覆面禁止が香港のビットコイン取引高を拡大へ
- ビットコイン
- 2019.10.08.
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- 覆面禁止が香港のビットコイン取引高を拡大へ
2019年6月から続いている香港でのデモは収まるところを知らず、激しくなりつつあります。
そもそも逃亡犯条例の改正案への反対のためであったデモが、改正案そのものは撤回されたにもかかわらず、政府側のお粗末な対応が抗議内容を拡大させてしまいました。
また警察との小競り合いも激しくなり、おまけに警察がデモ隊に拳銃を発砲したことから、収束する気配すらありません。
そんな中、香港ではビットコインの取引高が急騰しています。
現在の香港の様子を交えながら、ビットコインの取引高についてもご説明しましょう。
香港のデモが激化した要因
香港の特別行政区行政長官である林鄭月娥(キャリー・ラム)氏が、逃亡犯を中国側に引き渡すことができるよう逃亡犯条例を改正しようとしたことがデモの発端となりました。
その後、改正案は撤回されましたが、それまでに時間がかかり過ぎたことなどから政府に対する不信感は増し、デモは収まりを見せませんでした。
それに対抗するように長官が緊急状況規則条例として、デモの際に覆面を着用することを禁じる条例を発令しました。
つまり顔を出させておけば、デモの際に破壊行動や警察に対する暴行などを働いた人物を特定して逮捕できるだけでなく、デモの抑止にもつながると考えたわけです。
この緊急状況規則条例とは、長官が緊急事態だと判断すれば議会の同意なしに発令できる条例のことです。
この条例を発令したことや、警官隊のデモ隊への発砲なども加わって、デモはますます激化し続けています。
経済面でもダメージが出現
この長期化、過激化したデモによって、香港の経済面に影響が出始めています。
デモ隊と警官隊との衝突によって混乱した現場付近の駅は封鎖され、商店なども一時閉店状態になっています。
そればかりか、一部の銀行などではサービスの一時停止が起こっていることを、香港金融管理局が2019年10月5日のニュースリリースで発表しています。
これらに加え、預金を引き出そうとATMに多くの人が殺到し長蛇の列を作っているにもかかわらず、現金が足らなくなる事態まで起こっているようです。
画像引用:Hong Kong World City Twitter
香港全土のATM 多くは撤退するために列を作ります。 多くは現金を使い果たしました。
引用:Hong Kong World City Twitter Google翻訳
緊急状況規則条例としての金融規制を警戒
上で説明したように、デモで覆面やマスクなどの着用を禁止した条例は、議会の同意なしに林鄭月娥長官が発令できる緊急状況規則条例です。
そしてこの条例が発令されたということは、今後林鄭月娥長官がさらなる規制を発令する可能性もあるということでもあります。
香港の多くの人が懸念しているのは、金融機関から預金を含めた資本が一気に流出してしまうことを防ぐため、政府が預金の引き出しだけでなく海外送金までを禁止、もしくは制限してしまうことです。
実は、銀行預金の引き出しを制限する規制は、少し前から既に政府に対して提案されていました。
2019年8月24日、Harbour Timesが香港特別行政区立法会に属するChristopher Cheung(クリストファー・チェン)議員による預金引き出し制限などの規制案提案を報じています。
画像引用:Harbour Times
これ以外にも、香港金融管理局が金融システム安定化のために、香港ドルの流動性確保を目的としたフレームワークについて言及しています。
すなわち、香港政府側も既に預金引き出し規制については十分意識しているということであり、そのことを市民も知っているというわけです。
ATMに多くの人が殺到して現金が足らなくなってしまっているのは、デモによる単なる不安感だけでなく、預金引き出し規制が発令されるかもしれないという危機感も背景にあるのです。
香港でのビットコイン取引高急増
このような状況下で、香港におけるビットコイン取引高が急増しています。
2019年9月28日付けの週間取引額は、これまでの最高取引高を更新し12,294,796香港ドルを記録しています。
これまでに最も多かった取引高は2018年1月20日の週に記録した11,666,176香港ドルでしたから、628,620香港ドル上乗せした計算になります。
ただし2019年10月5日付けの週間取引高は大きく減り、2,904,950香港ドルにまで落ち込んではいるものの、今後取引高はデモの激化や様相によって変化していくものと考えられます。
画像引用:Coin.Dance HKD
ビットコイン取引高拡大は予想されていた
香港におけるビットコイン取引高が拡大していくことを予測していた人物が存在しています。
The Bitcoin Association of Hong Kong(香港ビットコイン協会)の会長であるLeo Weese(レオ・ウィース)氏です。
彼は、一般市民は香港政府が預金引き出しなどの資本規制を実施することを懸念してビットコインを購入すると述べていました。
香港のデモ隊は、銀行を破綻させるために預金を全て引き出してしまうことを訴えていましたが、その訴えに呼応した市民は少なく、抗議活動の一環として引き出した預金をビットコインに変えたのではなさそうです。
それよりも、預金引き出しなどが規制によって制限されることを恐れ、早めにビットコインを購入したと考えるのが妥当でしょう。
画像引用:The Bitcoin Association of Hong Kong
取引高は増えてもATMでの取引は減少
香港ではビットコイン取引高が拡大していますが、かといって誰もが気軽に使えるビットコインATMでの取引高は増えるどころか、逆に減少しているようです。
特にビットコイン取引高が増えたタイミングであってもビットコインATMの取引高は増えていませんでした。
それにはビットコインATMの設置場所が関係しています。
ビットコインATMの設置場所がデモの現場になっているのです。
つまり、デモの現場に行くと混乱に巻き込まれる恐れもあり、ビットコインATMを使いたくても使えないということなのでしょう。
香港デモに関するビットコイン今後のヤマ場
2019年10月8日現在、香港の林鄭月娥長官による銀行預金の引き出しなどを制限する資金規制は発令されていませんが、もしこの条例が発令されるようなことがあると、香港市民の銀行への依存度は一気に低下し、ビットコインの取引高はさらに高まることが予想されます。
覆面やマスクを禁止した条例は、発令から実施までにおよそ1日の猶予がありましたが、資金規制が同じように発令から1日もしくは2日間ほどの猶予があったなら、おそらくその間は爆発的に取引高が高まるのではないでしょうか。
また多くの国々で懸念されている中国政府の武力によるデモ鎮圧作戦が実行された場合、これもおそらく混乱を避けて資産をビットコインに移していく傾向が強まると考えられます。
まとめ
香港の覆面禁止条例がビットコインの取引高を拡大させている現状と背景についてご説明しました。
香港デモの今後は未だどうなるか見通しは立ちませんが、国の内情が不安定になったり、経済が混乱した場合にはビットコインに資産を移していく傾向が強くなることは、香港の例を見るとほぼ間違いないといえるでしょう。
仮想通貨FXに取り組むのであれば、是非覚えておいていただきたい要素です。