるということになるわけです。
政治献金の規制について
仮想通貨の代名詞でもあるビットコインは、2019年10月21日現在、1コインあたり89万円ほどで推移しています。
また高騰していた時は200万円ほどにもなっていました。
政治家個人に対し、これほどの額のものを寄付しても問題がないという政治献金にはどのような制限があるのでしょうか。
政治献金は政治資金規正法によって制限が設けられています。
政党や政治家が活動するための資金を個人や企業・団体などが寄付する行為です。
献金には、企業との癒着を防ぐ意味で、企業→政治家個人への献金禁止や年間の献金上限額などが設けられていますが、抜け道もあり、現状は完全に規制できているとはいえません。
引用:公明党
画像引用:政治資金規正法のあらまし 総務省
上の二つをまとめると、政治献金は政党や政党支部に対する寄付は認められていますが、政治家個人に対する寄付は一切認められていません。
また政党などに対する寄付であってもその上限が定められており、それを超える寄付は認められていません。
仮想通貨が金銭や有価証券にあたらない理由
政治献金に対しては抜け道があるものの、ルールが設けられていますが、なぜ仮想通貨は金銭や有価証券にあたらないと判断されているのでしょうか。
その理由について暗号資産取扱古物商協会設立を目標とし、印鑑から国民を守る党を名乗る岡部典孝氏が2019年10月7日にTwitterで公開しています。
岡部氏は総務省に対して情報公開請求をおこない、それが開示されたとのことです。
なお岡部氏は、総務省から開示された文書を公開しています。
画像引用:総行資64号
この文書によると、岡部氏が総務省に質問したのは以下の3点だったようです。
1.仮想通貨が政治資金規正法上の「財産上の利益」にあたるのか
2.仮想通貨が政治資金規正法上の「金銭」にあたるのか
3.仮想通貨が政治資金規正法上の「有価証券」にあたるのか
これに対する総務省からの回答の要点をまとめると以下のようになります。
財産上の利益について
政治資金規正法では、「財産上の利益」についてその形や有形無形を問わず、提供を受ける者にとって財産的価値のあるものとしている。
仮想通貨は物の購入や何かの対価として支払うことができるものであり、不特定の人に移転することができることから、政治資金規正法の「財産上の利益」にあたると解釈している。
金銭にあたるかどうか
政治資金規正法では金銭に対する定義がないことを説明しており、そのうえで以下のように述べています。
「金銭とは、財貨の交換の用具として国家がその価格を一定したものをいい、法定通貨と同義である」
引用:総行資64号
公職選挙法でも金銭は法定通貨のことを指しており、外国貨幣や金、銀などは金銭ではなく物品となる。
ビットコインは金銭と類似の機能を有しているが、金銭ではないと解釈する。
有価証券にあたるかどうか
政治資金規正法では有価証券の位置付けに関し、財産権をあらわす証券であり、権利の移転や行使に証券が必要なものとしている。
そのため硬貨や紙幣は財産的価値が自分にあることをあらわすものではない。
仮想通貨は財産的価値が自分にあることをあらわすものではないため、有価証券にはあたらないと解釈する。
総務省の結論として
上記のことを説明したうえで総務省の結論としては、仮想通貨は金銭にはあたらないものの、物品やそれ以外の「財産上の利益」にはあたると解釈できると結論づけています。
つまり、政治家個人に米ドルのような外国の法定通貨を寄付したのと同じであるとしているわけです。
総務省の結論が及ぼす影響とは
仮想通貨による政治家個人への寄付は可能であり、財産上の利益とした総務省の結論は、どのような可能性を生み出してしまったのでしょうか。
考えられる可能性としては以下のものが挙げられます。
政治家個人に対する寄付の問題点
政治資金の寄付が政党や政党支部に限られているのは、政治資金がどう流れているのかを有権者に示すことができるからです。
しかし政治家個人に寄付ができるようになれば、その流れを可視化することはできません。
仮想通貨の場合、政治家個人のアドレスさえ分かれば寄付できてしまいますが、その政治家が仮想通貨取引をしていると、仮にアドレスを公表しても取引によって保管してある仮想通貨なのか、寄付によるものなのかの判断はできません。
つまり現状のままのルールでは、いくらでも寄付できてしまうということになってしまいます。
海外からの献金
海外の企業や個人から日本をターゲットにして仮想通貨を広めるため、政治家個人に寄付をする危険性も十分考えられます。
例えば新しい仮想通貨を日本で上場することを狙い、政治家に働きかけることで、政治家が動いて上場するなどのケースもあり得る話でしょう。
これも匿名で送金できる仮想通貨を寄付することで起こりえるリスクといえます。
寄付をする側のメリット
仮想通貨での政治家個人に対する寄付では、デメリットばかりが注目されがちですが、寄付をする側にとってのメリットがあります。
それは税金面においてです。
例えば仮想通貨で利益がでたから、円に交換して寄付してしまうと、寄付した人に利益分の税金がかかってきます。
しかし利益がでている状態の仮想通貨をそのまま寄付するのであれば、税金はかかりません。
これを考えると、寄付をするのであれば仮想通貨のまま寄付する方が税金面では得策の場合もあるわけです。
受け取る政治家個人の税金はどうなる
仮想通貨を政治家に寄付すると、いくら本来は利益がでていたとしても、寄付する側には税金がかからないことが分かりました。
では、受けとった政治家個人がその仮想通貨を日本円に換金したとすると、税金はどうなるのでしょうか。
これは国としての正式な見解が出ているわけではありませんが、東京都などでは雑所得として申告するようです。
また過去の似た判例を見ていても、同様に雑所得とする判断が示されています。
まとめ
政治資金規正法において、仮想通貨は金銭でも有価証券でもなく、政治家個人に寄付ができるとした答弁書を閣議決定したことに関してご説明しました。
政府は仮想通貨を「財産上の利益」にあたるため、これを寄付することは制約があり、野放図に広まるという指摘は適当でないとしています。
しかし金銭による政治家個人への寄付には抜け道が多いと評されているにもかかわらず、そこに仮想通貨が加わったのですから、抜け道はますます多くなる一方です。
例えば、海外の仮想通貨FX業者から仮想通貨を政治家個人に寄付するとどうなるのでしょう。
もともと海外の仮想通貨FX業者での取引は把握しづらく、そこから直接政治家個人に寄付されると、把握することは不可能です。
一刻も早い規制を設けることが重要ではないでしょうか。
政治家の信念を信じたいところです。